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公的年金改革に暗雲、経団連や連合が反旗

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自家運用の解禁に待った、8日に再度協議

公開日: 2016/02/06 (政治, マーケット)

Reuters Reuters

谷川 年次 (経済ジャーナリスト)

 国民の公的年金資金130兆円超を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の制度変更の行方に暗雲が立ち込めている。資金を信託銀行など金融機関経由でなく直接に株式投資に振り向ける方式(インハウス運用)に、日本経済団体連合会(経団連)や連合などが待ったをかけようとしている。

GPIFの制度改革は、厚生労働省が昨年来進めてきた。株式のインハウス運用や不動産やプライベートエクイティ投資などオルタナティブ資産への直接投資の解禁などを盛り込む方向。今国会への関連法案の提出を目指している。

インハウス運用とは、GPIFの運用チームに株式の直接保有を認めるもの。現在は、信託銀行など金融機関への外部委託の形になっている。公的資金による企業支配につながりかねないとの見方から、これまで法律でGPIFによる株式のインハウス運用を制限してきた。

今回の運用改革の多くはGPIF側からの要望を受け、厚労省が有識者からなる社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)で検討している。GPIF側は金融機関への外部委託よりも委託手数料を削減でき、運用ノウハウも蓄積できるとよい事尽くめと主張する。

だが、年金部会では、経団連や連合の委員を中心に、インハウス運用の解禁に慎重な意見が相次いでいる。年初からの株価の下落もあって、株式運用のリスクを警戒する声もある。

株式のインハウス運用が解禁されれば、今のように金融機関に指示することなく、GPIF内部の運用チームの判断で機動的に株式の売買ができるようになる。意図せざる株価操作につながりかねない。株式市場が歪められれば、自らの運用成績にも跳ね返ってくる。

反対派の委員は、株式保有で議決権が発生する点を特に問題視している。経団連の年金改革部会長の牧原晋委員は「議決権行使によって(公的資金が)企業経営への介入になるのでは」と述べた。

現在は、信託銀行など金融機関各社が議決権行使をしており、国による企業経営への影響を排除している。現在の規制もGPIFのような公的組織による株式保有は問題とする経団連などに配慮して、設けられた経緯がある。
 
2月2日の年金部会でも、運用規制の在り方について議論を継続したが、平行線で結論は出なかった。株式の自家運用ばかりか、オルタナティブ資産の直接投資の解禁についても委員から批判が集中した。経団連のみならず、大学教授などからも反対意見が相次いだ。

慶大教授の駒村康平委員は「合議制による意思決定など新しいガバナンス体制が整ってから、株式のインハウスを検討すべき」と述べた。今回の年金部会で株式のインハウス運用の解禁を見送れというものだ。

特に、議決権行使の問題に懸念を示す声が多い。帝京大教授の山口修委員は「インハウスで議決権を行使すると、外部運用会社がGPIFと異なる議決権を行使することが難しくなる」と、現在の金融機関の議決権行使を歪める可能性を指摘した。

早大教授の菊池馨実委員なども「GPIFと政府は一体と見なされる。企業経営が国の施策に影響される」と、企業経営への影響を懸念する声も上がった。

部会にはインハウス解禁推進派の委員もいる。シンクタンク・ソフィアバンク代表の藤沢久美委員は「投資したことのない人は運用を怖いものと思っている。車を運転しない人が運転について議論しているようなもの」と発言している。

東大教授の植田和男部会長代理も「懸念するようなことが起こらないようにするにはどうあるべきかを中心に議論すべき。(新しいガバナンス体制で)数年間、試運転をしてからというのは消極的で情けない」とけん制したという。先の駒村委員の発言に対して、今回の年金部会でインハウス運用の解禁を決めたいとの発言だったとみられる。

年金部会の議論をまとめてみよう。株式のインハウス運用解禁については、「一切認めるべきではない」という意見もある。これが第一案。GPIF側の求める案は「個別銘柄を選択するアクティブ運用を含め認める」で第一案とは真っ向から対立する。「最大限認めるとしても個別銘柄の選択を行わないパッシブ運用まで」という折衷案が第三案だ。

厚労省としては、折衷案の第三案で落としどころを探りたい考えだ。両方の意見の委員の顔が立てられるためだ。企業年金で現状認めているインハウス運用もこのレベルだ。年金部会委員の反発が相次いでいることもあり、最終的に解禁を断念する可能性もある。

かつて不動産投資で多額の損失を出したこともあり、オルタナティブ投資への警戒感も根強い。帝京大教授の山口修委員は「オルタナティブはリスク管理が伝統的資産より難しい」と発言するなど、オルタナティブ投資に対する懐疑的な意見が大半を占めた。

これには厚労省年金局も「(今回は)GPIFが運用対象に直接投資することの是非だ」とし、すでに認められた金融機関経由のオルタナティブ投資も禁じるような議論が飛び出したのには歯止めをかけていた。

しかし、JAM会長の宮本礼一委員が「インフラ投資でも、投資案件で事故や環境問題が起これば、GPIFに社会的責任が発生する」など今回の論点とは直接関係ない意見も次々と上がった。

年金部会の委員も必ずしも運用の専門家ではない。素人が議論をしている面もある。厚労省にとっては大学教授など権威ある有識者の意見を踏まえ、改革したというお墨付きが得たいだけなのだ。
 唯一まとまりつつあるのが、インハウス運用するにあたり、デリバティブ取引についてリスク管理を目的とした利用を解禁する点。現在でもデリバティブは、為替や債券で先物取引などが認められているが、投機的な運用での利用を避けるため、株式指数先物の利用などは認めていない。
しかし、企業年金ではリスク管理目的で株式などのデリバティブ取引が既に認められている。厚労省は株式のインハウス運用を実施する際には「日経225先物」など株式指数先物を対象に加えるなど規制緩和する方向だ。
 ただ、連合総合政策局長の平川則男委員から「投機的な運用を排除できるかを懸念する」とデリバティブ取引の規制緩和に慎重な意見が出たほか、ライフネット生命会長兼CEOの出口治明委員は「取引相手がGPIFの行動が分かるのでマーケットを歪める」との指摘があった。
一方、TIMコンサルティング取締役の原佳奈子委員が「ルールを決めてガバナンスを強化するなら、リスクヘッジ目的のデリバティブはやってもいいのでは」と厚労省の検討を支持する意見も出た。
 厚労省は8日にも年金部会を開き、運用改革の論点整理案を示す。ただ、中国株式市場の混乱や原油安、世界経済の先行き不透明感から、年初からの株価急落で野党議員が衆院予算委員会などでGPIFの運用について批判を強めつつある。
仮に年金部会の議論がまとまり、一連の運用改革が関連法案に盛り込まれても、運用低迷が長期化すれば、国会での法案審議で批判が高まるのは必至だ。
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谷川 年次(経済ジャーナリスト)
大手新聞記者などを経てフリーに。記者歴は約20年のベテラン。
企業不正や調査に関心。国会、金融庁、厚労省、年金、金融、資産運用などに詳しい。
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