先週末の26日発表の景気指標は全体に予想比では下振れ気味だった。
11月の鉱工業生産は市場予想の前月比0.8%増に反し、同0.6%減となった。生産は一進一退が続いている。生産を需要項目別にみると、設備投資に関する資本財(輸送機械を除く)は輸出の回復に支えられて底入れの兆候がみられる。一方、耐久消費財は消費の回復が鈍く在庫調整に時間がかかっている。11月の生産データは、この資本財生産の回復に対して耐久消費財の生産抑制が続くという綱引きとなり、製造業の生産回復が依然として力強さに欠けることを示した。
耐久消費財の売れ行き不振はインフレ率にも表れている。一部の耐久消費財で在庫解消のため値引きが行われており、テレビ、パソコン、洗濯機、エアコンなどの価格が前年比でマイナスに転じてきている。これに生鮮食品を除く食料価格の上昇一服が加わって、東京都の12月中旬速報値の消費者物価指数(CPI)はコア指数(生鮮食品を除くCPI)で11月の前年比2.4%から2.3%(消費増税の影響を除くと同0.5%から0.4%)に減速した。
11月のCPIは消費増税の影響を除いたベースで、コアインフレ率が0.7%、コアコアインフレ率(食料とエネルギーを除く)が0.4%となった。コアコアインフレ率は2ヶ月連続で前年比1%を下回った。
11月の小売売上高も前月比、前年比とも市場予想を下回った。消費の弱さは原油価格の下落による燃料小売業の売り上げ減も響いているが、家計マインドの弱さも一部影響しているとみられる。家計がまだ賃金増が持続可能なものかどうかに確信が持てない中で、消費税率の引き上げにより家計の購買力が抑制された。家計マインドは慎重な状態が続いているといえる。
だが、消費の弱さが続き、インフレ率がどんどん下がってデフレに逆戻りするというリスクはないだろう。原油安は短期的にはインフレ率低下要因となり、2015年前半については、コアCPIは1%を下回る状況が続くだろう。しかし年後半には、日本経済が回復トレンドに回帰することや、今夏以降に進行した円安の影響から、1%台に戻り始めると予想しておきたい。
景気指標はあしもとの景気の弱さを示したが、日銀短観や鉱工業生産の先行き見通しなどは企業の景気回復見通しが崩れていないことも示している。冬のボーナス増などを受けて、家計マインドがどの程度改善するかという意味では、12月の消費のデータは注目される。さらに、消費が底堅く回復していくには、2015年度春闘での妥結内容がますます重要になってきているといえるだろう。