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原油波乱要因はイラクの減産破り

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【藤和彦の眼】サウジ、ロシア協調の減産、2022年末まで延長か

公開日: 2020/12/23 (ワールド, マーケット)

Reuters Reuters

藤 和彦 (経済産業研究所上席研究員)

 米WTI原油先物価格は年末に入り1バレル=40ドル台後半で推移している。

 1バレル=60ドル台だった年初の原油価格は、新型コロナウイルスのパンデミックとサウジアラビアの掟破りの生産拡大により、マイナス40ドルにまで急落するという異常事態に陥ったが、その後OPECプラス(OPEC加盟国とロシアなどの大産油国)の史上最大規模の減産により、現在の水準にまで回復している。振り返れば、アップダウンの激しい1年だった。

 現在、日量770万バレルの協調減産を実施しているOPECプラスは12月3日、「来年1月から減産規模を同720万バレルに縮小する」ことで合意した。当初の予定では「来年1月からの減産規模は日量580万バレルとなる」予定だったが、足元の原油需要が軟調であることから、サウジアラビアは「減産規模を同770万バレルに据え置く」ことを主張していた。

 しかし、「欧米で新型コロナワクチンの接種が始まる」との報道を受けて原油価格が急上昇したことから、ロシアなどがサウジアラビアの方針に反対した。このため、12月1日のOPECプラスの会合では結論を得ることができず、同3日になってようやく合意が成立するという難産だった。

 今回のOPECプラスの決定は来年1月の減産規模のみであり、来年2月以降の減産規模は未定である。「1カ月当たりの縮小量を日量50万バレル以下にする」とのルールを設定したのみであり、実際の減産規模は月毎に決定することになる。

 OPECプラスは12月17日に合同閣僚監視委員会(JMMC)を開催する予定だったが、OPEC事務局は12月14日になって「1月4日に延期となった」と発表した。ロシアの当局者は「OPECプラスは2月の原油生産量を日量50万バレル引き上げることに合意している」と述べたが、サウジアラビアが増産を支持するかどうかはいまだ不透明である。

 現時点でOPECプラスは来年4月までの協調減産で合意しているが、サウジアラビアのアブドラアジズ・エネルギー相は12月19日、ロシアのノヴァク副首相との会談後、「OPECプラスの協調減産は2022年末まで延長される可能性がある」と記者会見で明らかにした。

 ロシアのノヴァク副首相も12月21日「世界の原油市場の回復は想定より遅れ、2~3年はかかりそうだ」とした上で、「バイデン次期大統領が世界の産油国による原油市場保全の動きを頓挫させないよう望む」と述べた。バイデン氏はこれまで「ロシアは最も深刻な世界的な脅威である」と発言しており、バイデン政権発足で米ロ関係が悪化し、OPECプラスの枠組みに悪影響が及ぶことを懸念しているようだ。

 バイデン氏は、気候変動対策で大きな役割を担うことになるエネルギー省のトップにグランホルム元ミシガン州知事を起用する意向である。グランホルム氏は2003年から2011年までのミシガン州知事時代に同州のクリーンエネルギー業界の拡大に寄与した。

 世界最大の原油需要国である米国が「脱石油政策」に舵を切れば、世界の原油需要の回復が一段と困難になることは間違いない。

  世界銀行は12月17日、今後2年間の原油価格の予測を公表した。それによれば、今年の原油価格の平均が1バレル=41ドルであるのに対し、2021年は同44ドル以下、2022年は同50ドルである。原油価格は今後も長期にわたり低迷する可能性が高いことから、原油市場を下支えしてきたOPECプラスの役割は大きくなることはあって小さくなることはないだろう。

 サウジアラビアとロシアはこれまで以上に密接に意見交換を行い、原油市場の安定化に努めていく構えだ(12月22日付OILPRICE)が、ここに来て頭の痛い問題が浮上している。

 OPEC第2位の原油生産国イラクの経済危機の深刻化である。

  財政難に苦しむイラク中央銀行は12月21日、通貨デイナールの公定レートを対ドルで約20%切り下げた。1ドル=約1190デイナールだった公定レートを1ドル=1450デイナールへと一気に切り下げたが、その理由は外貨準備の枯渇である。

 今年のイラクの経済成長率はマイナス12%と予測されており、湾岸諸国の中で最悪の経済状況から市場でのデイナール売りが激化し、2003年以来維持してきた公定レートを中央銀行が守れなくなってしまったのである。
 
 これにより、すべての輸入品の価格が高騰したが、財政緊縮策として政府職員の給与も20%削減されたことから、「国民の不満は全土に広まっている」と現地メデイアは報じている。給与未払いの抗議デモで死者が発生する最中にバグダットの米国大使館にカチューシャ・ロケットが撃ち込まれるなど治安状況も極度に悪化している。
 
 イラク政府は先月から逼迫した財政状況を緩和するため、長期の原油供給契約を結ぶ代わりに支払いの前払いを要求している。今年後半からイラクは協調減産で合意した水準を超えて原油生産を行っているが、「背に腹は代えられない」として原油生産量を来年から一気に拡大してしまうのではないだろうか。

 イラクの減産破りについては、アラブ首長国連邦(UAE)などが猛反発しており、イラクの暴走を食い止めることが出来なければ、OPECプラスの枠組みが瓦解してしまう可能性がある。

 英スタンダードチャタード銀行は2021年のブラックスワンの1つとして「OPECの分裂」を挙げているが、そうなれば来年の原油価格は今年以上に乱高下するのではないだろうか。
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藤 和彦(経済産業研究所上席研究員)
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣参事官)。2016年から現職。著書に『原油暴落で変わる世界』『石油を読む』ほか多数。
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