中国景気への不安から始まった市場の乱高下が止まらない。
24日の米国株式相場はダウ30種平均で、寄り付き直後に前日終値比で1000ドル以上の下げを記録した後、優良銘柄への買戻しが入って下げ幅を100ドル程度にまで縮めた。その後は、買いが続かず400ドル安前後での取引が続き、結局、588ドル安とやや下げ幅を広げて取引を終えた。
株安をうけ、ドルが急落し、円相場も一時1ドル=116円台、ニューヨークの終値も118円台だ。原油もWTIで一時1バレル37ドル台まで下げた。連日の下げを過剰反応では済まされない不安を市場は感じている。それが終値にかけての米国株の下げが現している。
何に不安を感じているのか。中国の当局のリスクへの対応能力にあるだろう。それも単なる能力というのではなく、権力闘争が激しすぎて市場を立て直す余力が乏しいのではないかとの警戒感がある。
つまり、中国の習近平政権の安定性に対する不安が根強くあり、それが市場を揺さぶっている。本サイトでもとりあげたが、中国では主要な検索サイトで江沢民(元国家主席)という人名の検索ができなくなって、大いに話題になっている。
腐敗摘発に熱心な習政権が江沢民の周辺にまで摘発の手を伸ばし始めているとの情報は少なくない。たとえば、江沢民派に属する河北省党委書記が7月28日に解任されている。例年夏に開かれる、江沢民氏や胡錦濤氏など主席OBも交えた会議、北戴河会議は開催が見送られたとの情報も流れている。OBたちが習近平政権へ方針変更を迫ろうとしていたとの観測から、開催が見送られたという説だ。
中国中枢では権力闘争が深刻化している。習主席は、江沢民主席の長男、江錦恒氏の摘発も射程に入れているとの見方もあり、権謀術数にたけた江沢民氏が反撃しないわけがないと見られている。
中国は財政の出動余地があり、バブル崩壊による経済の落ち込みを先送りするだけの体力は残っている。だが、権力争いのなかで、「正常化」にこだわる習政権が本格的な景気対策に舵を切れないリスクは小さくない。これは7月の株価急落の際に、本サイトのコラムが指摘していた懸念で、それはいまも少しも変わっていない。
中国を巡るマネーの動きはすでにはっきりと変わっている。中国の外貨準備高がピークに比べ3000億ドル程度も減っている。経常収支が黒字の中での外貨準備の目減りは、中国からの資本の流出が大量になってきていることを示している。経済の変調を先取りした動きで、足元ではさらに加速している可能性が高い。
ただ、世界全体でみれば、米国経済が堅調であることは確かだ。その点からみれば、株価が底を割るような動きをするのはまだ先ではないか。今週は、中国当局が上海株の急落に対してどう対応するか。週後半にかけ公表される米国景気指標が底支え材料となるかが注目点だ。
中国での権力闘争の行方と米国景気の綱引きの結果が今後の相場展開を決めるだろう。
世界同時株安、中国の権力闘争に怯え |
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磐石ではない習政権の市場舵取り能力に疑心暗鬼
公開日:
(マーケット)
ポスターには習主席=Reuters
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土屋 直也:ネットメディアの視点(ニュースソクラ編集長)
日本経済新聞社でロンドンとニューヨークの特派員を経験。NY時代には2001年9月11日の同時多発テロに遭遇。日本では主にバブル後の金融システム問題を日銀クラブキャップとして担当。バブル崩壊の起点となった1991年の損失補てん問題で「損失補てん先リスト」をスクープし、新聞協会賞を受賞。2014年、日本経済新聞社を退職、ニュースソクラを創設
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