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ウクライナ情勢悪化でもFRBの利上げは変わらず

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【木内前日銀政策委員の経済コラム(115)】ウクライナ情勢とFRBの利上げは金融市場の2大懸念

公開日: 2022/03/03 (マーケット)

パウエルFRB議長=Reuters パウエルFRB議長=Reuters

 ウクライナ情勢を巡る金融市場の大きな関心の一つは、それがFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ(政策金利引き上げ)にどのような影響を与えるか、という点である。ウクライナ情勢を受けたエネルギー価格高騰や金融市場混乱のリスクとFRBの急速な利上げとは、金融市場にとって2大懸念材料であるが、両者が連動してきているのが現状だ。

 ウクライナ情勢の悪化がエネルギー価格高騰、ロシア経済の急速な悪化、金融市場の混乱を引き起こせば、FRBは利上げに慎重になる可能性がある。

 ウクライナ情勢の悪化を受けても、FRBが3月15・16日の次回FOMC(米連邦公開市場委員会)で利上げ、つまり政策金利であるFF(フェデラルファンズ)金利の誘導目標を現状の0%~0.25%のレンジから引き上げる、との予想は修正されていない。しかしながら、引き上げ幅の見通しには、ウクライナ情勢悪化の影響が既に表れているのである。

 米国1月消費者物価が前年同月比+7.5%と1982年以来の高い上昇率となった2月10日時点で、市場のFF金利の先行き見通しを反映するFF金先市場では、3月のFOMCで0.5%の利上げをほぼ織り込んだ。しかし、その後のウクライナ情勢を受けて0.5%幅の利上げ観測は徐々に後退し、現時点では、市場はちょうど0.25%の利上げを織り込んでいる状況だ。

▽3月に0.25%の利上げが市場、FRB内のコンセンサスに

 過去を振り返ってみても、0.5%幅での利上げは普通のことではなく、2000年に0.50ポイントの利上げが実施されて以降、1回の利上げ幅はすべて0.25ポイント幅となっている。実際、FRB内では3月に0.25ポイントの幅での利上げを支持する向きが大勢だ。

 ウォラー理事は、会合前に発表される雇用・CPI統計が予想以上に上振れれば、3月に0.5%幅の利上げも必要になると発言しているが、3月だけでなく向こう数回の会合のいずれかで0.5%の利上げを支持しているFRB当局者は、このウォラー理事を含めて僅か2人しかいないようだ。

 3月4日発表の2月米雇用統計と3月10日発表の2月消費者物価指数が、よほど上振れない限り、現状では3月15・16日の次回FOMCで、0.25%幅の利上げが行われる可能性が高い状況だ。

 他方、3月以降7回のFOMCごとに0.25%ずつの利上げが行われる、というのが金融市場の比較的平均的な見方となっている。その場合、今年中の利上げ幅は合計で1.75%、0.5%幅の利上げが1回入れば合計で2.0%となる。これは、かなり急速な利上げペースである。

 前回の利上げ局面を振り返ると、2015年の12月に0.25%の政策金利引き上げ、2016年12月にさらに0.25%の引き上げ、1年程度で合計0.5%程度の利上げのペースだった。今回は、その4倍もの程度のペースとなる可能性が予想されているのである。そこには経済、金融市場に対して相応のリスクがあるのではないか。

▽ウクライナ情勢はロシア金融・経済に打撃も世界への影響は現状大きくない

 供給側の要因を多分に含む、コロナ問題に端を発する特殊な物価高騰に対して、金融引き締めの効果は不確実である。そうした中、ウクライナ問題でエネルギー価格の高騰が続けば、FRBは急速な利上げを実施せざるを得なくなり、いずれはそれが、景気の悪化を引き起こし(いわゆるオーバーキル)、また、金融市場の調整を引き起こす可能性がある。

 ウクライナ問題で金融市場が動揺しても、現在の物価情勢を踏まえると、FRBが緊急緩和などを行って金融市場を助けることは期待できない。利上げの先送りさえも、現状では可能性は低いのである。金融市場は大きな下支えがない状況で、不安定な構図にあるとも言えるだろう。

 ウクライナ情勢については、現状までの先進国による経済・金融措置だけで、ロシア金融・経済は相当に悪化する見通しが立ってきた。しかし、世界経済・金融市場におけるロシアの影響力は大きくないことから、ロシアの危機は世界の危機とはならず、先進国の金融市場は大きく動揺している状況ではない。こうした中では、FRBの利上げは、少なくとも年前半は着実に進められていくことが予想される。

 ウクライナ情勢の悪化という大きな懸念材料は、FRBの利上げというもう一つの大きな懸念材料を緩和する方向には働かないのである。

木内 登英 (前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)

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木内 登英(前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)
1987年野村総研入社、ドイツ、米国勤務を経て、野村證券経済調査部長兼チーフエコノミスト。2012年日銀政策委員会審議委員。2017年7月現職。
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