ザンビアは、アフリカ諸国の中ではザイールに次ぐ銅産出国として有名である。
そのザンビアは2015年に米ドル建てで10年債120億ドルを発行している。しかし、このうちの一本30億ドル分にかかる利払い期日である10月14日に4,250万ドル(約45億円)の利払いができず、11月13日まで一か月の猶予期間(グレースピリオド)を設けた。
ザンビア政府は債権者に利払いの再繰り延べを要請したが、これが拒否されてザンビアはアフリカ諸国の中でコロナ禍後。初の債務不履行を起こした。
ザンビア政府は「債権者がザンビアの要請に応じなかったのは実に遺憾である。我々としては債務の持続可能性に関する解決に今後も取り組んでいく」との声明を出した。
IMFでは12月に中断しているIMFプログラムについて同国との協議に入る予定だ。しかし、目下のところザンビア政府と債権者の直接的な話し合いの機会は持たれていない。なお今年に入ってからエクアドル、レバノンさらにはアルゼンチンがデフォルトを起こしている。
ザンビアの通貨(クワチャ)はコロナウィルス感染の拡大懸念に伴う世界的な住宅、建設投資などの大幅減が銅輸出を直撃したため7割近い下落となった。
IMFによれば同国の今年の実質成長率は-5%のマイナス成長となると予想している。また公的債務残高のGDP比も2010年の20%から2020年には120%に著増している。G20ではパンデミックの拡大に伴う最貧国の債務救済に動き出しておりザンビアの債務問題も俎上に上っている。
ザンビアは2015年までの10年間にGDPが2倍になる高成長を達成した。銅鉱山の民営化を通ずる生産性の上昇と中国の銅需要急増が背景にある。
ザンビア政府は経済好調の下で経済の「離陸」と貧困率の低下を目指して、インフラ投資拡大を目指した。ただ、このインフラ投資が世銀などを通じる譲許的融資(concessional loans)の基準に合わないため、国際金融市場での起債や中国からの借り入れに踏み切ることになった。
しかし、そのインフラ投資には必ずしも国力に見合わない第二の国際空港、高速道路の建設や水力発電用の大規模ダム建設などが含まれていた。対外債務の急増により、先行きの債務返済を危ぶむ声がコロナ禍以前から出ていた。
ザンビアの債務問題の解決を複雑にしているのは、債権者が銀行ではなく、欧米のヘッジファンドが主力であることだ。銀行融資であれば、一部屋に集まって合意に向かって妥協しない銀行に圧力をかけることで債務減免などの方策が比較的容易に定まる。
しかし、世界中に散らばるヘッジファンドは強欲であり、かつまとまりに欠けており、今後の交渉難航が予想される。
投資家が利払いの繰り延べを拒否した背景には、中国からの借り入れ(34億ドル)の存在もある。
中国に対しては元利払いが実施されるのではないかとの疑念がある。債務返済にあたっては全投資家を同じ条件で扱うプロラタ条項がある。民間投資家はこの原則に基づき中国を優遇して自分たちだけがヘアカット(債務元本の削減)の危険にさらされるのは不合理だと主張している。
なお中国に対してはパリクラブ(債権国会議)に参画すべきだとの議論が国際機関などで巻き起こっているが、中国は取り合っていない。ザンビアの例にも見られるように中国の輸銀、開銀などからの借り入れはコマーシャルベースなのかソブリン融資なのかの議論も決着していない。
同国のルング大統領は「空港や道路などのインフラ投資は価値があるものである。2021年の大統領再選後も国家のために尽力するつもりだ」と債権者を牽制している。もっとも、2016年に再選されているため、憲法で禁止されている三選目を迎えるとして野党や社会団体が強く反対している。
ルング大統領の主張が正鵠を得ているかどうかはともかく、ザンビア同様にコロナ禍の中で低成長、国際収支の赤字に直面しているアフリカ諸国は多く、デフォルトの連鎖が起こりかねない。
債務構造としても中国のウエイトが高い国が多い。これは中国がアフリカ諸国に対して天然資源の確保と自国製品の輸出マーケットとして開拓する狙いから積極的に融資してきたためだ。
エチオピア、アンゴラ、ケニアなど大半のアフリカ諸国は、金利は2~3%程度と高いものの、世銀のような厳格な審査がなく、融資実行も早い中国の国営金融機関からの借り入れ依存度を高めてきた。アフリカ諸国全体では中国の融資総額は世銀融資を上回るとみられている。
アフリカ諸国ではコロナ感染の拡大とともにサブ・サハラ地域を中心に債務返済に窮している先が多い。中国からの融資のプレゼンスも大きい。IMF・世銀ではアフリカ諸国では17か国が債務返済で危険水域にあると分析している。ザイールの債務不履行の帰趨(きすう)は今後、アフリカ諸国の債務問題に大きな影響を与えよう。