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引き締め変えぬECB 景気後退と域内金融危機のリスク 

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【経済着眼】ユーロ圏物価上昇は頭打ちだが

公開日: 2023/01/11 (マーケット)

ラガルドECB総裁=Reuters ラガルドECB総裁=Reuters

俵 一郎 (国際金融専門家)

 6日に発表されたユーロ圏の12月消費者物価指数(CPI)は前年比+9.2%の上昇となった。10%を下回ったのは3カ月ぶりのことである。しかし、欧州中央銀行(ECB)が物価の騰勢鈍化を入れて、利上げを停止するようなことはなく、23年中も利上げを続けると見られている。

 12月の消費者物価上昇率が11月の前年比+11.2%から鈍化した背景にはエネルギー価格の鈍化と政府の家計、企業向け補助金支出の二つが効いたといえよう。エネルギー価格では、ロシアのウクライナ侵攻後に跳ね上がったガス価格の下落が続いている。

 オランダのTTF指数は、1メガワット時(MWh)あたり昨年8月の340ユーロから5日には69.70ユーロへと8割方の下落を示した。ECBでは12月の段階で23年中のガス平均価格を同124ユーロと見積もっていたので、エネルギー価格のウエィトの大きさを考慮すると、ECBは23年中のインフレ予測値を下方修正することになりそうだ。

 品目別に前年比をみると、エネルギー価格は上記のような市況の落ち着きを反映して前年比はこれまでの+40%台から+25.7%へと大幅に鈍化したほか食品が+13.8%と高水準を続けている。

 ドイツでは、12月CPIが前年比+9.6%と4カ月ぶりに10%を下回った。これは政府による大規模なガス代の一時免除の影響が大きい。さらに23年1月からは最大2,000億ユーロ規模の財政支出を通じてガス、電気代に価格上限制を設けることになった。ちなみにガス料金には1キロワット時たり12セントを上限とすることとなった。今後、これが物価抑制要因として効いてこよう。

 一方で中期的な価格圧力の指標ともいうべきサービス価格(人件費が大部分であり、いったん上がれば下がりにくい特性)はむしろ12月になって+4.4%と騰勢を強めている。ECBが注視しているコアインフレ率も+5.2%と既往最高水準にある。

 ECBでは仮にエネルギー価格が下落に転じても、サービス価格の上昇や強力な労組を背景とした物価=賃金の悪循環(いわゆるsecond round effect)についての懸念が大きい。米国CPIがすでに7%台まで低下しているのに比べてユーロ圏では平均で+9.2%、二ケタ台を越える上昇を続けている国なお9か国もあることなどから、引き締めスタンスを続けることは疑いを入れない。

 このような状況下、ECBでは昨年7月の利上げ開始以降、中銀預金金利を-0.5%から2%まで引き上げてきた。当初、米国FRBなどと比べても大きく出遅れただけにその後の引き上げペースは迅速であった。ラガルド総裁は「今後しばらく0.5%のペースでの利上げが必要である」と明言しており、市場では今後、年末までに少なくとも1.5%の利上げがあるものとの見方が有力である。

 ただECBの利上げを阻む要因として、米国と比べて明らかに脆弱な景気情勢と域内弱小国での金融危機発生の恐れの二点が挙げられている。

 まず、景気情勢をみると、欧州委員会は昨年11月、ユーロ圏の23年の実質成長率が0.3%にとどまるとの見通しを発表した。とくに足元では、この1~3月の実質GDPは、景気後退を示す二四半期連続のマイナス成長となる見通しだ。国別ではドイツが23年中は-0.6%とマイナス成長を記録するとの予想だ。

 ロシアからのエネルギー供給のウェイトが大きく、とくにパイプラインを通じる天然ガスの供給途絶が製造業での減産や操業停止につながる懸念も大きいためだ。

 欧州金融危機の再燃も懸念されている。とくにイタリアでは昨年9月の総選挙で極右「イタリアの同胞(FDI)」が第一党に躍進、メローニ新政権が発足した。ただでさえ、南部を中心とした貧困層は高物価の下で生活苦に直面しており財政支援の要請が強い。一方でイタリアは公債残高のGDP比が145%に達する危機的な財政状況となっている。

 メローニ政権は財政赤字の縮小を公約しているものの、市場では、いざとなれば減税や補助金支出の拡大などのポピュリズム的な政策を採るの懸念が大きいとみている。実際に、昨年7月以降のECB利上げ後、イタリア10年物国債の利回りは上昇(価格は下落)を続けて4.6%と一年前の4倍の水準に達し、ドイツ国債とのスプレッドも2.1%にまで拡大している。

 今後についてもECBが3月から5兆ユーロの保有債券を毎月150億ユーロずつ削減していく量的緩和の縮小を実施する予定だ。これだけでも市場におけるイタリア国債に対する売り圧力は高まってこよう。

 ECB内のタカ派であるオランダ中銀のクノット総裁は「ECBの利上げはまだ後半の局面に入ったばかりだ」と利上げの必要性を強調している。しかし、ユーロ圏の小国であるラトビアなどの経済状況は苦しくインフレ率はなお20%を越えている。IMFのゲオルギバ専務理事も「EU加盟国の約半分の国が景気後退に襲われよう」と警句を発している。

 イタリアの極右連立政権における反ECB感情は募っており、サルベーニ副首相は「ECBの引き締め政策はナンセンスだ」と声を荒げている。ECBを取り巻く政治経済情勢は今後、厳しさを増すものとみられる。
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