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欧州中銀 利上げでくすぶる「伊危機」を防げるか

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【経済着眼】9月伊総選挙で右派政権なら、EUと亀裂も

公開日: 2022/07/25 (ワールド, マーケット)

Attribution License ラガルド総裁=Attribution License /

欧州中央銀行(ECB)は7月21日の理事会で、政策金利を0.5%引き上げることを決定した。利上げは実に11年振りのこと、0.5%の上げ幅は22年ぶりの大幅なものとなる。

 主要政策金利である中心金利が0%から0.5%に、預金ファシリティー金利が▲0.5%から0%に引き上げられ、2014年以来続いていたマイナス金利が解消することとなった。

 今回の引き上げ幅0.5%はラガルド総裁自身が予告していた0.25%を上回った。6月の消費者物価上昇率が前年比+8.6%とECBのインフレ目標値(2%)の4倍以上に達したうえ、通貨ユーロが1ドル=1ユーロのパリティを20年ぶりに割り込む中、「物価に上振れリスクがあると認識を改めた」(ラガルド総裁)ためだ。

 今回の理事会で、利上げとともに決定されたのは、南欧諸国の金融危機を防ぐためにECB金融政策の「伝達保護手段」(TPI:Transmission Protection Instrument)を創設することだ。

 これは具体的にはイタリアの長期金利上昇ひいては金融危機を防ぐ狙いで設けられたといってよい。

 つまり、理屈建てとしてはこうなる。まず、ファンダメンタルズを反映しない資金調達環境の悪化はECBの金融政策のトランスミッション・メカニズム伝達を阻害する。表向きには「市場分断化(fragmentation)」を防ぐために介入するということになる。

 ECBとしては、そうした事態に見舞われた加盟国の残存期間1~10年の国債、地方債、適切と判断されれば社債までECBが(できれば無制限で)買い入れて、金融市場の危機を未然に防ぐことを狙っている。

 ラガルド総裁はTPIについて「満場一致で決定したことに意義がある」と自画自賛していたが、当初はドイツ、オランダなどのタカ派から中銀の財政ファイナンスにつながると強い反対があった。

 そこで時間をかけた交渉の末、以下のような4つの発動条件あるいはコンディショナリティーを設けた。

 第一には過剰財政手続き(EDP:Excess Deficit Procedure)の対象となっていないこと
 第二には深刻なマクロ的不均衡を抱えていない、具体的には過剰不均衡手続き(EIP: Excessive Imbalance Procedure)の対象となっていないこと
 第三には財政バランスが持続可能かどうか(IMF、欧州安定メカニズム(ESM)、ECB自身の分析を基に判断する)
 第四には欧州復興基金を利用するための「復興計画」で実行を約束した構造改革などを含めて、持続可能なマクロ経済政策(金融・財政政策、構造政策)を採用していると評価されるか
 の諸点である。

 しかし、筆者などはこの4条件が同時に満たされていれば、そもそもTPIの対象となる可能性は乏しいのではないかと考える。

 むしろ、このようなコンディショナリティーはタカ派が賛成してくれるためにラガルド総裁が大きな譲歩を迫られた結果であると考えられる。

 このECBの金融引き締め決定の数時間前にはドラギ首相の辞意表明が行われた。これも金利引き上げと同時にTPIも発表せざるを得ない一因となったと言えよう。

 ドラギ辞任が伝わった金融市場では、イタリア国債が売り込まれて10年債の利回りは一時、0.27%上昇して3.7%に達したほか、最も信用力の高いドイツ債との利回り格差も最大2.38%とドラギ辞任で混乱したわずか2日間で0.3%も拡大した。

 ドラギ氏はECB前総裁としてユーロ危機の際に「できることは何でもやる(whatever it takes)」の一言でユーロ危機を救った。

 その後、ラガルド氏に総裁の座を譲ったが、マッタレッラ大統領の指名で首相となり2021年2月に挙国一致政権を発足させた。コロナ対策やイタリアが欧州復興基金からの多額の資金供与を受ける、などの面で手腕をみせた。最近ではウクライナ危機でEU首脳の中でもリーダーシップを発揮してきた。

 しかし、今回、ポピュリスト政党である「五つ星」、「同盟」など主要与党の離反を受けて辞表を提出した。この結果、来春に予定されていた総選挙は9月に前倒しされることになる。

 世論調査では連立政権に加わらなかった右派の「イタリアの同胞」が支持率24%でトップを走っており、他の右派政党と連立政権を発足させる可能性が高いとみられる。

 目下のところ、イタリアはドラギ政権の下で、EDPの対象でなく、復興計画で約束した構造改革を着実に進めてきた。しかし、次期政権を構成するとみられる右派連合はもともとユーロ懐疑派が多い。

 次期政権が財政運営や構造改革でEUとの対立色を強めて、ドラギ氏が約束した路線から大きく逸脱することが懸念される。その場合にはTPIの適格性条件を満たせなくなってTPI発動が難しくなることになろう。

 こうした状況になる前に市場はECBがどの程度本気で南欧諸国の金融危機を政うつもりがあるのかイタリア、スペイン、ギリシャの国債等に売り仕掛けを起こしてくるであろう。

 ユーロ圏の銀行は概して自国の国債を大量に抱え込んでおり、国債下落は、国債評価損の拡大から銀行危機につながる可能性が大きい。EUさらにECBがイタリアの政治的危機の打開や金融市場安定にどういう役割を果たしていけるか市場は注目している。

俵 一郎 (国際金融専門家)

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