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経済危機とコロナ失政で崖っぷちのブラジル大統領

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【経済着眼】10月の大統領選は混戦模様 ルーラ元大統領も出馬へ

公開日: 2021/12/31 (ワールド, マーケット)

ボルソナロ大統領= ccbyCarolina Antunes ボルソナロ大統領= ccbyCarolina Antunes

俵 一郎 (国際金融専門家)

 中南米最大の経済大国であるブラジルでは景気が後退する一方、インフレが加速する危機的な状況に直面している。この度、発表された2021年7~9月実質GDPは前期比-0.1%と前期(同年4~6月)に続いて二期連続のマイナス成長となった。二期連続でマイナス成長となっていわゆるテクニカル・リセッションの定義からは景気後退と認定される。 

 とくに財ならびにサービスの輸出が前期比-9.8%、農業生産が干ばつ被害から-8%と大きなマイナスとなった。実質GDPは、2021年1~3月に前期比+1.3%と三期連続でのプラス成長となってパンデミック前の2019年末の水準に復したのも束の間の出来事となった。2022年の実質成長率に関するブラジルの市場コンセンサスは+0.6%、民間エコノミストの中には2022年の経済成長率はマイナスに転落する、という厳しい見通しを示しているところもある。

 このようにブラジル経済が2021年春頃から再び景気後退に入ったのには、いくつかの要因が挙げられる。一つは世界的に見てもブラジルにおける新型コロナの感染状況は最悪の部類に属していたことだ。感染の第三波は21年6月にピークとなり新規感染者数は6/23日に実に77,328人に達した。

 これはボルソナーロ大統領が「新型コロナは風邪に毛の生えた程度のもの」「ブラジル人の男なら恐れずに振舞え」と全く科学的根拠もなく、とくに感染当初は事態を甘く見ていたことが大きい。さらに経済優先の立場も加わってロックダウンにも消極的であった。同大統領は厳しい感染隔離措置を取ろうとした保健相を次々と解任したほどだ。

 第二には、20年振りの高水準となるインフレ高進とその抑制を狙った思い切った金融引き締めの影響である。コロナ感染の拡大の一巡に伴って、いまや最大の問題は、貧困層の生活を直撃するインフレの加速だ。

 消費者物価上昇率は20年春先には3%台まで低下したものの、その後ジリジリと伸びを高めて21年10月に+10.7%と二桁台に乗せた。この背景としては世界的なエネルギー価格の上昇にレアル安が加わって輸入物価が上昇したほか、コロナ対策としての多額の給付金給付、干ばつ被害による農産物価格の上昇もあげられている。

 これに対して独立性の高いブラジル中央銀行はインフレ目標値の3.75±1.5%を大幅に上回る物価の高騰を抑制するため、21年3月に5年ぶりの利上げに転じて、その後6回の利上げを行って政策金利は9.25%に達した。同中銀はさらに2022年1~3月中の利上げを予告しており、22年内に11%まで引き上げられるとの市場見通しとなっている。

 第三には、22年10月の総選挙を控えて財政状況の悪化が懸念される中で金融・資本市場の不安が高まっていることだ。ボルサナーロ政権は本質的にポピュリスト政権と言える。例えば、同政権は5,000万人と同国人口の1/4にあたる貧困層を対象に社会保障プログラムを大幅に拡充した。

 つまり、彼ら貧困層に月額400レアル(約8万円)を給付、これを総選挙の来年10月をカバーする12月末まで続ける計画だ。露骨な選挙対策であることは言うまでもない。GDP比で11%に達する世界一高価な社会福祉プログラムとも評されている。

 こうした結果、財政赤字のGDP比は21年の4.4%から今年は7.8%とほぼ倍増するものとみられる。財政規律の大幅な引緩みを懸念して株価のボべスバ指数は6月上旬のピークの13万から10万そこそこまで下落している。

 ボルサナーロ政権は、2019年1月に14年間に亘るルーラ、ルセフ政権の労働党政権を打倒して成立した右派政権である。米国のトランプ大統領と同じく、新型コロナ感染の影響を軽視(皮肉なことに二人とも新型コロナに感染した)、気候変動にも関心を払わず、「アマゾンのトランプ」とも呼ばれていた。

 しかし、同大統領は新型コロナ感染の抑制に失敗、景気も低迷を続けているため、支持率は急降下している。一方で収賄、資金洗浄の罪で有罪判決を受けたルーラ元大統領が最高裁で判決無効とされて10月の大統領選出馬に踏み切る可能性が出てきた。依然として国民的人気の高いルーラ氏の支持率はボルサナーロ大統領を26ポイントもリードしており、いま大統領選が行われれば、第一回投票でルーラ氏が大統領に当選することになる。

 ボルサナーロ大統領は「神様以外におれを引きずり下ろすことできない」と相変わらず豪語しているものの、実際には議会の多数派にすり寄り、国民にはバラマキで歓心を買うまで追い詰められている。

 過激な発言で物議をかもしてきたボルサナーロ大統領から国民の人気が離散していることは事実である。一方でルーラ元大統領も76歳の高齢、左派で国営企業の民営化や財政・経済の構造改革に後ろ向きとされており、とくに金融市場で投資家からの警戒感が強い人物である。

 そこで第三の候補を模索する道も残されている。例えば、セルジオ・モロ判事も大統領候補として挙げられている。ルーラ元大統領が懲役12年を求刑された、おおもとになっている有名な「カー・ウォッシュ・オペレーション(洗車場で不法支払いを行っていたため名付けられた)」を担当した判事である。これは国営石油会社ペトロブラス、建設大手のオデブリヒト社を巻き込んだ一大疑獄事件である。汚職腐敗事件にうんざりとしている国民の人気も高い。このほかシロ・ゴメス上院議員、サンパウロ州のジュリアン・ドリア州知事らの名前も挙がっている。
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