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コロナ後 先進国・新興国の復興格差が拡大へ

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【経済着眼】先進国の急回復時 金融引き締めが新興国襲う

公開日: 2021/04/21 (ワールド, マーケット)

【経済着眼】先進国の急回復時 金融引き締めが新興国襲う

俵 一郎 (国際金融専門家)

 4月のIMF世界経済見通し(WEO)では2021年の世界経済の成長率を6・0%と昨年10月の見通し(5.2%)から引き上げた。昨年10月の見通しでは「新型コロナ感染の影響は、生活水準に対する長く続くダメージとなる」と極めて悲観的であった。

 しかし、IMFはわずか半年で様変わりの楽観的見通しに急転回した。その大きな要因が米国経済の著しい復調だ。米国の2021年中成長率は6.4%と10月見通し(3.1%)を大きく上回って力強い回復を示す見通しとなっている。

 一方でIMFは「広がる復興の差」(divergent recoveries)として先進国、新興国間で経済回復の差が拡大することも懸念している。

 IMFによればパンデミックの終結にはいまだほど遠いが、米国を筆頭に各国の財政金融政策が思い切った刺激策に打ってでたことが先進国経済の回復に大きく寄与したと以下のような分析をしている。

 第一には2020年の第二四半期における二桁のマイナス成長に落ち込んだ後、米国では家計も企業も都市封鎖(ロックダウン)に対して極めてうまく適合していった。家計は在宅勤務で効率的に仕事をこなし、ショッピングも外出できない代わりにオンライン・ショッピングを活用した、レジャー関連でもオンラインを活用した観劇、映画、旅行などでしのいでいった。

 第二には米国、欧州、日本など先進国では就業機会を失った失業者や時短を強いられた労働者に対しても政府による大幅な所得補償などが行われたことだ。中央銀行も思い切って国債を買い上げてこのような政府の財政支出を支えてきた。

 もし、このような思い切った財政金融政策がなければ、2020年の成長率(世界全体で-3.3%)マイナス幅は3倍になり「1930年代の大恐慌が再現されるところであった」(ゲオルギエバIMF専務理事)と振り返ってその政策効果を評価している。

 第三にはうれしい誤算ではあるが、少なくとも4~5年はかかると見られた有効なワクチンが一年余りで開発されたことだ。うれしい誤算と言えよう。アストラゼネカのワクチンが多くの副反応を起こした、ファイザー製も思ったほど数が確保できない、という問題はあっても米英など接種率の高い国における死亡率の急低下を見ればその有効性は実証できよう。

 このような複合要因によってパンデミック発生前に見通した2024年の成長率に対して、2020年のパンデミック発生による成長率のロスは先進国の場合、1%程度に過ぎなかった。

 先進国の2020年の債務残高は第二次大戦後もっとも高くなった。大規模な財政出動をファイナンスするため政府債務が急増したからだ。G20諸国では債務残高のGDP比が2019年の82.1%から2021年には103.2%とGDPの水準を上回る急上昇をみせた。しかし、同比率は2026年に至っても105.7%と微増となるに過ぎない。債務残高を上回る高い成長率が続くとみられるためだ。

 このような米国を筆頭とする先進国経済の楽観的な見通しは、先進国の株式市場でNYダウ、日経平均などが新高値を付けたことに反映されている。また実態経済指標も米国の生産、雇用、消費指標などを典型例として大きく改善、世界中のPMI(購買担当者景気指数)も6年ぶりの高水準となるなど、製造業、サービス業を問わずに強さを見せている。

 しかし、こうした先進国を巡る良いニュースは世界全体で共有されているわけではない。世界経済の58%を占める新興国の経済はコロナウィルス感染の影響を大きく被った先が多い。多くの新興国で生活水準が低下し、パンデミックの前に予想されていた成長パスを大きく下回ったままだ。

 上記の先進国全体でわずか1%に過ぎなかった成長ロスは新興国全体で4%、ラテンアメリカで6%、中国を除くアジア新興国で8%も下回ることになった

ゲオルギエバIMF専務理事=IMFのHPから

 IMFのゲオルギバ専務理事は先進国の「光」に対する、新興国の大きな「影」がもたらす先行きの不透明性に警鐘を鳴らしている。新興国では先進国のようにコロナ感染が原因となった失業者に対して莫大な所得補償を行えるほど財政が豊かではない。また国際金融市場で起債・借入で多額の財政を調達するほどの信用力もない。

 さらに医療システムが貧弱であり感染が蔓延した場合の対応ができない。自国民に対してワクチン接種を潤沢に施すこともできない。困っている途上国に対してSDRを配分して支援すべきだ、ワクチンの特許権を解除してどこでも素早く製造できるようにすべきだ、という議論はこうした背景から生まれている。

 新興国の景気スローダウンないし景気後退はいわゆる債務危機や大量の資本流出につながりやすい。とくに先進国で今後、景気が過熱してインフレ圧力が高まったような場合に中央銀行が利上げを余儀なくされるような事態になれば、新興国からの資本流出が増大する恐れは強まる。

 米国が予想を上回る成長とインフレ懸念の高まりを背景に長期金利が上昇し始めているのに不気味さを感じている国際金融の関係者は多い。

 そうは言っても新興国の経済ファンダメンタルズは前回債務危機が発生した2013年に比べれば、いまのところ良好と言えよう。しかし、トルコ、ブラジルなどには既にプレッシャーがかかっており、通貨の下落が目立ってきている。

 最も重要なのは、各国や国際機関がいつ非常時モードの経済支援策を止めるかだ。端的には国内の所得補償などを打ち切るタイミング、国際的な支援を打ち止めにする時期を指す。仮にあまりにも早めに国内支援策を打ち切ると、失業の増大や不必要な企業倒産を増やすことにつながる。

 2010年に債務危機が起きたのは、経済が正常化する前に緊縮措置に転換してしまったためだ。

 一方であまりに経済支援モードからの転換が遅いと、不必要な景気の過熱を生み、それに続いて反動的に起きる景気の後退と国際金融市場における新興国の不安定な金融状況につながる。言うに易く、行うのが難しい適切な「出口」のタイミングを探るのが政策当局者の最大の責務となろう。
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