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慎重派の欧州中銀、ついに利上げ派に変身か

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【経済着眼】お荷物ギリシャ、イタリア抱えどう舵取り、3月10日に次回理事会

公開日: 2022/02/21 (マーケット)

ラガルドECB総裁=Reuters ラガルドECB総裁=Reuters

 2月に入ってドイツの10年物国債利回りがマイナス圏から抜け出て+0.2%を越える急上昇をみている。一方で日本の10年物国債利回りは日銀による指し値オペ(0.25%で無制限に購入)の発動もあって、ドイツの10年物国債利回りをほぼ3年ぶりに下回った。

 金利差だけ見れば、金利が相対的に高いユーロ圏への投資が進み、ユーロ高・円安が進む要因となる。円は米ドルに加えてユーロに対しても円安化して輸入物価の上昇をもたらすことになろう。

 こうした動きの背景にあるのが欧州中央銀行(ECB)の金融引き締め予測の台頭である。ECBのラガルド総裁が2月3日の理事会後の記者会見で「ECBの金融政策はデータに基づいて(data dependent)判断する」と発言した。

 ラガルド総裁は、その前の理事会後には「22年中の利上げは到底ありそうにない」「早急な利上げは、米国と財政刺激策の規模や需要の強さの違いを考えれば、欧州では景気の腰を折りかねない」とハト派ぶりを示していた。

 市場筋では、“data dependent”であれば、金融引き締めに向かうのが自然と予測している。ユーロ圏の消費者物価指数はECBのインフレ目標値(2%)を大きく上回る高水準を続けてきたが、12月の+5.0%に続き、1月も+5.1%をと過去最高水準を更新した。

 ラガルド総裁はFRBと並んで物価上昇は一時的と表現していたが、いまは22年末まで2%に着地しそうもないことを認めている。一方で12月の失業率が7%と史上最低水準を更新し、多くの企業が労働力不足を訴えている。

 金融市場では、標準シナリオとしては従来、今年12月に資産購入プログラムを終了して12月にも利上げ開始という予想が多かった。ECBが「利上げを開始する少し前に資産購入を停止する」と公約しているからだ。

 もっとも、上記のようなインフレの高進を背景に6月に資産購入プログラムを終了して9月、12月と二回利上げするとの見通しが増えてきた。ちなみに短期金融市場では年内の上昇幅を44ベーシス・ポイント(0.44%)と年内二回利上げ説に傾いていることをうかがわせる。

 なお、ECBの最後の利上げは2011年であるので、もし年内月に政策金利を引き上げれば、およそ11年ぶりの利上げとなる。

 ただECB内にはチーフエコノミストのレーン専務理事のように「インフレ率の上昇はいずれ峠を越えるので利上げはゆっくりと段階的にすべきだだ」と米国と違ってユーロ圏の弱い景気回復を壊しかねない利上げには慎重であるべき、との見方も内在している。

 ECBには歴史的なトラウマも色濃く残っている。2011年、欧州金融危機を目前に利上げをして欧州金融危機を加速させたという批判である。当時、南欧のギリシャ、スペイン、ポルトガル、イタリア(いわゆるPIGs)などで国債価格が暴落し、銀行の経営危機が深刻化した。

 ラガルド総裁も口には出せないものの、いまECBが性急に利上げに積極的な姿勢を見せれば、財政赤字の大きいギリシャ(国債残高/GDP比200%)、イタリア(同160%)で長期金利の上昇に見舞われることを危惧していよう。欧州議会でもラガルド総裁に対して、これら周縁国の長期金利を抑制するように要請している。

 ちなみにギリシャの10年物国債の対ドイツ債スプレッドは年初の1.4%から2%に広がっている。流通量の多さからユーロ圏債券市場におけるリスク指標となっているイタリア国債10年物のスプレッドは1.5%程度で大きく動いていない。新型コロナ感染が急速に広がっていた2020年の春先には独伊間のスプレッドは4%程度であったのでまだ市場は冷静さを保っていると言えよう。

 欧州議会の一部は「ECBが性急に資産購入プログラムを終了した場合、他国よりECBの資産購入プログラムに多くを頼っている南欧諸国の国債市場がパニックになる可能性が充分にある」とECBを牽制している。

 とくに新型コロナの感染拡大で各国とも国債発行で大きく膨らんだ財政支出を賄ってきただけに影響は大である。1.85兆ユーロに及ぶコロナ対策を銘打った国債買い入れプログラムが債券金利の安定に大きく貢献してきたのも事実だ。イタリアの既発債発行の平均金利は2.5%に対して、現行の10年物国債金利は1.87%と借り入れコストは低いままだ。

 しかし、一方で物価抑制を最優先すべきだ、といったブンデスバンクを筆頭にしたタカ派も健在だ。1月にブンデスバンク総裁に就任したナーゲル氏は独紙のインタビューで「ユーロ圏の景気は回復を続け、失業率も低い。今年、ドイツのインフレ率は通年で4%を越えそうだ。金融政策ならびに財政政策の正常化を一刻も早く図るべきだ」と就任後初のインタビューで語っている。

 なお、ここで財政政策の正常化とは「安定・成長協定」で財政赤字/GDP比を3%以内、国債残高/GDP比を60%以内といった財政規律に服することを指す。新型コロナ感染拡大の防止で一時的に同協定を棚上げして財政支出の拡大を許容してきた。しかし、例えば国債残高/GDP比はユーロ圏平均で100%を越えているとみられる。ナーゲル総裁は財政面の正常化も急ぐべきだ、としているわけだ。

 ECBは、高騰するインフレの抑制、ロシアのウクライナ侵攻懸念、など難題を抱えながら3月10日に理事会を迎える。金融市場ではどのような判断が示されるのか固唾をのんで見守っている。

俵 一郎 (国際金融専門家)

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