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12回連続利上げでブラジルがマイナス成長

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【経済着眼】ルラ大統領と中銀の対立激化、市場は財政規律も求める

公開日: 2023/03/06 (ワールド, マーケット)

ルラ・ブラジル大統領=CCBY3.0br ルラ・ブラジル大統領=CCBY3.0br

 ブラジルの2022年第4四半期の実質成長率が前期比-0.22%と6四半期ぶりのマイナス成長となった。なお2022年年間では前年比+2.9%と21年の+5%に続き2年連続のプラス成長となった。なお20年は新型コロナの感染拡大から-3.3%と大幅なマイナス成長であった。新興国の経済悪化を象徴するブラジル経済へ注目が集まる。

 ブラジルの22年第4四半期のGDP統計を産業別にみると、石油生産のみが増加したものの、製造業、建設業、電力産業など軒並みマイナスを示した。23年入り後も生産、需要の低迷は続き、23年中の実質成長率見通しはブラジル中銀が+0.8%、民間エコノミストも同じく1%内外と予想している。

 このような景気の急速なスローダウンは物価抑制を最優先に果敢に利上げを繰り返したブラジル中銀による金融引き締めの影響がラグをもって出てきたとの見方が多い。

 すなわち、政策金利はわずか2年前にはコロナ感染拡大に伴う経済停滞を脱出するために史上最低の2%になっていた。しかし、ブラジル中銀は、世界経済の正常化に伴う石油、天然ガスなどのエネルギー価格や食糧価格の高騰からインフレが高進し始めるとともに、世界の中銀の中でもいち早く利上げに転換、22年8月には13.75%まで引き上げた。

 ブラジルの政策金利水準は、G20諸国の中ではアルゼンチンに次ぐ高さである。ちなみに利上げは21年3月から12回連続の実施となった。筆者などはFRBやECBが物価上昇は一時的(transitory)として利上げや量的緩和の転換などに遅れを取ってインフレに火を点けてしまったのに比べて、ブラジル中銀の果敢な行動には目を見張ったものである。

 ブラジル経済は、こうした中銀の急速な利上げにもかかわらず、22年中に+2.9%とまずまずの成長を遂げた。これはコロナ感染の一巡から都市封鎖などの規制を解除して経済が正常化したことが大きい。さらに財政面からも大統領選を控えてボルサナロ前大統領が、燃料税の引き下げ、貧困層への現金給付の拡大などの刺激策を採ったことも影響している。

 この間、ブラジルのインフレ率は二桁台から低下したとはいえ、1月の消費者物価は5.77%と23年のインフレ目標値(中心値3.25%、レンジとしては1.75~4.75%)をなお2%以上も上回ってる。このため、ブラジル中銀は9月以降4会合連続で政策金利を維持して警戒を怠らない姿勢を示している。

 これに対して昨年の大統領選で右派のボルサナロ大統領を僅差で破った左派のルラ大統領は激しくブラジル中銀を批判している。就任直後の1月には「インフレ目標の3.25%は低すぎる、4.5%程度ではいけないのか」と疑義を呈している。

 ルラ大統領は自らが大統領であった03年から10年のうちの大半(03年から08年半ばにかけて)でインフレ目標の中心値が4.5%であったことも念頭にあると言われる。

 ルラ大統領は2月に入ってさらにブラジル中銀批判のボルテージを上げ「ブラジルには経済成長が必要、高金利は適切ではない」と言明した。与党の労働者党(PT)内ではブラジル中銀のカンポス・ネト総裁を罷免すべき、との議論も高まっている。ネト総裁は「中銀の独立性は重要」と反発を示している。

 22年第4四半期のマイナス成長の基調を引き継いで23年も家計債務の累増、雇用機会の減少、企業ならびに消費者のコンフィデンス低下などの悪材料が重なって1%内外の低成長にとどまるとの見通しとなっている。

 ルラ大統領は左派政権らしく、貧困層対策に力点を置いている。3月2日には、貧困層に対する現金給付である「ボルサ・ファミリア」を前大統領時代時代の月額600レアルに加えて、子供の人数ならびに年齢に応じて増額措置を打ち出した。ルラ大統領は「我々は、経済成長、雇用機会の創出、(富裕層から貧困層への)所得移転を通じてブラジル社会の問題を解決していく」との意向を示している。

 このような左派政権の政策目標実現に向けてボルサナロ政権時代に独立性を勝ち得たブラジル中銀の存在が疎ましく映っているのは当然であろう。しかし、投資家はインフレ抑制のスタンスが緩みかねないことに懸念を抱いている。インフレ抑制に奏功するまで金融引き締めを続けるのは当然のことであると考えている。

 さらに投資家はルラ政権の財政スタンスにも疑念を抱いている。例えば、大統領選挙戦中から、憲法の規定を改正して、政府支出(正確には利払いを除くプライマリー歳出)の上限をインフレ率以下に抑える、という上限枠撤廃を訴えていた。言うまでもなく、貧困層向け支援など社会保障支出を増やせるように、と狙っているためだ。

 このため、経済界やエコノミストの間では「金利を引き下げるのは、インフレの低下に加えて、ルラ政権が財政運営の責任を強化するのが条件だ。仮に上限枠撤廃を狙うのであればそれに代わる規律を設けてからであるべきだ」との声も上がっている。

俵 一郎 (国際金融専門家)

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