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世界的な住宅不況がやってくる

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【経済着眼】世界的な金融引き締めで住宅バブル弾ける、リーマンショック後より厳しい

公開日: 2022/11/24 (ワールド, マーケット)

Reuters Reuters

 国際通貨基金(IMF)では世界の住宅市場が転機を迎えた、との認識を示している。先日発表された金融安定化報告(FSR)で、各国中央銀行がインフレ抑制のために厳しい金融引き締めを行っている中、住宅ローンは借入金利の急騰と金融機関の融資基準の厳格化が生じている、と指摘している。このため、住宅ローンの借り入れも大幅に減少するとともに、住宅の評価額も急速な下落をみよう、と警告を発している。 

 IMFでは住宅価格の急速な下落は先進国、新興国ともに広がりを見せようと予測している。すなわち、実質住宅価格(名目価格をインフレ率で除去)は向こう3年間で、新興国の場合で25%、先進国でも10%の下落を予想している。

 翻ってみると、わずか1年前の2021年央には世界の住宅セクターは明るい将来を描いていた。北はノルウェーから南はニュージーランドに至るまで住宅価格は上昇を続けた。OECD加盟38か国の住宅価格は最速で上昇していたのである。

 この理由の一つには、コロナ禍からの経済再生を目指した超金融緩和を反映した史上最低の住宅ローン金利がある。さらに、いわゆる「強制貯蓄」(ロックダウン等によって支出行動が大幅に制限されて、結果として貯蓄が増える現象)に伴い、個人の支出余力の拡大も後押ししている。当時は住宅を持つにはこれ以上に格好のタイミングはない、と喧伝された。

 しかし、生計費危機ならびにロシアによるウクライナ侵攻が情勢を一変させた。インフレの急騰と金融引き締めだ。この中で実質所得が減少し始めた。コロナ禍を起因とする先進国における住宅ブームは、金融危機に直面してスローダウンしていった。そして、それが景気減速に直面する各国経済にさらなる下方圧力を加えるに至っている。

 金融引き締めをみると、今年3月に米国連邦準備制度(FRB)が利上げに踏み切り、政策金利はゼロ金利から半年強で3.75~4%に跳ね上がった。このほか、ECB、イングランド銀行など世界各国の中央銀行が利上げに踏み切った。

 住宅投資スローダウンの主犯はこのような金融引き締めに伴う住宅ローン金利の急上昇だ。米国の住宅ローン金利は30年返済ローンで昨年の約2倍にあたる7%の大台に乗せた。2008年のリーマンショック以来の高水準となった。最近2年間における住宅ブームを反映して典型的な住宅ローン借入額は月間1,700ドルから2,600ドルに跳ね上がった。変動金利の上昇で借り入れ返済額はさらに上昇していくことになる。

 このパターンは多くの国で共通だ。住宅ローン金利はOECD加盟国では、ユーロ圏諸国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドで近年の最高水準を上回っている。ニュージーランドでは住宅ローン返済額が平均所得階層でコロナ前の所得の45%からいまでは60%にあたる水準まで上昇している。

 来年2023年には、ほとんど全ての先進国で住宅市場のスローダウンが予測される。少なくとも2000年以来となる広範かつ大幅な価格上昇の鈍化となり、半数以上の国で住宅価格は下落しよう。急騰を続けてきたニュージーランドの住宅価格は25%程度減少しそうだと現地エコノミストは試算している。

 住宅投資は各国で重要な需要項目となっている。この結果、住宅投資の減少は来年の世界全体のGDPを0.2%押し下げるとみられる。住宅ブームの反動が顕著なカナダではGDPを今年0.6%、来年は0.9%押し下げるとカナダ中銀では予測している。

 中国の住宅ブームも世界を揺るがすほどのスローダウンにあっている。販売床面積は今年9月までの1年間で26%の大幅減少をみた。ゼロコロナ政策が流動性危機を生み、未完成物件の資金調達が業者にとって最大の課題となっている。中国政府は国営銀行に対して不動産業者への流動性供給に努力するように指示した。

 一般に金利が1%上昇すれば、住宅価格の上昇率は1.5%下押すとIMFエコノミストは推計している。またECBでも低金利環境下で1%利上げすれば、住宅価格を9%押し下げるほか、2年後の住宅投資を15%引き下げると試算している。

 英国ではトラス政権による思慮に欠けた大規模減税発表が引き金となった政治的混乱のせいで住宅ローン市場も混乱に陥った。スナク新首相の就任で市場は落ち着きを取り戻したが、政策金利は現行の3%から来年には4.5%を上回るまで上昇すると予想されている。

 この金利上昇のせいで、平均的な家庭の住宅ローン支払い額は年間5,000ポンド(80万円)増加するとの試算もある。この結果、シンクタンクであるオックスフォード・エコノミックスの試算では2023年の英国の住宅価格は4.6%の下落となるとの予想である。

 コロナ禍で積みあがった貯蓄が住宅ブームを支えてきた。しかし、その強制貯蓄も急速に縮小している。米国では生活費の急騰と株価の下落によって第一次取得者が頭金を払うに十分な貯蓄を形成するのが困難になりつつある。住宅ローン金利が上昇する前に借入れようという動きが住宅市場の一部での強さにつながってる。また賃貸料が落ちていないのも持ち家を持てない層が増えて安定した需要があるからだ。

 多くの国で住宅価格がなお維持されている、ないし小幅な下落にとどまっているのは住宅在庫が低水準であるからだ。10月の段階で英国の住宅在庫は1978年以来の低水準となっているほか、米国でも同じような事情だ。

 しかし、住宅市場の需給悪化は明らかに鮮明になる方向だ。独、中国、オーストラリアなどがすでにスローダウンしている。オーストラリアでは住宅着工件数が初めて前年比マイナスとなった。米国でも住宅価格は前年比で7月+16%、8月+13%とスローダウンの兆候が見られている。

 ユーロ圏では9月の住宅購入の新規ローンは30%の落ち込みとなった。住宅取扱件数でも同月は年率32%の落ち込みとなった。10月の新規取得希望者の問い合わせ件数はグローバル金融危機以来、最大の落ち込みとなった。

 米国でも9月の住宅販売件数は前月比年率で24%の落ち込みとコロナ前の水準を大きく下回った。住宅ローン申し込み件数も金利急騰を映じて25年振りの低水準となった。

 カナダではもっと劇的な減少をみており、トロント市におけるコンドミニアム(日本流で言えばマンション)販売件数は89%の減少となった。

 カナダやニュージ―ランド、オーストラリアなどのアングロサクソン諸国では過去の住宅価格上昇幅が大きく、住宅ローンの借り入れも大きかったところでは価格下落のリスクが極めて大きい。

 隣国の韓国でも10月の住宅価格は、前月比1.2%の大幅下落となった。2003年の統計開始以来、最大の下落率となった。韓国銀行が昨年8月以降インフレ抑制のため、通計2.5%の利上げを行ってきた影響で住宅ローン金利の上昇と融資姿勢の慎重化を招いたためだ。とくにこれまで上昇幅の大きかった首都ソウルのマンション価格は9カ月連続の下落、10月には前月比1.24%の下落と2008年12月以来最大の下落幅となった。

 今後の世界の住宅市場を楽観的にみる向きは、利払いのみで元本返済はローン終了時に一括払いといったリスキーな住宅ローンもほとんど姿を消した、信用度にしても米国でも信用度の高い借入人が全体の2/3を占めるなど、サブプライム問題の時の1/4とは大きく情勢が違っている、と指摘している。

 しかし、IMF、OECDなど国際機関や多くのエコノミストの間では、住宅市場の見通しは2007~2008年のグローバル金融危機以来の厳しい時代を迎えると悲観的である。とくに今後も金融引き締めの度合いが強そうな欧米諸国では住宅ローン金利の持続的上昇に見舞われて、住宅価格の下落を招きそうだ、と警戒的なスタンスを示している。

俵 一郎 (国際金融専門家)

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