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緊急対策 現金給付の恒常化など問題ばかり

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【木内前日銀政策委員の経済コラム(119)】国費は6.2兆円だが、「真水」はわずかに2.7兆円

公開日: 2022/04/28 (政治, マーケット)

Reuters Reuters

 岸田政権は4月26日に、ウクライナ問題を受けた物価高対策と位置づける、緊急経済対策をまとめた。その「事業規模」は13.2兆円である。ただし、この事業規模には民間企業の投資や政府系金融機関の特別融資など、政府支出を通じて直接景気浮揚効果を発揮する以外の部分も多く含まれる。そこで、予算の裏付けがある「国費」を経済対策の「真水」部分として注目するのが通例である。

 今回の緊急経済対策では、この予算の裏付けがある国費が6.2兆円である。ところが、この6.2兆円には、2022年度本予算に計上されたものが2.0兆円程度含まれるのである。既に本予算で計上されたものを緊急経済対策の一環と位置付けることは問題ではないか。

 新たに予算が確保されたのは、補正予算の2.7兆円のみである。これが、いわゆる真水と考えることができるだろう。そのうち1.5兆円は、緊急経済対策で使われた予備費を改めて確保する措置である。

 緊急経済対策は、1)原油価格の高騰対策、2)原材料・食料などの安定供給、3)価格転嫁など中小対策、4)生活困窮者への支援、の4本柱である。ただし、直接的な景気浮揚効果を生むのは1)と4)と考えることができる。

1)原油価格の高騰対策は、予備費から0.3兆円、補正予算から1.2兆円賄われ、合計で1.5兆円となる。4)生活困窮者への支援は、予備費から1.0兆円、本予算から0.3兆円が充てられる。

▽ガソリン補助金の景気浮揚効果は+0.02%~+0.04%と小さい

 第1の原油価格の高騰対策の景気浮揚効果を、5月以降、為替レートが1ドル130円、WTI原油先物価格が1バレル100ドルというほぼ現状の水準が維持される前提で算出した。政府の補助金制度によってガソリン価格上昇が抑えられ、その分家計の負担が減少する金額は6,573円となる計算だ。

 補助金制度(1年間続く前提)によって2022年の消費者物価は0.06%押し下げられる。その結果、景気浮揚効果は1年間のGDPの累積効果で+0.02%となる。

 景気浮揚効果が小さいのは、補助金制度の対象となるガソリン(及び灯油)が家計の消費に占める比率が、家計のエネルギー関係支出全体の中では大きくないためだ。ガソリンと灯油の支出は、エネルギー関連支出全体の29%と3分の1にも満たないのである。これでは、有効な燃料費高騰、物価高騰への対策とは言えないのだろう。

▽生活困窮者への支援の景気浮揚効果は+0.04%

 他方、子ども一人当たり5万円を支給する第4の生活困窮者への支援は、家計の所得を増やすことで景気浮揚効果を発揮する。その支出に充てられる1.3兆円のうち0.3兆円は本予算に計上されているため、緊急経済対策で新規に需要創出効果を発揮するのは1.0兆円と考えられる。

 2009年の「定額給付金」の経験から、低所得向け子ども給付金などの一時的な所得増はその25%程度が消費に回ると考えられる。その場合、給付金などの1.0兆円のうち25%分、つまり2,500億円程度が個人消費を押し上げることになる。それは1年間の名目GDPを+0.04%押し上げる効果を持つ。

 そのGDP押し上げ効果を、ガソリン補助金と生活困窮者への支援について合計すると、約3,600億円、名目GDP比率で+0.06%となる。

▽緊急経済対策には多くの問題点が

 今回の緊急経済対策には多くの問題点、疑問点がある。最後にそれらを列挙してみたい。

・そもそも緊急経済対策の実施が必要なほど、景気は悪化していない。

・物価上昇はウクライナ問題以前からあり、ウクライナ問題を理由に緊急経済対策を実施する必然性は乏しい。

・物価高によって高まる家計の負担のうち、ガソリン補助金制度はそのごく一部にしか働きかけない。

・ガソリン補助金は価格メカニズムを歪め、脱炭素の流れに逆行する。

・ガソリン補助金の出口戦略は難しい。原油高円安の傾向が修正されない限り、同制度は長期化し財政負担が膨らむ。

・経済対策毎に給付金支給が恒例化した感がある。子どもへの支給は物価高騰とは直接関係がない。

・物価高騰などのショック下でも低所得者の生活が支えられるように、社会保障制度を見直すことが優先ではないか。

・給付金という一時金は貯蓄に回る比率が高く、景気浮揚効果は限定的。

・補正予算で5.5兆円という巨額の予備費の水準が維持された。巨額の予備費には、国会、国民の目が行き届かない形での支出に用いられるという問題がある。

木内 登英 (前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)

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木内 登英(前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)
1987年野村総研入社、ドイツ、米国勤務を経て、野村證券経済調査部長兼チーフエコノミスト。2012年日銀政策委員会審議委員。2017年7月現職。
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