九州での群発地震の影響が日本経済にじわりと利いてきそうな雲行きになってきた。
九州地区での部品メーカーの供給ストップの影響で、トヨタ自動車が全国で生産停止の動きに出るなどで、立ち直りかけた生産活動に足踏み感がでるのは確実だ。過去の経験則では、震災後は円高が起こっており、実際に起これば日本経済にマイナスに働く可能性もある。
16日未明の九州地震の本震の後、地震活動は収まりを見せていない。九州、とりわけ熊本地区の工場稼動に大きな支障がでるのは間違いない。トヨタに限らず自動車メーカーは部品不足から大なり小なり他地域での生産活動が停滞しそうな状況だ。
足下の日本経済の先行きの明るい材料は、3、4月の生産活動の上向きにあった。それだけに、今回の生産停滞は先行き見通しの下方修正につながりかねない。
市場で警戒されるのが、震災後の円高だ。阪神大震災の後も、東日本大震災の後も、日本経済の減速懸念を材料にファンドなどが円高に向けたが投機的な動きを見せた。今回も同様の動きになりかねない。
円高が現実味を持つのは、先週の20カ国(G20)財務相・中央銀行総裁会議後のルー財務長官の発言もあるからだ。前日に麻生太郎財務相がルー長官との会談で「最近の為替市場にみられる一方的で偏った動きに強い懸念を有している」とし、円高懸念を認めてもらおうとしたが、ルー長官は15日のG20後の会見で「円高が進んでいるが、市場は無秩序な状態ではない」と語った。
これは日本の介入へのけん制だ。米国の了解が取れなかった以上、円高へ、実際に介入するどころか、介入を臭わせる「口先介入」すらできなくなってしまった。市場の投機筋がこれを見逃すはずがない。介入できずの環境なのだから「安心して円を買ってくる」(通貨ストラテジスト)といえる。
18日の欧米市場で円高の節目(たとえば、今年の高値の1ドル=107円63銭)を試す動きが出てきても少しもおかしくない状況だ。週内に105円突破を予想する向きもでてきている。
震災円高は起こるのか |
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地震による生産停滞と円高 投機的な「円買い」誘発
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(マーケット)
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土屋 直也:ネットメディアの視点(ニュースソクラ編集長)
日本経済新聞社でロンドンとニューヨークの特派員を経験。NY時代には2001年9月11日の同時多発テロに遭遇。日本では主にバブル後の金融システム問題を日銀クラブキャップとして担当。バブル崩壊の起点となった1991年の損失補てん問題で「損失補てん先リスト」をスクープし、新聞協会賞を受賞。2014年、日本経済新聞社を退職、ニュースソクラを創設
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