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ロックダウンで中国経済急ブレーキ 4月の自動車販売は半減

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【経済着眼】習政権にゼロコロナ政策の修正の動きなし

公開日: 2022/05/20 (ワールド, マーケット)

Reuters Reuters

俵 一郎 (国際金融専門家)

 中国の第一四半期(1-3月)のGDPは前年比+4.8%と2022年中の政府目標(+5.5%)を下回った。この政府目標自体がここ30年で最低の水準である。政府は5月にも経済が底打ちして回復経路をたどると楽観的見通しを示しているものの、民間エコノミストの間では第二四半期のGDPはロックダウンの影響からさらに落ち込み、マイナス成長を見込む先すら見られる。

 現に中国の経済活動は、第二四半期入りした4月になって大きく落ち込んでいる。まず、小売売上高は3月に前年比―3.5%とマイナスに転落した後、4月には市場の事前見通し(-6.6%)を大きく超える同-11.1%と2か月連続のマイナスとなった。2020年3月以来最大の落ち込む幅となった。とくに4月の自動車販売は上海のロックダウン施行などから前年比―48%の大幅減少を見た。5月も上海などでロックダウンが続いており、消費の大幅な落ち込みは避けられそうもない。

 鉱工業生産も3月の前年比+3.5%から4月は同-2.9%とマイナスに転落した。鉱工業生産がマイナスとなったのは武漢でのコロナ感染が拡大した2020年2月以来のことである。とくに自動車は-41%の大幅減産を余儀なくされた。フォルクスワーゲン、テスラなどが操業率の大幅低下に見舞われた。輸出も3月の前年比+15%から4月は同+3.8%へと急速にスローダウンした。

 消費や生産が悪化する中、雇用情勢にも影響が出ている。都市部の失業率も6.1%へと上昇した。とくに16-24歳の都市部若年層の失業率は18.2%と既往最高を記録した。年間1,000万人の新規雇用機会を生み出し続けてきた習近平政権にとって失業者の増加は大きな社会的、政治的なリスクの出現といえよう。

 中国では、ゼロコロナ政策の下、3月下旬以来、上海などでロックダウンが続いている。人口2,600万人を擁する上海をはじめとする大都市では、大規模で徹底した検査と隔離政策が採られている。中国製ワクチンの効き目は欧米メーカーの製品に比べて良くないと言われ続けてきたが、とくに今年に入ってのオミクロン種の蔓延に対しては一段と効き目が悪いとも指摘されている。こうした中。当局による封じ込め対策も劇的にエスカレートしており、食糧も買いに行けない、といった不満が急増しているようだ。

 習近平政権は過去2年間、概ねコロナウイルスの封じ込めに成功してきた。たしかに累積死者数が5月17日で百万人を越えた米国と比べて、中国では5千人台にとどまっており、感染抑制の成功は習近平政権の大きな成果であった。習近平国家主席は、今年、異例の三期目を目指しているが、ゼロコロナ政策を最優先で実施すると公約しており、大きな成果をあげなければいけない情勢にある。

 ロックダウンは部分的なものを含めて上海、北京など41の大都市で約3億人を巻き込み、中国全体の経済力の30%を占める地域に拡大している。世界の工場として中国は世界のサプライチェーンの要にある。ちなみに世界のコンテナ取扱量ベスト10のうち7つが中国の港湾である。世界のサプライチェーンに大きな影響を及ぼすのも当然であり、アップル、GE、アディダスと言った多国籍企業が深刻な影響を受けている、と発表している。

 ロックダウンの影響は実物経済のみならず、経済運営の責任者である劉鶴副首相が懸念を表明した不動産、金融セクターへの悪影響も拡大している。中国経済はすでに恒大集団など不動産ディベロッパーの流動性危機と不動産価格の下落に見舞われてきた。地方政府傘下の融資平台が発行する債券発行額も7,580億元と前年同期を25%ほど下回っている。

 中国政府、中国人民銀行などは景気浮揚の観点から融資平台への「適切な資金供給を通じて建設需要にこたえるべき」と銀行を指導している。しかし、銀行にとっては、デフォルトリスクも高まっているため、融資スタンスは慎重化していると言われている。

 金融セクターでは、不動産セクターに加えて、ロックダウンで業況が悪化している中堅・中小企業向け融資も控え気味である。中堅中小企業は国有企業などと比べると圧倒的に小規模ながら、中国全体における雇用の8割、産出量の6割を占める存在である。しかしながら、今年1~3月の中堅中小企業の売上はサービス業のウエイトが高いためコロナ感染前の2019年の同時期の1/4に落ち込んでいる。金融機関としては、当局の中小企業向け融資の拡大指導にもかかわらず、融資の焦げ付きが経営を揺るがす恐れが大きいと手を拱いている。

 中国人民銀行も16日、不動産市場の支援のために第一次取得者向けの住宅ローン金利を4.6%から4.4%に引き下げた。政府もインフラ投資の拡大と中小企業向け金融支援の拡大方針を打ち出した。しかし、マンション建設などの落ち込みは続いている。

 このような刺激策より重要なのは、ゼロコロナ政策のファイン・チューニング(微調整)を図ることにあるというのが一致した見方である。かつて中国寄りを批判された世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長は「中国のゼロコロナ政策は持続可能な政策とは言えない」と切り捨てている。

 しかし、習近平政権が経済的にはマイナス要素が大きいことが自明であっても沽券にかかわるのでいったん採用したゼロコロナ政策を緩める様子は見られない。たしかに広大な国土、13億人の人口を抱える中で、いったんコロナ感染が拡大すれば十分な医療体制を敷くことも困難である。従って、当局としてはゼロコロナ政策で感染を徹底して封じ込めたい、という側面もあるのであろう。ワクチンの有効性が低そうであることも影響していよう。

 政治的にもっとも重要なのは、習近平国家主席にとっては、ゼロコロナ政策は、中央、地方の共産党幹部が自分の威光にどれだけ忠誠を誓うのか、という面でのリトマス試験紙となっていることだ。習近平政権としてはGDPが多少のマイナスになろうが、政治的なプロパガンダを貫徹して、偉大な実績を残すことや忠誠心をあおって支配力を一段と強めるメリットが大きいと計算しているようにうかがえる。
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