• tw
  • mail

カテゴリー

 ニュースカテゴリー

  • TOP
  • 独自記事
  • IT/メディア
  • ビジネス
  • ソサエティ
  • スポーツ/芸術
  • マーケット
  • ワールド
  • 政治
  • 気象/科学
  • コロナ(国内)
  • コロナ(国外)
  • ニュース一覧

ウクライナ戦争 市場は予想外に安定

あとで読む

【経済着眼】98年ロシア危機の再燃懸念は後退 悪材料は目白押しだが

公開日: 2022/04/07 (マーケット)

NY証取=cc NY証取=cc

俵 一郎 (国際金融専門家)

 ロシアによるウクライナへの全面侵攻から一か月強が経った。ウクライナでの戦争勃発で金融危機が起きるとの懸念もあったが、ロシア国債のデフォルトはあっても1998年のようなロシア危機とそれに伴う世界的な金融危機はありそうもない。

 その金融危機の一環として世界的な株価暴落も予想されていた。たしかにNY、欧州などで一時20%ほど下落する場面もあったものの、その後、戦争前の水準にまで急速に回復した。

 金融資本市場での値動き、とりわけ株価についてはウクライナでの戦争による影響よりも、欧米の中央銀行がインフレ抑制のため、果敢な金融引き締めに動くとみられる影響の方が市場では注目されている。世界的に株価が安定を取り戻したとみなすの時期尚早であろう。

 西側諸国によるロシアに対する経済制裁が導入されて以降、石油、天然ガスなどロシアの産出量が多いエネルギー価格などを筆頭に国際商品市況は急騰を見せた。世界各国では、次第にロックダウンの影響を脱して経済正常化で高進する中でインフレ率が高まっていた。そこにウクライナにおける戦争が加わってインフレ率が一段と加速する一方で世界の経済成長率は大きなスローダウンが予想されている。また多くの多国籍企業がロシアからの撤退を表明するに至っている。

 このような中で1998年に生じたロシア危機の再燃はあるのであろうか。1998年におけるロシアのデフォルトはヘッジファンドのLTCMの破綻を通じて多くの国際的な銀行に甚大な被害を与えたうえ、グローバルな金融システムにも大きな信用不安を及ぼして躓(つまづ)く寸前までいった。果たしてこの時と同じようなマグニチュードで金融不安が起きないのだろうか。

 今回、ロシアは最初の117万ドルの外人投資家への利払いの場面でデフォルト危機が起きるのを巧みに回避した。しかし、誰もモスクワがこのまま利払いを続けられるとは思っていない。4月4日に到来した20億ドルの利払い・償還はロシア軍によるウクライナ市民の虐殺の疑いから制裁強化の一環として米国政府がストップをかけた。さらに先行き、5月25日以降、米国の制裁が強化され、米国籍の企業、市民がロシアとの資金受払を行うことが禁じられる。このときにデフォルトの可能性が一挙に高まることになろう。

 格付け機関のムーディズでは「ロシアのデフォルトリスクないし投資家の潜在的な損失発生は、ここ数週間みられるロシア政府の能力と意欲から推して、依然として極めて高いと言わざるを得ない」と論じている。

 デフォルトが起きたとしても、おそらく1998年のような金融危機は起こるまいとの見方が専門家の間では大勢だ。相対的な比較で言えば今日のロシアに対するエクスポージャーは98年当時多くのヘッジファンドや国際的な銀行が積み上げた大きさとは比較にならないほど少ない。

 LTCMのようなファンドの崩壊によるドミノ効果は想定されない。確かにブラックロックなどが傷ついたとはいえ、トータルの規模でみると、ファンドによるロシア向けレバレッジ(借入金で投資規模を拡大する)は2022年初めで資本金の48%に過ぎない。LTCMは資本金対比25倍のロシア向けエクスポージャーを抱えていた。

 ロシア中銀によれば、ウクライナ危機の前から海外投資家は米ドル建てで200億ドル相当、ルーブル建てで370億ドル相当の債券を保有していたと推計される。確かに巨額と言えば巨額ではあるが、仮にデフォルトしても金融システムが動揺するほどのマグニチュードではない。またブラックロックやピムコのように大量のポジションを保有していた先は既に償却を済ませている。

 ロシア向けの銀行融資も国際決済銀行(BIS)によると、ロシア向けのクロスボーダー貸付は1,214億ドル、そのうち邦銀は95億ドルに過ぎない。国際的な銀行自体が、オーストリア、イタリアなどの一部大手行を除き、監督当局による自己資本比率規制の強化などから資本基盤が充実しておりグローバル金融危機を起こすほどの規模ではない。 

 投資家やアナリストは、グローバルな金融システムをみると、株価が多少の価格下げでとどまり、いまのところ、より広範囲にわたって重大な反応が起きていないことに驚いている。2月24日、ロシアのウクライナ侵攻が開始された最初の段階でこそ、世界の株式相場は大きく値を崩したものの、例えば世界の株式指数であるMSCI指数は戦争開始以前の水準に戻している。S&P500のVIX指数(恐怖指数)も長期平均値を上回って、安定ぶりを示している。

 それでも専門家の中には株式市場で近い将来に急落の恐れがあることを否定しえないと指摘する向きも多い。既にインフレの高騰、それに対応した金利の上昇、株価上昇をリードしてきたGAFAに対する欧州委員会や米国議会による規制強化論、途上国の債務問題、欧米でのBA.2の蔓延や上海のロックダウンなどいつまでも続く新型コロナウィルスの感染、など株式市場にとっての悪材料に事欠かない。株式市場でこれらの要因が相互作用をして危険で予測できない問題が起きても不思議ではない。
続報リクエストマイリストに追加

以下の記事がお勧めです

  • 【経済着眼】 欧州におけるオミクロン変異株の感染拡大

  • 【経済着眼】 利上げ・戦争で米国経済は急減速 景気後退は回避か

  • 俵 一郎のバックナンバー

  • SUBARUアイサイト搭載の日本小型車 米国で相次ぎ安全性で最高評価

  • ラガルドECB総裁が豹変 7月利上げを「宣言」

  • 北欧2国のNATO加盟には疑問

  • 北朝鮮へのワクチン外交を期待

Tweet
LINEで送る

メニュー

    文字サイズ:

  • 小
  • 中
  • 大
ソクラとは 編集長プロフィール 利用案内 著作権について FAQ 利用規約 プライバシーポリシー 特定商取引法に基づく表示 メーキングソクラ お問い合わせ お知らせ一覧 コラムニストプロフィール

    文字サイズ:

  • 小
  • 中
  • 大
  • 一覧表示を切替
  • ソクラとは
  • 編集長プロフィール
  • 利用案内
  • 著作権について
  • メーキングソクラ
  • お知らせ一覧
  • FAQ
  • 利用規約
  • プライバシーポリシー
  • 特定商取引法に基づく表示
  • お問い合わせ
  • コラムニストプロフィール

Copyright © News Socra, Ltd. All rights reserved