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トランプ大統領、再任えさに低金利維持求める

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【経済着眼】イエレン議長は応じるのか

公開日: 2017/04/13 (マーケット)

イエレン議長=Reuters イエレン議長=Reuters

村田 雅志 (ブラウン・ブラザーズ・ハリマン通貨ストラテジスト)

 トランプ米大統領は12日、一部米紙とのインタビューで、ドルはあまりに強くなりつつあり、最終的には害があると発言。中国の為替操作国認定は見送られるとの見通しを示した。また同大統領は、FRBの金融政策にも触れ、大統領自身は低金利政策が好ましいと述べ、来年2月に任期を迎えるイエレン議長が再任される可能性があると発言した。

 トランプ米大統領のインタビュー記事が伝わると、ドル円は109.6円台から109.1円台に急落。その後もドル円はじり安の動きを続け、翌13日の朝方には108.7円台と、200日移動平均水準まで下落した。

 ただ、その後のドル円は、108.7~108.9円の狭いレンジでもみ合い。トランプ米大統領のインタビュー後に低下を続けた米債利回りが東京市場で下げ止まったことで、ドル売り・円買いの動きも一服したことになる。

 ただ理由はともかく、テクニカル分析でみたドル円は非常にきわどい水準にある。仮にドル円が200日移動平均水準(108.7)を大きく割り込めば、ドル円の下値余地は、米大統領選から昨年12月半ばにかけての上昇(いわゆるトランプラリー)の61.8%戻し水準である107.9円台まで広がることになる。

 トランプ米大統領のインタビューでは、ドル高けん制発言に注目が集まったようだが、今後のドル円相場に与える影響は限定的だろう。トランプ米大統領は、大統領就任前後にもSNSなどを通じドル高をけん制する発言をしており、今回の発言も過去の内容と大差がない。トランプ政権は、大統領令、報告書、声明といった公式文章でドル高是正に向けた動きを見せていないことも忘れてはならない。

 トランプ政権が始まってから公表された様々な公的文章(たとえば2017年通商政策課題)では、トランプ政権が目指すのは、米製造業の生産増と米国での雇用創出であり、ドル高是正ではないことが明らかとなっている。ムニューシン米財務長官は、ドル高が長期的には米国の国益に資すると述べており、トランプ政権がドル高政策を放棄したとは考えにくい。トランプ米大統領がドル高是正の必要性に言及したのは、通商政策として推進される二国間交渉(たとえば18日から始まる日米経済対話)を有利に進めるための駆け引き材料に過ぎないとみられる。

 むしろトランプ米大統領のインタビューで注意すべきは、ドル高のけん制や、中国の為替操作国の認定見送りではなく、FRBイエレン議長の再任について触れたことだろう。同大統領は米大統領選の期間中、イエレン議長がオバマ政権を支援するという政治的な配慮から作為的に低金利政策を続けており、「彼女は恥じるべきだ」と極めて強い口調で批判。仮にトランプ氏が大統領に就任したら、イエレン議長の再任を認めない意向を示した。しかし今回のインタビューでは、トランプ大統領は(じつは)低金利政策が好ましいと考えており、イエレン議長を「尊敬」しており、来年2月の任期後も議長として再任される可能性を指摘した。選挙期間中とは正反対である。

 トランプ米大統領の過去の言動や行動から推察すると、同大統領は、取引相手と見なされる対象に対し、様々な投げかけをすることで相手を揺さぶり、有利な状況に引き込もうとするのが基本的なスタンスのようである。この見方が仮に正しいとすれば、今回のインタビューで明らかになったことは、イエレン議長もトランプ大統領の取引相手に見なされたということである。

 取引相手と見なされたイエレン議長がとりうる選択肢は大きく二つある。一つは、米国中央銀行のトップとして、政府から独立した考えのもと、金融政策を遂行するという選択だ。同議長は10日の講演で早期の金融引き締めに意欲をみせた。このため市場関係者の多くは、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での追加利上げは十分にあり得るとみている。この場合、日米金利差の大幅な縮小は回避されることになり、ドル円は底堅さを増す展開が予想される。

 イエレン議長のもう一つの選択肢は、トランプ大統領の意向を「忖度」し、これまでの主張や発言を翻す形で利上げを休止することだ。たとえば、6月FOMCでの利上げはあり得ず、12月FOMCまで利上げが休止されることも考えられる。米経済が軟調になれば、来年まで利上げを見送ることも可能になるだろう。

 これによりFRBに対する市場からの信任は低下するかもしれないが、イエレン議長が再任される可能性は高まる。イエレン議長が議長職に固執すれば、こうした動きを選択することも考えられなくはない。

 市場では利上げ先送り観測が強まることで日米金利差の拡大が期待しにくくなる。トランプ大統領と議会との調整が不調に終われば、トランプ政権による財政刺激の早期実施も難しくなり、日米金利差は縮小に向かうだろう。ドル円は、トランプラリーの全戻しの展開となり、昨年8月下旬以来の100円割れが現実味を帯びる。
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村田 雅志(ブラウン・ブラザーズ・ハリマン通貨ストラテジスト)
東京工業大学工学修士、コロンビア大学MIA、政策研究大学院大学博士課程単位取得退学。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社にてアナリスト、エコノミスト業務に従事。2004年に株式会社GCIアセットマネジメントに移籍。2006年に株式会社GCIキャピタル・チーフエコノミスト。2010年10月よりブラウン・ブラザーズ・ハリマン通貨ストラテジスト。2009年より2013年まで専修大学経済学研究科・客員教授。日経CNBCでは「夜エキスプレス」レギュラーコメンテーターを務めている。

著書に「景気予測から始める株式投資入門」、「実質ハイパーインフレが日本を襲う」、「ドル腐食時代の資産防衛」など。
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