日銀政策委員からも、いったん1%台半ばまで上昇していた消費者物価指数(CPI、生鮮品を除く)上昇率が1%割れとなりそれが長引くとの発言がでている。そんな状況に表れているように、日銀が2%としているインフレ目標を達成できるかどうか、不透明感が漂っている。鍵を握るのは、賃金の動向と考えている。
足元の賃金動向をみてみよう。ベアの適用がほぼ完了した6月以降は所定内賃金の伸びはプラスに定着し、雇用者所得(一人当たり現金給与の伸び+雇用の伸び)は前年比2.5%を上回る伸びが続いている。しかも、基本給、フルタイマーの伸びは拡大傾向にあり、所得の改善が持続可能なものに変わってきた。賃金動向はかなりしっかりしているといえる。
だが、2%のインフレ目標達成にはまだ十分とはいえない。10月31日公表の展望レポートによると、日銀は2015年度のコア物価(消費者物価の生鮮食品を除く総合、消費税の影響を除く)を前年比プラス1.7%と想定している。実現するには、2015年4-6月あたりからインフレ率が加速し始め、年後半には1.5-1.8%程度まで上昇することが必要になる。
当社のマクロモデルによると、時間あたり賃金は7-9ヶ月程度のタイムラグをもってコアコア消費者物価(食品に加えエネルギー価格も除く)に影響し、1%の時間あたり賃金の継続的な上昇がコアコア物価を0.4%程度押し上げる関係がみてとれる。
現状1%前後で推移しているインフレ率が目標の2%に近づき、安定するためには時間当たり賃金上昇率が少なくとも2.5-3.0%程度に高まる必要がある。これはなかなか簡単ではない「目標」である。おそらく2015年だけでは難しく、最終的には2016年までかかるとみられるが、景気回復、アベノミクスの成功にとって、2015年の賃上げは不可欠な第一歩と言えるだろう。