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ラガルドECB総裁が豹変 7月利上げを「宣言」

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【木内前日銀政策委員の経済コラム(121)】6月の理事会待てず 異例のブログで表明

公開日: 2022/05/26 (マーケット)

ラガルド総裁=Reuters ラガルド総裁=Reuters

木内 登英 (前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)

 日本銀行が2016年1月にマイナス金利政策の導入を決めた際に参考としたECB(欧州中央銀行)のマイナス金利政策が、今年9月までに終了する見通しとなってきた。23日にラガルド総裁がECBのホームページのブログで明らかにした。これは、日本銀行の将来のマイナス金利解除を後押しするものとなろう。

 ECBは欧州債務問題、物価低迷への対応として、8年前の2014年6月にマイナス金利政策を導入した。ECBのマイナス金利政策は,銀行の超過準備に適用される金利をマイナスに設定するもので、当初の水準は-0.1%だったが、段階的に引き下げられて現在ではー0.5%となっている。

 ラガルド総裁はブログで、「現在の状況が続けば、今年第3四半期末までにマイナス金利政策を終了できる」とした。また「利上げは7月の理事会で可能」と明言したのである。ラガルド総裁がマイナス金利政策の終了時期について具体的に言及したのはこれが初めてだ。

▽ラガルド総裁もパウエル議長と同様に豹変

 ECB内でラガルド総裁はハト派であり、金融政策の正常化には長らく慎重な姿勢であった。前回4月の政策理事会でも、利上げを急がない姿勢を示していた。そこから僅かな期間で、ラガルド総裁は利上げに前向きな姿勢に転じたのである。正常化に慎重な姿勢を一転させ、利上げを加速させる姿勢を示したFRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長の最近の豹変ぶりと重なるところがあるのではないか。

 先行きの重要な政策変更の可能性を市場に織り込ませるのは、政策理事会の声明文や総裁記者会見を通じて行うのが通例であり、今回のようにECBのホームページのブログでそれをおこなうのは異例だ。6月9日の次回政策理事会まで待つ余裕はなく、できるだけ早期に金融市場に政策変更の考えや見通しを伝える必要性をラガルド総裁は強く感じたのだろう。

 ECBは昨年12月の政策理事会で正常化策に着手した。今年1-3月期にPEPP(パンデミック緊急資産買い入れプログラム)に基づくネットでの資産買い入れを終了し、また、7月初めには通常の資産買い入れプログラムであるAPPに基づくネットでの資産買い入れも終了する見込みだ。

 その直後の7月21日の政策理事会で、ECBは政策金利の引き上げを行う可能性が高まっている。7月と9月の理事会でそれぞれ0.25%ずつの政策金利引き上げを行い、マイナス金利政策を終了させる見通しだ。さらに金融市場では、10-12月期にも0.25%ずつ2回の政策金利引き上げが行われ、年末時点での金利水準は+0.5%程度に達すると見込まれている。

▽ECBは中立金利を意識

 FOMC(米連邦公開市場委員会)のメンバーは、中長期の政策金利(FF金利)の水準を2~3%と予想している。これが、経済に中立的な政策金利の水準、いわゆる中立金利の想定水準である。実際には、多くのメンバーは2.25%~2.5%程度を中立水準と考えているようだ。彼らは、政策金利をできるだけ早期に、この水準まで政策金利を引き上げることを当面目指している。9月のFOMCで、政策金利はこの水準に達する可能性がある。それ以降は、経済、物価、金融市場の動向を睨みながら、慎重な利上げ姿勢に転じることが予想される。

 他方でECBは、政策金利の中立水準を1~2%と想定している。今年7月以降に開かれる全ての理事会で0.25%ずつ政策金利を引き上げても、この中立水準までには達しない。そこで、高い物価上昇率が今後も続く場合には、FRBと同様にECBも0.5%幅の利上げを検討する可能性もあるだろう。そうした期待が金融市場で生じれば、現在進んでいる対ドルなどでのユーロ高の傾向に弾みがつくかもしれない。

▽ECBはFRBよりも難しい政策のかじ取り

 ところで、ウクライナ情勢の影響を、経済、物価両面から最も大きく受けるのは、ロシアへのエネルギー依存が高い欧州地域である。今後、石炭に続いて現在EU(欧州連合)が検討しているロシア産原油の輸入禁止措置が段階的に実施され、また、ロシア産天然ガスの輸入制限・禁止措置が実施されれば、経済活動に大きな支障が生じ、景気失速のリスクも高まりかねないだろう。

 ウクライナ情勢は欧州にスタグフレーションのリスクを高めているのである。その結果、ECBの金融政策運営は、現在は物価上昇率の抑制だけに邁進しているFRBと比べても、格段に複雑で難しいはずだ。

▽将来の日本銀行のマイナス金利解除に影響          

 ECBが9月までにマイナス金利を終了させても、日本銀行がそれに追随して直ぐにマイナス金利政策を解除することは考えにくい。日本銀行は、欧州と比べて日本のインフレ率はかなり低いことを挙げ、「金融政策は各国・地域の事情に合わせて独自に判断されるもの」と説明して、当面、金融政策を維持し続けるだろう。

 ただし、日本銀行が導入したマイナス金利政策は、ECBやその他欧州地域の中央銀行のマイナス金利政策に倣ったものだ。先駆者であるECBがマイナス金利政策を終了させ、マイナス金利政策が世界の中で極めて少数派となっていけば、それは、日本銀行がいずれマイナス金利政策を見直す動機となるだろう。

 来年4月までの任期である黒田総裁の体制下では、日本銀行はマイナス金利政策を見直すことはないだろうが、来年4月以降は経済・金融市場を睨みながら、遅くとも数年のうちにマイナス金利の解除に踏み切ると予想しておきたい。

 その場合でも、ECBのように政策金利を中立金利の1~2%、あるいはそれ以上まで引き上げることを目指すのではなく、0%あるいは+0.1%までとなるだろう。経済の潜在力の低さを反映して、日本の政策金利の中立水準は、欧州と比べてもかなり低いのである。
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木内 登英(前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)
1987年野村総研入社、ドイツ、米国勤務を経て、野村證券経済調査部長兼チーフエコノミスト。2012年日銀政策委員会審議委員。2017年7月現職。
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