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バイデン氏 FRBに人種格差是正を求める

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【経済着眼】インフレ時の利上げを阻害する

公開日: 2020/09/09 (ワールド, マーケット)

バイデン氏=Gage Skidmore-ShareAlike バイデン氏=Gage Skidmore-ShareAlike

 米国の大統領選まであと100日を切った。現職のトランプ大統領に対して民主党のバイデン大統領候補がやや優勢と伝えられている。

 そのバイデン陣営が「第二次大戦後、最大規模となるインフラ整備」と並び、力を入れているのが「人種間(とくに黒人)の経済格差を是正する」という中道左派らしい政策である。

 前者は、パンデミックで多大の人命を失い、未曽有の国家危機に直面している米国を救うにはいまや先進国の中でも見劣りするインフラを整備する大型公共投資を打ち出し、あわせて雇用拡大も図ることを狙いとしている。

 フランクリン・D・ルーズベルト大統領が打ち出した1932年のニューディール政策の再来である。このほか、10年間で7,000億ドルにおよぶ米国製造業の競争力強化策、2兆ドル規模の気候変動防止策なども含まれている。

 後者の人種間の経済格差是正をキャンペーンとして取り上げたのは、もともとの民主党の政策綱領であったうえ、全米に広がった黒人差別反対運動(Black Lives Matter)の中で一段と高まったためだ。もちろん、黒人、ヒスパニックの票田を獲得したいという選挙上の狙いが大きい。

 バイデン候補に対する黒人支持率が高いといっても、2016年の大統領選挙で黒人若手層が投票所に行かなかったことがヒラリー候補敗因の大きな要因であった。

 バイデン候補もここで失業率の高い黒人若年層の支持を固めて投票所に行ってもらいたいわけだ。カマラ・ハリス上院議員を黒人・女性として初の副大統領候補として指名したのと同じ文脈である。

 中道左派のバイデン氏が民主党大統領候補を争う予備選で当初、サンダース、ウォーレン上院議員になかなか追いつけなかったのは中道左派よりさらに社会主義的な政策が民主党支持者の心をつかんだからだ。このため、バイデン陣営は左派を引き寄せるためにサンダース陣営との政策面での共同歩調を取ることにしている。

 たしかに黒人、ヒスパニックは白人に比べて失業率が高く、ニューヨークにおける新型コロナウィルスの感染者も経済的に恵まれずに働き続けざるを得なかった彼らのウエイトが圧倒的に高かったと言われている。

 こうした下、バイデン候補は、「人種間の経済的不平等を是正するのにFRBが大きな役割を果たすべきだ」とのスピーチをおこなった。FRB法では現在の物価安定と完全雇用いう二つの目標達成を要求されている。

 バイデン候補は、FRB法を改正して、三番目の目標として雇用、賃金、資産面等での人種間の経済的不平等を是正することを加えるとしている。もし、法制化が難しいとしてもバイデン大統領が実現した場合、FRB議長、両副議長の任期が大統領一期目のはじめに到来するので人事面からプレッシャーをかけることも容易である。

 バイデン候補はこのほかにも、黒人のベンチャー企業に対する資本支援、少数民族の経営する中小企業からの政府調達、黒人社会に対するインフラ支出(病院、学校ほか)など広範な施策を掲げている。

 従来の考え方であれば、少数民族保護は伝統的にインディアン保護などに代表されるように政府、議会の責任領域であった。この世界に、金融政策運営のために政府と一定の距離を取って独立性を保障されている中央銀行がかかわるのは違和感も大きい。

 しかしながら、FRB サイドもイエレン前議長の頃からバイデン候補が提案したような人種間の経済格差是正に関して同じ方向性を示していた。人種間の経済格差問題が社会的にも大きな関心を呼び、FRBとしても関与せざるを得なかったためである。

 例えばFRBは2年に一度、人種間格差に関する報告を議会に提出して、議会リーダーなどと人種間の経済的格差の是正について話し合う機会を持っていた。

 たしかに黒人の失業率は一貫して全米平均を上回っている。バイデン陣営のアドバイザーは、FRB議長がデータを収集して人種毎の雇用状況や賃金格差について報告すべきとしている。

 このようにFRBにとって三番目の目標に設定されるかもしれない人種間経済格差の状況分析と対応策が米国経済に与える影響は侮りがたい。例えば景気循環の過程でスキルに乏しい黒人、ヒスパニック等の雇用は常に遅れて拡大していくことが知られている。

 それにもかかわらず、黒人の雇用や賃金に目標を課した場合、FRBが黒人の雇用が十分に拡大して賃金が上昇するまで金利を十分に低い水準に抑えることを要求される。仮に全体ではインフレ懸念が高まってきた場合でも金利引き上げの余地が制限されるような事態も考えられる。

 また、バイデン候補のFRBに対する要求は、急進左派にとって大きな進歩ともいえる。しかし銀行経営にとっては厄災となりかねない道を拓く恐れもある。

 特に「黒人、ヒスパニックが経営する中小企業向け融資を優遇せよ、住宅ローンの融資基準も緩めよ」などと、ダイバーシティー向上が要求されると銀行経営に悪影響が及ぶであろう。

 少なくとも、FRBは監督先の銀行に対して人種別の雇用者数、賃金、融資状況(黒人に対する住宅ローン供与で差別が見られないか等)についての詳細なデータを収集することを求められる公算が強い。

 そのようなデータに基づき、一般公衆やメディアなどから人種間の経済格差を是正するには不十分と銀行界が攻撃される事態もありうる。

 FRB自体も現在の理事(Governor)に黒人が一人もいないので民主党政権が誕生すれば空席の2人のいずれかに黒人の登用を求められよう。地区連銀の総裁・役員にも同じような要求がだされてこよう。

俵 一郎 (国際金融専門家)

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