「中国のブラックマンデー」
そんな呼び方が、中国の証券市場で広まっている。27日午前、4~5%台の下落率でかろうじてとどまっていた上海株式市場の総合指数は、終値を付ける時間になってマイナス8.48%に急落した。
中国のソーシャルネットワークには、「暴跌」「大跌」という単語が並んだ。市場の暴落を意味する単語だ。 この日の値下がり率は、8年ぶりの大きな幅だった。
上海の株式市場では、6月中旬にも急落があったが、中国政府が、なりふりかまわぬ安定策を次々に打ち出し、投資家には安心感が広がっていた。 中国現地メディアは「(関係の省庁による)国家代表チームが株式市場の浮揚に動いた」と評価し、上海総合指数が最近4000を回復すると、朱光耀財政次官は「中国株式市場の異常な波動(動き)は終わった」と自信満々に宣言した。
筆者の友人たちも「損失分がほぼ戻った」と話していたが、今年の2度目の暴落は、政府の介入策が十分な効果をあげないどころが、「官製相場」の危うさをあらためて内外に示したと言える。
国際通貨基金(IMF)が最近、中国政府に証券市場介入を打ち切ることを促したという噂が広がったことも、投資心理に影響を与えたようだ。金融当局は、この噂を否定するように「市場の動向に重大な関心を持っている」と宣言し、28日の市場は激しく乱高下した。
28日午前、一時187.13ポイント安の3538.43まで値を下げ、下落率は5.0%まで広がったが、昼には大きく巻き返し、一気に1%高まで浮上した。 日本の株式相場も28日、つられて一時大きく落ち込み、その後、前日並みで取り引きを終えた。
中国のアナリストたちは、27日の急落は調整過程の1つとしている。しかし、投資家の不安心理を払拭するのは難しいだろう。中国の景気の先行きへの不安感もいっそう募っている。
すでに中国経済の実態を示す数字は、明らかに減速を示している。現地の報道によれば、上半期電力使用量はわずか1.3%増加で、35年ぶりの低い数字だった。27日の工業部発表によれば、上半期電子製品輸出額は前年より0.1%減少した。
英調査会社マークイットが24日に発表した中国の景況感を示す7月の製造業購買担当者指数(PMI)の速報値は48・2だった。6月確定値は49・4だったので、また下落した。50を下回ると生産や受注の縮小を意味するが、すでに5カ月連続で50を割り込み、製造業の不振は隠せない。
「中国バブルの崩壊」は、日本にも世界にも計り知れない影響が出るが、そろそろ心の備えをしておくべき時期なのかも知れない。
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2度目の暴落がバブル崩壊を証明?
Reuters
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五味 洋治(東京新聞論説委員)
1958年生まれ。中日新聞社入社後、韓国延世大学留学。ソウル支局、中国総局勤務を経て、米ジョージタウン大学にフルブライトフェローとして在籍。著書に「父・金正日と私ー金正男独占告白」など。
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