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伊ドラギ首相の政策運営に賞賛の声

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【経済着眼】大衆迎合政党も支持、いつまで続くかが焦点

公開日: 2021/08/18 (ワールド, マーケット)

Reuters Reuters

俵 一郎 (国際金融専門家)

 イタリアが欧州で注目の的になっている。サッカーの欧州選手権で英国を破って優勝し、東京オリンピックでも陸上男子100m走でもイタリア選手がこの種目でイタリア初の金メダルをもたらした。いずれも戦前の期待は低かった。

 注目の的になっているのはそうしたスポーツでのイタリアの活躍もあるが、最大の成功はドラギ政権というイタリアでは珍しく機能度の高い政権ができたことだ。もともと期待は高かったが、それに見合った働きぶりで、支持率もイタリアではまれな7割近くに達している。

 2月にマッタレッラ大統領によってドラギ氏が首班指名されたときには驚きが広がった。同盟や五つ星運動などイタリア特有の大衆迎合主義の政党もドラギ首相に支持を誓った。経済界、海外の投資家、EU当局などは一様に喜びを示した。

 とは言ってもドラギ氏は欧州中央銀行(ECB)の前総裁在任中に「できることは何でもする(Whatever it takes)」の一言でユーロ圏を救ったように、イタリア救済のために何かミラクルを起こしたわけではない。しかし、就任以来半年でドラギ首相はイタリア経済の回復と再興の基礎を作り上げたことは間違いない。

 ドラギ首相は、この数十年間で初めて機能不全の代名詞となっていたイタリア政治のイメージを変えた。ただ膨大な債務、さらには低成長、硬直的な労働市場など根深い経済問題を抱えているイタリアは、引き続き、長い目で見た場合、EU安定にとっての脅威であるという点は変わっていない。しかし、目下のところ、イタリアは楽観論と自信を備えている。

 ドラギ首相の最大の業績は、イタリア国内でいったんはつまずいた新型コロナのワクチン接種を再び盛り返したことだ。3月初、イタリアではEUの平均を大きく下回る人口100人中8.6人しかワクチン接種を受けていなかった。さらに悪いことには感染しやすい高齢層に優先接種することに失敗していた。このため、他のEU諸国で死亡率が低下している時にイタリアは逆に死亡率が上昇していた。

 いまやイタリアの接種率はドイツ、フランスを上回り、近々先行していた英国を上回るものとみられている。夏のバケーションシーズンを前にしてイタリアでは一日50万回の接種ペースに達している。ドラギ首相が目標としていた9月末までに12歳以上のイタリア国民の80%に接種を終了するという目標も視野に入ってきた。

 これはレストラン、映画館、劇場などに入場するのにワクチンパスポートを必要とすると定めた政府の方針がワクチン接種を後押ししたためである。フランスと違って、イタリアではワクチンパスポートが一般国民の反発を招くこともなかった。今年5%を超える経済成長と感染率の抑制に成功しつつあるため、イタリアは新規の抑制策なしに来年春頃には経済の開放をすることが可能になった。

 ドラギの二番目の功績は、経済専門家らしくイタリア経済の復興を強力に推し進めたことだ。イタリアは今後5年間で経済を再興させるために総計2,350億ユーロというEU諸国の中で最大規模となる経済政策を動員することになった。うち1,950億ユーロはEU基金から供与される。

 欧州の病人イタリアの経済を再興することがEU全体の経済再興につながるとのメルケル独首相やマクロン仏大統領の英断の賜物だ。その後、いつものイタリアであれば、大衆迎合政党がいちゃもんをつけてEUと対立するところであるが、ドラギ首相が誕生し、EU首脳や欧州金融界で信頼厚い同氏の登場でスムーズに承認された。

 先週、ドラギ首相はイタリア固有の複雑な刑事裁判制度を単純化する政策も打ち出した。これはイタリアの内政上、極めて重要なことだ。というのも、いまはドラギ政権を支える反権威主義を唱えていた五つ星運動などが実施した制度改悪の一部を覆すことになるためだ。

 五つ星運動がそれを黙認したということは、大衆迎合主義で知られたイタリアの政党が政治的な犠牲を甘受して変化を起こすことを示した証左といえるためだ。

 いずれにしても、ドイツとフランスが不透明な選挙に突入するので、いまやイタリアはEUにおける安定の一つの極となりそうだ。イタリアの過去における政治的な激動と不安定さを思えば、これはイタリア国民も大喜びしそうな驚異的な出来事である。

 大きな疑問はドラギ首相がいつまでその地位に留まるかである。最短の場合、来年2月にマッタレッラ大統領の任期が到来するまでだとみられている。なぜなら同大統領の後継としての最有力候補はドラギ首相であるからだ。テクノラート首班で議席を持たないドラギ氏としてもその方が望ましいとも思っているようだ。

 仮に大統領に就任しなかった場合にも、次回総選挙が2023年6月に予定されている。最長でそこまでであろうか。しかし、そこまで行きつくのも大変である。いまは極右から極左政党まで、各政党の思惑と国民の間のドラギ人気を横目で見て連立政権内にとどまっている。しかし、例えばサルビーニ同盟党首は目下のところ、反ユーロを取り下げ、極右の旗を降ろして中道右派路線を装って連立政権の枠内にとどまっているが、どこでどう豹変するかわからない。
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