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米FRB、「気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク」に加盟

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【木内前日銀政策委員の経済コラム(84)】中央銀行は温暖化対策に限定的な関与を

公開日: 2020/12/24 (ワールド, マーケット)

Reuters Reuters

 世界の中央銀行は、気候変動が金融システムに与える影響への対応を強めている。12月15日にFRB(米連邦準備制度理事会)は、各国中央銀行などで構成する「気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク(NGFS)」に正式加盟したことを発表した。NGFSは、金融システムも気候変動リスクを低減する役割を確実に担うことを目指す組織だ。世界の主要中央銀行の中で加盟していないのは、FRBとインド中銀だけだった。

 FRBは従来、気候変動リスクへの対応に距離を置いてきた。地球温暖化対策に後ろ向きのトランプ政権下で、FRBが金融機関の気候変動リスクへの対応に前向きな姿勢を見せれば、政権からの強い批判を浴び、政治介入を受けることが目に見えていたからだ。

 ここにきてFRBの姿勢が大きく転換したのは、大統領選挙で地球温暖化対策に積極的な民主党のバイデン氏が勝利した、という政治情勢の変化によるところが大きいのだろう。

 この分野で先行しているのは、欧州の中央銀行だ。11月27日にECB(欧州中央銀行)は、欧州の主要銀行が気候変動や環境のリスクをどう管理し、開示していくかについての指針を公表した。その中で、ユーロ圏の銀行を対象として2022年に実施するストレステスト(健全性審査)で、気候変動が経営に与える影響を調査するとした。

 気候変動は自然災害を通じて貸出先の企業の経営に打撃を与えること等から、銀行経営にも悪影響を及ぼし、金融システム上のリスクになる。ただし、そうした観点にとどまらず、電気自動車(EV)への転換のような、産業構造の変化、企業活動の変化を通じて、金融機関の経営に影響する点も考慮される。脱ガソリン車への対応が遅れた融資先の自動車メーカーの経営が悪化する、などがその例だ。前者の災害の増加などによるリスクは「物理的リスク」、後者の規制強化や技術革新に伴うリスクは「移行リスク」と整理される。

 日本でも金融当局が金融機関に気候変動リスクへの対応を促す、同様な取り組みが始まる。金融庁は3メガバンクに今後30年を見据えた財務分析と対策を求め、また日本銀行も金融機関の経営への影響を点検する、と報じられている。

 金融庁と日本銀行は、3メガバンクなどの大手金融機関に対して、気候変動による経営への影響を分析するストレステスト(健全性審査)を、2021年度にも実施する検討に入った。

行き過ぎの関与は政治介入招く

 このように、中央銀行が、金融システム安定の観点から気候変動リスクの把握や対応を金融機関に求めることの妥当性については、多くの中央銀行の意見は概ね一致している。しかしそれを超えて、中央銀行が気候変動リスクの低下を促す地球温暖化対策に、自ら積極的に関与すべきかどうかについては、意見は分かれているのである。

 ECBは、ラガルド総裁を中心に、地球温暖化対策に積極的に関与することに前向きであり、グリーンボンド(環境債)の買入れも検討されていると見られる。中国人民銀行も同様に前向きだ。他方、日本銀行などはそれに慎重な姿勢だろう。

 地球温暖化対策は、国際協調の枠組みの中で、各国政府が税制・財政手段などを用いて進めるのが基本だろう。中央銀行が積極的にそれに関与すれば、政府からの政治介入を受けるきっかけにもなりえる。また、地球温暖化を中央銀行の目的に加えれば、物価安定目標などとの間に矛盾が生じ、中央銀行としての本来の使命(マンデート)を果たせなくなる恐れもある。

 ただし難しいのは、金融システム安定の観点から、中央銀行が気候変動リスクの把握やそれへの対応を金融機関に求める行動が、産業構造の変化、企業の活動の変化を促すことを通じて、間接的に地球温暖化対策に寄与することになる、という点だ。

 例えば、中央銀行が銀行に対して、気候変動リスクの管理を促すと、銀行は温暖化ガスを多く排出する企業などへの融資を抑制する、という対応をとりやすい。

 また、ひとたび中央銀行が気候変動を金融システム上の大きなリスクと位置付ければ、金融システムの安定維持という使命(マンデート)の一環として、中央銀行にも地球温暖化対策に関与することを求められる。中央銀行はそれを完全にはねつけるのは難しいのではないか。

 こうした点を踏まえると、中央銀行が地球温暖化対策に全く関与しないということは簡単ではない。それでも、物価安定、金融システム安定などの中央銀行の本来の使命が十分に果たすことができなくなる、あるいは政府からの介入を受けて独立性が損ねられるリスクに十分に配慮する必要がある。

 できるだけ限定的な形で地球温暖化対策に関与していく、という慎重な姿勢が中央銀行には求められるのではないか。

木内 登英 (前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)

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木内 登英(前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)
1987年野村総研入社、ドイツ、米国勤務を経て、野村證券経済調査部長兼チーフエコノミスト。2012年日銀政策委員会審議委員。2017年7月現職。
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