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それでも不安材料多い、米景気の先行き

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【経済着眼】コロナ禍でダメージの米国経済、回復傾向に

公開日: 2020/09/21 (ワールド, マーケット)

CC BY-SA FRB=CC BY-SA /Hiyori13

俵 一郎:経済着眼 (国際金融専門家)

 9月16日、FRBはFOMCを開催、終了後、23年末までゼロ金利政策を維持するとの方針を発表した。

 3月に再開した量的緩和政策も維持する。物価上昇率も2%に到達するまで利上げを見送るとする「フォワードガイダンス」を強めた。以前はゼロ金利の維持は22年末としていたので景気見通しが慎重化したと言えそうだ。

 まず、米国経済のこれまでの足取りをみると、今年3月に暴落した株価が示すように米国経済は1930年代の大恐慌以来の深刻な景気後退に襲われていた。それから半年後、いろいろな経済指標からみて「4月に景気の底を打ち、それから毎月のように改善している」として、先行きへの楽観論が次第に大きくなってきた。

 たしかに、米国西海岸や南部諸州を中心にロックダウンの解除後、再び感染が大きく拡大しているうえ、最近では財政刺激策が滞っているにもかかわらず、景気回復の底堅さがうかがえる。

 例えば、失業率をみると、4~5月ごろには今年の年末になっても失業率は11%を上回るという厳しい予想が主流であった。しかし、4月に14.7%と過去のピークを付けた後、4が月連続で改善を示して8月の失業率は8.4%と、大半のエコノミストの予想を上回った。

 実質GDPも第2四半期に前期比年率で-31.7%と史上最大のマイナスを付けたあとは伸び悩むという予想が多かったが、ゴールドマンザックス社では第三四半期に+42%と急伸してこれまでの落ち込みの9割方を取り戻すところまで回復すると予想している。

 このような景気回復の理由は何といっても空前の金融財政両面からの景気刺激策に帰せられる。

 FRBは3月にほぼゼロ%まで金利水準を思い切って引き下げ、国債を大量に買い上げる量的緩和を再開した。この結果、モーゲージ金利が大幅に低下して新築住宅販売は7月に13年ぶりの高水準を付けた。住宅建設そのものもパンデミック以前の水準に戻っている。

 個人消費も回復基調を示していた。これには失業の減少と家計に対する思い切った財政支援が効いている。

 家計に1人当たり(大人)1,200ドルを給付した。またレイオフされた労働者に対しても失業手当に週600ドルを上乗せする異例の措置で約7割の労働者が失業以前の給与水準を上回る所得を得るようになった。こうした可処分所得の増大が小売売上げの増加に示されるように個人消費の立ち直りをもたらした。

 最近における感染拡大の再発が景気回復にとって不安材料であることは事実だ。

 パンデミックがいまだ完全に過ぎ去っていない5月にロックダウンを解除して経済活動を再開したところ、米国南部と西海岸を中心に新たな感染拡大の波に襲われた。しかし、これらの諸州、すなわちカリフォルニア、テキサス、フロリダ、アリゾナ州などでの活動制限は、バーの営業停止等に限られ、春先のようなフル・ロックダウンに戻した州政府は皆無であった。

それでもこれら諸州では感染拡大と入院患者の増加ペースは着実に低下を続けている。

 全米でも最も規制が厳しいカリフォルニア州ですらオレンジ郡で店内での飲食が座席数の25%、屋内モールや小売店で最大収容人数の50%まで再開を許す基準に到達している。今後、感染が一層拡大すればロックダウンの再開の可能性も排除できないとはいえ、各州知事にとって経済にダメージを与えるロックダウンの完全再開は手を付けにくいであろう。

 しかし、今後の回復ペースはスローダウンしそうである。

 最大の理由は後述のようにホワイトハウス、議会の合意形成が難しく追加財政支援が途切れそうなことだ。またレストラン、娯楽、ヘルス関連といったGDP比5%を占めるセクターでは感染が劇的に減少するまで活動制限を続けざるを得ないことも響こう。欧州基準では概ね百万人当たり20人以下の感染率となって初めて屋内での飲食が認められる。この基準に達しているのは米国ではわずか3州、人口で1%に過ぎない。

 パウエル議長が16日の記者会見で「景気回復のペースは鈍りそうである。財政政策による経済支援が極めて重要だ」として追加的な財政刺激策を求めた。しかし、11月の大統領選前に、今春に緊急対策として発動した家計への直接給付金の支払い、大幅加給付きの失業手当、困窮している中小企業や地方政府に対する支援などで1兆ドル以上の歳出規模で合意する可能性はほとんど消えたように思われる。

 最後の瞬間で共和党、民主党が妥協する可能性もないではないが、11月の大統領選に合わせて行われる下院選挙、上院選挙を控えて選挙区に戻らなければならないという政治カレンダーから見ればもはや時間切れということになりかねない。

 バーナンキFRB前議長が「もし追加支援策がなければ景気の一段悪化は必至である」と懸念を表明したように、まず個人消費が失速する懸念が強まる。心配なことは貧富の格差がさらに拡大して富裕層や専門職が大きな問題なく、「とくにサービス業で女性やアフリカ系、ヒスパニックなど低賃金労働者の失業が目立つ」(16日のパウエルFRB議長記者会見)と指摘しているとおり、多くの労働者層が困窮を極めることだ。

 連邦政府による追加的な財政支出が途絶えると、家計だけでなく、州、郡などの地方政府を危機に追いやりかねない。税収が大きく落ち込む一方、コロナ対策で支出が膨らみ財政収支が大きく悪化、連邦政府の支援措置で辛うじて支えられてきた。もし追加支援策がなければ、地方政府は全米で最大1兆ドルの歳入不足が生じて、警察、消防、学校などの職員の大量解雇も避けられず、さらに景気を下押すことになる。

 雇用情勢をみても、たしかに2,200万人のレイオフ対象者のうち半分が職を得ている一方、パンデミックで会社が破綻して元の職場に戻れないレイオフ対象者が数百万に達するとみられる。航空、ホテル、小売業などで力尽きて破産した先が多い。

 今後も感染拡大が鎮静化しなければ職場を得られない人は、増加を続けよう。新型コロナウィルスの感染拡大の傷跡はそれだけ大きいことを示しており、今後の立ち直りも容易ではないように思われる。
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