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中国の成長鈍化 世界経済を先取りか

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【木内前日銀政策委員の経済コラム(99)】中国の4-6月期GDP成長率は事前予想を下回る

公開日: 2021/07/22 (マーケット)

【木内前日銀政策委員の経済コラム(99)】中国の4-6月期GDP成長率は事前予想を下回る

 7月15日に中国の4-6月期GDP統計が公表された。実質GDPの前年同期比は+7.9%と、事前予想の+8.1%程度をやや下回った。また、1-3月期の同+18.3%からは急減速している。

 1-3月期の高成長は前年同期が景気の底に当たっていることによるものであり、4-6月期の成長率低下は、その反動という側面が強い。

 それでも、中国経済には足元で鈍化を示唆する指標が、このGDP統計以外でも増えてきている。6月の製造業購買担当者指数(PMI)は50.9と5月の51.0から低下し、4カ月ぶりの低水準となっている。また、6月の中国サービス部門および建設業の購買担当者景気指数(PMI)では、いずれも雇用指標が大幅に低下している。

 広がる成長鈍化の兆し

 こうした成長鈍化の背景には、いわゆるリベンジ消費が一巡して、個人消費の増加ペースが落ちてきていることがあるだろう。コロナショックで落ち込んだ経済が急回復する局面は、中国では終わりつつある。

 また、中国の製造業の景況感に逆風となっている要因は、他国とも共通している。海外と同様に、中国の自動車メーカーも現在、深刻な半導体不足に悩まされており、自動車製造業の指数は2カ月連続で50を下回った。また、原油価格の高騰も、中小企業を中心に収益を圧迫している。

 さらに、製造業PMIでは新規輸出受注が低下し、先行きの輸出増加ペースの鈍化を示唆している。その背景に、海外での消費者行動の変化を指摘する向きもある。

 感染下では、巣籠り消費で高額商品の売れ行きが海外では高まったが、感染リスクの緩和とともに、消費者は外出して飲食、旅行、アミューズメント関連等の消費により多くのお金を使うようになっている。その結果、中国から輸出される消費財の売れ行きが落ちてきている面があるようだ。

 中国人民銀行は預金準備率引き下げで予想外の緩和バイアス

 4-6月期GDP統計が公表された同じ15日に、中国人民銀行は預金準備率を0.5%ポイント引き下げる措置を実施した。預金準備率の変更は、2020年1月6日に0.5%引き下げて以来のことである。預金準備率の引き下げは通常、金融緩和バイアスの政策を意味する。

 ところが、中国以外の中央銀行の間には、それとは逆に金融緩和の正常化、金融引き締めを模索する動きが広がってきている。足もとでは、7月14日にニュージーランド中銀が大規模資産買い入れの中止を決めている。米国では年内にも資産買い入れの減額(テーパリング)開始、早ければ来年中にも政策金利引き上げ、との観測が市場で広まっている。

 米国で金融緩和の正常化、あるいは金融引き締めの観測が強まる背景には、経済活動が再開されるもとで、物価上昇率が高まっている、あるいは住宅価格の上昇率が高まっていること、などがあるだろう。中国でも物価上昇率、住宅価格の上昇率はやや高めではあるものの、米国と比べると状況はかなり異なっているのである。

 米国の6月分消費者物価は前年比+5.4%と、5月の同+5.0%からさらに加速した。これに対して、中国の6月分消費者物価は前年比+1.1%にとどまっている。

 米国の住宅価格(S&Pケースシラー)は4月に前年比+14.9%と、リーマンショック前の水準を上回っている。ところが、中国の6月新築住宅価格(主要70都市)は、前年比+4.7%にとどまっており、また前月の同+4.9%から低下しているのである。

 こうした状況の下では、預金準備率を引き下げて、銀行貸出を促しても、物価上昇リスクや住宅など資産価格の上昇リスクを高めることはない、と中国人民銀行は判断しているのだろう。

 新型コロナウイルス問題発生後は、中国での動きはあらゆる面で他国に先んじてきた感が強い。それは、感染抑制、ワクチン開発、景気回復、ワクチン外交など他国支援、などである。

 急回復の一巡を受けた中国の成長ペースの鈍化、物価・資産価格上昇リスクの低下、金融政策の緩和バイアスなどは、やはり将来の他国での動向を先取りする先行指標となるのではないか。

 そうであるなら、米国を中心とする足元でのインフレ懸念、それを背景とする金融正常化の前倒し、等といった金融市場で高まる観測は、やや行き過ぎている可能性がある。

 今後はそうした観測に大きな修正が起こる可能性も考慮に入れておく必要があるのではないか。

木内 登英 (前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)

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木内 登英(前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)
1987年野村総研入社、ドイツ、米国勤務を経て、野村證券経済調査部長兼チーフエコノミスト。2012年日銀政策委員会審議委員。2017年7月現職。
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