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「日本銀行は企業・雇用支援を主導できない」

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【木内前日銀政策委員の経済コラム(70)】政府の特別貸付制度で5月の銀行貸出が急増

公開日: 2020/06/15 (マーケット)

Reuters Reuters

 銀行・信金による貸出残高が5月に急増した。前年同月比増加率は+4.8%と4月の同+2.9%から大幅に上昇して、1991年8月の同+5.3%以来の高水準となった。

 コロナショックで売り上げが急減した中小零細企業が資金繰り確保に動き、また大手企業も予防的な資金の確保に動いたことが貸出急増の背景だ。
 
 1次補正予算に盛り込まれた、民間金融機関による実質無利子・無担保融資制度がこの5月に始まったことが、銀行貸出の拡大を後押しした。3月には、コロナ問題で打撃を受けた企業向けに、日本政策金融公庫などによる実質的に無利子・無担保で融資を受けられる特別貸付制度が始められたが、5月にはこれが民間銀行にも拡大されたのである。

 この制度は、信用保証制度を利用した都道府県等の制度融資への補助を通じて、民間金融機関においても、実質無利子・無担保・据置最大5年・保証料減免(半分又はゼロ)の融資を可能としたものだ。さらに、2次補正予算が成立すれば、融資上限額は3,000万円から4,000万円に引き上げられるなど、制度は一段と拡充される。企業からの融資の申請も一段と拡大するだろう。

 政府は、1次補正では民間金融機関によるこの特別貸付制度の事業規模を24.2兆円と見積もっていたが、2次補正ではさらに28.2兆円としている。

▽日本銀行の「新たな資金供給手段」が銀行のリスクテイクを促す効果は不確実

 ところで日本銀行は、5月22日の臨時会合で、この政府の特別貸付制度の下での融資などを対象に、期間1年以内、金利ゼロ%で供給し、さらに金融機関が日本銀行に預け入れる中銀当座預金に0.1%の金利を付与する約30兆円規模の「新たな資金供給手段」を決めた。

 この30兆円という規模は、1次補正で政府が見積もった、特別貸付制度の事業規模24.2兆円をベースにしたものだ。これに、信用保証が付かない、銀行が自ら貸し倒れリスクをとる「プロパー融資」の拡大を含めて、約30兆円としたとみられる。

 信用保証が付く融資は、リスク比率がゼロで規制上の自己資本比率を低下させない。このため、民間銀行にとっては政府の特別貸付制度を利用するメリットは非常に大きい。

 しかし、日本銀行から好条件で借り入れができても、民間銀行はプロパー融資には慎重な姿勢を崩していない模様だ。この点から、日本銀行の「新たな資金供給手段」によって民間銀行の貸出が促され、企業の資金繰りが支えられるという効果はそれほど大きくはなさそうだ。

 日本銀行の「新たな資金供給手段」が銀行のリスクテイクを促す効果は不確実なのである。

▽「新たな資金供給手段」の枠倍増は、政府の施策に足並みを揃えたもの

 6月15、16日の次回金融政策決定会合で日本銀行は、約30兆円規模の「新たな資金供給手段」を倍増し、他の2つのスキームとの合計で約75兆円としている「特別プログラム」の規模を、100兆円規模にまで拡大させるとの報道がされている。

 これは、2次補正で、政府が特別融資制度の規模を28.2兆円としていることを、単純に反映させるもので、政府の施策に足並みを揃える措置である。

 実際に、次回の金融政策決定会合では、そうした措置が発表される可能性が高いだろう。しかし、政府の追加措置を単純に反映するだけであれば、これは追加の金融緩和策と言うべきではない。

 日本銀行は、政府と協調して企業と雇用を精一杯支える、という点に、現在は事実上の政策目標を置いている。それを代表するのが「新たな資金供給手段」であり、日本銀はこの枠組みを通じて、できる限りの貢献をしている、との評価はできるだろう。

 しかし、あくまでも企業や雇用の支援を主導するのは政府である。日本銀行の「新たな資金供給手段」が、民間銀行のリスクテイクを促し、貸出意欲を高めているという面が強くないのであれば、それは、銀行に対して0%の融資、0.1%の付利を与える補助金政策に近いものでもある。

 経済対策というよりも、金融機関の収益環境を支え、金融システムの安定を確保するためのプルーデンス政策として、本来は位置付けられるべきものだろう。

木内 登英 (前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)

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木内 登英(前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)
1987年野村総研入社、ドイツ、米国勤務を経て、野村證券経済調査部長兼チーフエコノミスト。2012年日銀政策委員会審議委員。2017年7月現職。
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