ヘッジファンドなど海外の投資家「モノ言う外国人株主」が日本市場で活発に動いている。アベノミクスで株価が上昇するようになってからの目立つようになってきた。
東京証券取引所が発表した株式分布状況調査によると、外国法人等の株式保有率は、3年連続増加の31.7%となった。(安倍政権発足の2012年度は、28.0%。2013年度は30.8%)現在、日本の株式市場では、株式の売買金額のうち60%以上を外国人投資家が占めている状況である。
外国人投資家の比率の増加は、90年代から見られる現象ではあるが、2012年12月から始まった「アベノミクス」よって、景気回復の期待感が高まったことで、近年その増加率が加速している。今年4月には、日経平均が15年ぶりに2万円台を回復した。安倍政権以前の日経平均と比べると、約2.5倍の水準になる。
東洋経済の「会社四季報オンライン」が東証の「投資部門別株式売買状況」をもとに発表した調査結果によると、この半年外国人に人気の企業上位3社は、カーナビ、カーオーディオなどを手がける「JVCケンウッド」(外国人株式保有率 : 34.1% 前回比15.4ポイント+)、「日立マクセル」(23.8% 前回比 15.3ポイント+)、「ブロードリーフ」(53.2% 13.1ポイント+)となっている。そのうち、自動車関連業を手がける「ブロードリーフ」は、外国人株式保有率が53.2%と、半分以上の株式が外国人によって保持されている。
外国人投資家は、企業の株価を牽引してくれる存在でもあるが、その強硬な態度が企業にとって厄介な存在になることも、しばしばである。2013年当時、「SONY」の株式約7%を保有していたヘッジファンド運用会社サード・ポイントのダニエル・ローブ氏は、まさに「モノ言う外国人株主」であった。
ローブ氏は、2013年の映画の興行収入が振るわなかったことに関して、映画部門の幹部にやりたい放題させている表れだと批判したり、ソニーの音楽・映画部門の株式の15%から20%を上場することを求めるなど、経営陣に強い態度を示していた。
2014年にローブ氏は同社の株を売却し、両者の関係性は解消されたが、サード・ポイントは、今年5月に産業機械メーカー「ファナック」の株式を取得後、会合を開き、株主還元策を強化することを求め成功している。そのほか、「モノ言う外国人株主」としては、大手広告代理店「アサツーDK」の株主シルチェスター・インターナショナル(英国)などがある。
外国人投資家が増えるにつれて、企業の方針への反対も増えつつある。最近では、大手飲料メーカー「キリンホールディングス」の取締役員人事への賛成率が、外国人投資家によって下げられた。
これは、多くの外国人投資家が、米議決権行使助言大手のISS(インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシィーズ)が設定した 「ROE(株主資本利益率)が5%以上」という基準を外れたことに反応し、反対したのである。