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IT時代にピケティは通用するのか

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U字か逆U字か、それが問題だ。ブルーとホワイトに単純に色分けできない時代にピケティは有効か 土谷英夫

公開日: 2015/03/02 (マーケット)

Reuters Reuters

土谷 英夫 (ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)

 右を向いても左を向いてもピケティだ。700㌻余り、6000円近い著書「21世紀の資本」が売れている。1月末のトマ・ピケティ本人の来日を機に、メディアが次々に特集を組み、国会での格差論議まで誘発した。

 教祖のご託宣をあがめるような論評が多い中、ホリエモンこと堀江貴史ライブドア元社長の「ITの視点が決定的に不足している」(エコノミス誌)という批判に膝を打った。

 ピケティの主張の核心は、不等式r>gである。r=資本(あるいは資産)の収益率、g=経済成長率。先進国の長期データを分析すると、資本の収益率がずっと成長率を上回ってきたという。労働所得の伸びは、ほぼ成長率に等しいから、資産家と一般勤労者の格差は広がる一方になる。

 ただ、ピケティが示す不平等指標のグラフはU字を描く。20世紀初頭までの高水準の格差が、1950~60年代にぐんと縮小(平等化)し、70年代を底に再び上昇に転じた。

 前世紀半ばの格差縮小は、世紀前半の2度の世界大戦と、それに伴う激しい政治経済的なショックで、資本が大きく損なわれたせい、との説明がつく。資本が回復するにつれ、資本主義の鉄則通り、格差が広がってきたという。

 半世紀ほど前に「逆U字カーブ」仮説を唱えた学者がいた。ピケティが生まれた71年に、ノーベル経済学賞を受けたサイモン・クズネッツだ。彼は工業化の初期の段階には格差が広がるが、工業化が進み経済が発展するにつれ格差は縮まる、つまり逆U字(∩)を描くと主張した。

 ピケティに従えば、クズネッツは外的ショックによる一時的現象を趨勢と読み違えたことになる。そうなのか。

 「ベスト・アンド・ブライテスト」や「覇者の驕り」などの著書で知られる米国のジャーナリスト、デイビッド・ハルバースタムが20年以上前、こんな指摘をしている。

 50~60年代の米国は、大卒でもないブルーカラー労働者が、マイホームと2台の自動車を所有、ヨットや質素な別荘を持つ者すら現れた。米国は工業に従事する中流階級を大量に生み出した最初の国だったが、「ポスト工業」時代への転換で、ブルーカラー中流階級を主体とする工業化社会は永遠でないことが判明した(「幻想の超大国」より要約)。

 格差が底を打った70年代には、インターネットやパソコンの原型も登場、マイクロ・ソフトやアップルが創業し、経済の情報化や知識化が明確になる。クズネッツの言う「工業化=平等化」から、資本主義が次のステージに移ったのだとしたら。

 工場の組み立てラインで肩を並べる労働者の生産性に、そう大差はつくまい。だが机を並べるシステムエンジニアや同じ研究所で働く科学者らの生産性は、どうだろう。

 米国の経済学者タイラー・コーエンの近著「大格差」(原題Average Is Over=平均の終焉)は、社会が、ITなどの新テクノジーを使いこなし補完する能力を持つ少数の富裕層と、それ以外に二極分化すると予想している。

 筆者も、さらなる格差拡大は問題だと思う。だが、不平等の進行を食い止めるには、原因の把握が前提になる。ピケティは、ただ「資本主義だから」と言っているにすぎない。書名に「21世紀の」とつけた以上、堀江氏の「ITの視点の決定的な不足」批判は、ピケティの急所を衝いている。

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土谷 英夫(ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1948年和歌山市生まれ。上智大学経済学部卒業。日本経済新聞社で編集委員、論説委員、論説副主幹、コラムニストなどを歴任。
著書に『1971年 市場化とネット化の紀元』(2014年/NTT出版)
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