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FRBが利上げ幅縮小 安易な金融緩和期待は禁物

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【経済着眼】市場の過剰期待を戒めたFRB、景気悪化でも引き締め緩めず

公開日: 2022/12/16 (マーケット)

パウエルFRB議長=Reuters パウエルFRB議長=Reuters

俵 一郎 (国際金融専門家)

 FRBは12月14日の連邦公開市場操作委員会(FOMC)において政策金利を0.5%引き上げて4.25~4.5%にすると全員一致で決定した。過去4回のFOMCでは0.75%の利上げであったが、今回は0.5%に利上げ幅を縮小した。これは金融政策の累積的な効果と政策発動が経済活動に及ぼすラグ、インフレの進展などを考慮したものである。

 FOMCメンバーの経済見通し(参加者予測の中央値)をみると、2023年の実質GDPは前回9月見通しの前年比1.2%から0.5%へと大幅に引き下げられている。失業率も上方修正されて2023年は4.6%(前年3.7%)となるなど、景気の減速度合いが強まるとみている。一方で注目の個人消費支出デフレーターは2023年で3.1%(同2.8%)と3%台のインフレが続き、2%のインフレ目標がほぼ達成されるのは2025年(2.1%)となる予測である。

 こうした経済予測の下で政策金利(FFレート)の2023年見通しは9月見通しの4.6%から0.5%も引き上げられて5.1%の予測となった。インフレの持続見通しの下で金利のピーク到達点が 5%台になったことはハト派的な見通しを抱いていた市場関係者にはショックであった。14日のNYダウは一時、前日比200ドル程度上昇していたが一転して140ドル程度の下げで終え、15日はさらに一時900ドルも下げた後、終値は764ドル安だった。

 今回のFRBの利上げが4回連続で0.75%の大幅引き上げが続いた後に0.5%に上げ幅が縮小されたのは、さしもの高インフレもピークを過ぎたため、との見方が多い。たしかに卸売物価、海運運賃、さらには天然ガス市況などが夏場とくらべるとかなり伸び率が低下している。FRBは潜在的にこれまでに比べて利上げ幅が小さくなると示唆した。

 FRBは、今年に入ってから、インフレ抑制のために利上げを貫いてきた。その際に「どのくらいの利上げ幅」で、「どれくらい早く」、そして「どのくらい長く」、利上げするのかが注目された。

 「どのくらいの利上げ幅」という点については、到達点の金利が5%を越えるということで、現在の4.25~4.5%からあと0.75%ということになる。

 「どれくらい早く」については、市場関係者は来年に入って利下げ幅を0.25%までさらに縮小すると予想している。そうした前提で1、3,5月のFOMCで0.25%ずつ3回の利上げとすると少なくとも来年5月までは利上げを続けることになろう。

 「どのくらい長く」についてはパウエル議長が記者会見で「23年中に利下げはない」と明言している通り、利下げに転じるのは再来年の24年になってからであろう。3月に始まった金融引き締めは、最低3年は続くことになる。

 利上げ後の金利水準である政策金利の4.25~4.5%というのは3%程度とみられる中立金利を大きく上回っている。モーゲージ金利は7%を越えており、住宅投資にも陰りが見える。一方でサービス業を中心に労働需給は引き続きタイトで賃上げの広がりが懸念されている。物価=賃金の悪循環を防ぐためにもFRBとしては慎重な金融政策運営スタンスを維持していこう。

 さらに先行きの米国経済は不確実性に満ちている。ウクライナでの戦争に決着がつかず、ゼロコロナ政策を取りやめた中国の需要拡大に伴うグローバルインフレ再拡大の懸念があることなどから、インフレにはアップサイドリスクも存在する。

 結局、FRBは利上げのペースを落としていくとしても、パウエル議長が何度も強調してきたようにインフレ圧力が和らぎ、2%のインフレターゲットが確実に達成できることが視野に入るまで金融引き締めスタンスの手を緩めないのは確実だ。

 株式市場や債券市場では「FRBは景気後退に陥るのを避けるため来年にも利下げする」「2%のインフレ目標を4%に引き上げる」といったマーケットトークが行きかっていた。しかし、パウエル議長はぶれずにインフレ抑制を最優先した政策運営スタンスを貫いている。

 パウエル議長は、8月のカンザス連銀セミナーでボルカー議長による強力な金融引き締めがインフレを鎮静化させてその後の米国経済の持続的成長をもたらしたことを指摘して、自らもインフレファイターたらんとの覚悟を示した。

 パウエル議長は、ミラー、バーンズFRB議長が1970年代のインフレ高進の際に景気後退を恐れて早めに引き締めを解除したのがインフレマインドの定着につながった失敗を胸に刻んでいる。株価下落を防ぐパウエル・プットを見せてほしいというマーケットに潜在する一部の期待には応えられないであろう。
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