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遅すぎたFRBの引き締め 利上げ加速は必至

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【経済着眼】途上国や日本への悪影響大きい

公開日: 2022/02/16 (マーケット)

パウエルFRB議長=Reuters パウエルFRB議長=Reuters

俵 一郎 (国際金融専門家)

 2月11日に発表された米国の1月消費者物価(CPI)は前年比+7.5%と前月(同+7.0%)を上回り、40年ぶりの高騰を示した。市場ではこのCPIの大幅上昇におののき、10年物国債がついに201年以来となる2%の大台を越えた。

 金融政策の動向を占うと言われる2年物国債は11月の0.4%近辺から1.64%とさらに大幅な上昇を記録した。株価をみてもNYダウは11日終値で34,738ドルと前日比500ドル以上の急落を示した。14日の東京市場でも日経平均は一時27,000円の大台を割れた。

 FRBの利上げペースについては連邦公開市場委員会(FOMC)のメンバーの大半は22年中3回の利上げを予測していた。しかし、パウエル議長などFRB幹部の発言からは一向に収まらないインフレを眺めて量的緩和の終了する3月にも直ちに利上げ、その幅も通常の0.25%でなく0.5%となろうと推測されている。

 さらにセントルイス連銀のブラード総裁も7月のFOMCまでに1%の利上げがあろう、とコメントしている。年内の利上げ回数についての市場予測は大半がFRBの二倍になる6回(通算1.5%)、バンカメやゴールドマンザックス社では7回を予想している。

 今後のCPI上昇率も高止まりが予想されている。その理由は、第一には賃金=物価の上昇という悪循環に入りかねないからだ。足元の平均賃金はサービス業の人手不足などを背景に前年比+5.7%(1月の平均時給)と大幅上昇を見ている。

 しかしながら、これでも急上昇するCPIの下では実質賃金はマイナスで推移している。米国のみならず、世界各国で賃金水準が物価上昇率を上回り実質賃金がプラスとなることを目指す以上、労働需給が逼迫する中で、これから賃金水準がじわじわと上昇するのは避けられないという見方が強まっている。

 さらに確かなことは住宅価格が二桁台の大幅上昇を続けてきたため、CPIで最も高い構成比となっている「帰属家賃」(持ち家も借家と同一のサービスが消費されたものとして市場価格で評価された家賃のこと)がラグを伴って上昇することも今後のCPIが持続的に上昇する予測の大きな理由となっている。

 第三には、米国のみならず世界各国でCPI上昇の最大の要因となっているエネルギー価格の上昇が簡単には収まりそうもないことである。グリーンフレーションと揶揄(やゆ)されるように気候変動を予防する観点から各国とも風力、太陽光発電など再生エネルギーの増加に力を入れている。

 その一方で温暖化ガスを排出する石炭、石油の新規開発は抑制されている。車社会の米国でガソリン価格が1ガロン=3.5ドルにまで上昇している。比較的クリーンと言われている天然ガスやLNG(液化天然ガス)の価格が石炭依存度の高い中国やウクライナ問題でロシアからの供給を絞らざるを得ない欧州諸国の引き合い急増から上昇するのも当然だ。

 バイデン政権も苦戦必至の中間選挙を控えて物価抑制姿勢を強めている。ガソリンや食料品価格の急上昇は民主党支持が多い黒人、ヒスパニック層の家計を直撃するからだ。FRBが利上げ姿勢を強めるのも当然だ。

 筆者が本誌で昨年5月に指摘した(「FRBはインフレ兆候に見て見ぬふり」2021年5月10日付)ようにFRBの量的緩和、利上げの時期が遅きに失したことが大幅な金融引き締め予想を招いている。FRBはディスインフレの時代が長く続き、しかもパンデミック対策として空前の金融緩和を迫られたという事情もある。

 しかし、サマーズ元財務長官が指摘したように財政金融政策からの景気刺激が行き過ぎて需要が超過する状況となった。金融面では当時、通貨供給量(M2)がパンデミック前と比べて3割近くも上昇していた。本来、パーティーが盛り上がってきたときにパンチボールを取り上げるのが中央銀行の役割のはずである。

 パウエル議長が「ミスター・トランジトリー(インフレ率上昇は一時的)」として半年も事態を静観してきたことがインフレ心理に火に油を注いだと思う。知人の共和党系エコノミストは「パウエル議長はエコノミスト出身でないだけにFRBに200人以上いる博士号を持つエコノミストの見解に従った」ため判断を間違えた、と指摘していた。

 いま市場で恐れられているのは物価上昇がピークアウトしたころに金融引き締めの効果が出て景気後退をもたらすことである。

 現に米国債のイールドカーブは急速にフラット化ないし逆イールド化をみている。往々にしてこういうイールドカーブの形状は先行きの景気減速ないし景気後退を予測していると言われる。

 例えば、10年債と2年債の利回り差は、主として金融政策の予測を反映する2年債の利回り急騰から一年前の1.2%から0.4%まで縮小、急速にフラット化している。10年債と7年債では、7年債の利回りが高い、という逆イールドになっている。

 しかし、FRBはここまでCPIが上昇してくれば政治的にも手をこまねいているのは許されない。FRBとしてもナイフの刃先を歩くような綱渡りの心境ではないか。

 それでも米国はGAFAなどのテック企業やエネルギー価格の高騰を享受できる石油、シェールオイル・ガス業界も存在する。金利高騰の影響をもろに受ける対外債務が累増している開発途上国や交易条件の悪化にあえぐ日本などへの悪影響が大きくなっていこう。
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