中国の株価暴落が先週まで世界の経済を揺るがせた。先週の日経平均の二万円割れにはギリシャ情勢もさることながら中国の株価暴落の影響が大きかった。
上海総合指数は中国人民銀行の利下げを契機に年初から6月12日まで約60%上昇、しかし、その後3週間でおよそ30%下落して7月8日に3507.19を付けた。7月13日の最新計数では,983.90と4,000目前まで戻してきた。中国では高騰を続けてきた不動産価格が一転して下落するようになった。高利金融商品として人気を集めたシャドーバンキングの資金調達手段であった信託商品なども規制が強化されて魅力に乏しくなった。
日本人は3,4人集まると、仕事の話、ゴルフの話になるが、中国人は3,4人集まると、金もうけの話になるという文化の差もある。こうした中で中国の一般個人は上海総合指数でいえば5,000の大台から下落してほぼ7年間低迷、2,000台をうろうろしている株価に注目した。
そこで株式市場は個人主導でマネーゲームの主戦場となった。売買の8割が個人で占められ、企業業績を分析することもなく、「上がるから買う、買うから上がる」という典型的なバブル相場となった。
こうした経緯から言って、いずれバブルが崩壊するのは、これまでの中国株価の動きと同様に自明とも言えた。そもそも、企業業績のバックにある中国の実体経済は実質GDPが7.0%と24年ぶりの低さで、国内需要の低迷から輸入がここ数ヶ月二桁減少を続けてきた。むしろ株価は下がって当然のところ、逆行高を演じたわけだ。
それより世界を驚かせたのは周章狼狽ともいうべき中国政府の対応だった。株価暴落の最中の6月27日に中国人民銀行に0.25%の追加利下げと預金準備率の引き下げを命じた。それ以降、年金の株式保有比率引き上げ、証券会社による株式ファンドの拡大、証券金融会社に対する人民銀行の株式買い取り資金供与などが続いた。
圧巻だったのは「5%以上の株式保有比率を超える大株主は6か月以上株式を売却してはならない」「上場企業の5割近くに当たる1400社で株式売買停止を宣言した」「当局が株式の空売りを仕掛けている投機家を見つけた場合には厳罰に処す」といった報道だ。中国政府は「市場」をコントロールできる、とみて強硬策を打ち出してきたといえよう。
今回の暴落は一旦止まったかに見えるが、中国経済の大幅な減速、信用バブルに対する警戒感の台頭などを背景にまだまだ安定したとみるのは早計と言えよう。7月15日にも主要経済指標が発表されるので、そこを乗り越えるかどうかが一つの試金石と言えよう。
今回の株価暴落で一番はっきりとしたことは、中国では「市場型資本主義」を打ち出してはいるものの、都合が悪くなればいつでも強権を発動するという共産党一党支配の現実だ。外国資本が中国に直接投資をする時には大歓迎される一方で、退散するのは容易でないのと同じ文脈だ。
世界の投資家に恐怖感を与えた中国政府の今回の株価介入策は長い目で見れば、中国政府への信頼度を引き下げたという意味で株価が戻ったとしても大きなマイナスであったと言えよう。