先月末の石油輸出国機構(OPEC)総会での減産見送りを受けて、原油価格が一段と下がった。日本経済にとって原油安がプラスであるのは間違いない。どのくらいか試算してみよう。
ご承知のように原発の停止により、鉱物性燃料(原油と液化天然ガス)の輸入への依存度は高くなっている。2013年の輸入は27.4兆円と日本の輸入全体の3分の1、名目国内総生産(GDP)の5.7%にまで達している。
天然ガスの輸入価格も大部分についてドバイ原油価格に連動して決まっている。このため、最近の15-20%の原油価格の下落が年間を通じた動きとなった場合は4.0-5.4兆円の輸入コストの節約となる。これが名目GDPの改善にほぼ直結する。
鉱物性燃料の価格下落が企業収益をどのくらい改善し、家計の購買力改善がどの程度、実際の支出増につながるのか。過去のパターンからみると家計は2年程度の間にこの購買力改善の4-5割が支出に回り、実質GDPを押し上げてきている。
内閣府の短期マクロモデルの乗数表を使って試算すると原油価格の20%下落で、2年目までに累積的なGDP押し上げ効果は0.38%となる。ドバイ原油価格、内需デフレーター、実質消費の3変数による回帰モデルでみると、20%の原油下落は消費を0.2-0.3%押し上げる。
これに企業収益の改善が設備投資を刺激する効果を上乗せすると、0.3-0.4%のGDP押し上げ効果を想定するのが妥当だ。メリルリンチとしては、2015年の成長率を1.4%から1.6%に、16年の成長率は1.2%から1.3%に引き上げた(12月5日時点)。
成長を押し上げる原油安だが、日銀が2%としているインフレ目標(消費者物価、CPI)の達成にはマイナスだ。2015年半ばにかけて1%を割り込み、10-12月期に1%台に回復するとみている。年間平均でのCPI上昇率は1.7%から1.4%に下がるとみている。インフレ目標達成のため、さらなる金融緩和が必要との論議につながるのか、来年前半の焦点のひとつになるだろう。