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米国のTikTok,WeChat排除 対中デジタル闘争へギアアップ

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【けいざい温故知新】デジタルレーニン主義の封じ込めなのか

公開日: 2020/08/17 (未分類)

オーウェルの「1984」(英語版)表紙 オーウェルの「1984」(英語版)表紙

 トランプ米大統領は14日、中国バイトダンス社に動画投稿アプリTikTokの米国事業を90日以内に売却するよう命令した。国家安全保障上の懸念が理由で、売らないと使用禁止になる。米中対立は通商摩擦の域を超えた。米国の狙いは、ドイツの中国専門家が「デジタルレーニン主義」と呼ぶ習近平政権の統治手法の”封じ込め”にありそうだ。

 米政府は「国防権限法」に基づき通信機器のファーウェイ(華為技術)をはじめ監視カメラメーカーなど中国5社からの政府調達を止めた。さらに5社の製品・サービスを使用する企業からの政府調達も禁じる。こうしたハードの規制に加え、ソフト(アプリ)にも規制をかけたことで、米中のサイバー空間をめぐる覇権争いに火が付きそうだ。

 中国側は、TikTokやWeChat排除の撤回を求めるだろうが、分が悪い。なぜなら「防火長城(グレート・ファイアウォール)」と呼ばれるネット検閲システムで、フェイスブック、グーグル検索、Gメール、ツイッター、YouTube、LINEなど種々の外国製アプリの中国内での使用をブロックしているからだ。国際NGO「フリーダムハウス」のネットの自由度ランキングで中国は、調査対象60数か国中の最下位。

 「入」は規制し「出」は自由では、あまりに身勝手な言い分になる。

 ダンス動画投稿などで若者に人気のTikTok排除には、ユーザーのブーイングも聞こえてくる。バイトダンスはTikTokのトップにディズニーの元幹部を迎え、中国色を薄める努力をしてきたが、水泡に帰した。

 「デジタルレーニン主義」は、ドイツのメルカトル中国研究所のセバスチャン・ハイルマン所長が名付けた。習近平氏への権力集中・独裁化(国家主席の任期撤廃など)と、デジタル技術をフル活用した監視国家化が並走する習政権の統治手法を、的確に言い当てている。

 習氏は就任間もない2013年8月の全国宣伝思想工作会議の講話で「インターネットを放置すれば亡国亡党につながる。ネットは世論闘争の主戦場になった」「西側の反中勢力がネットを通じ”民主的な普遍的価値”を流布させ、共産党政権の転覆を目指している」と語ったとされる。

 自ら「中央インターネット安全・情報小組」の組長も務めた。

 17年6月施行の「インターネット安全法」(網絡安全法)は、ネット実名制(匿名使用の禁止)や、ネット事業者に違法・不適切なコンテンツの削除・報告などで規制当局への協力を義務付けている。同法施行早々、テンセントのWeChat(微信)、新波の微博(ウェイボ)、百度(バイドゥ)の掲示板が、不適切コンテンツを見逃したことで罰金を科せられた。

 政府に首根っこをつかまれたネット業者は、検閲の下請けを負わさる。武漢で新型肺炎の流行を内部告発し、公安に訓戒処分され、自身も新型肺炎で死去した李文亮医師はWeChatのユーザーだった。インターネット安全法と前後して施行された「国家情報法」は、いかなる組織、個人も、国家の情報活動に協力し、国家の情報活動の秘密を守らねばならない、と規定する。

 中国の企業である限り、米政府がTikTokを目こぼしする理由がなかったといえよう。

 中国政府が進める社会信用システムは、各個人を信用スコアで格付けする。低スコアだと航空券も買えない。経済的な信用に限らず、体制批判などがばれれば、スコアが下がる。

 英国の技術専門メディアによれば、世界の主要都市で、公共の監視カメラ設置数が多い上位20市のうち、1位の北京を筆頭に18市が中国の都市だった。監視カメラとAI(人工知能)を結び顔認証で犯罪者や不審者を割り出す「天網」システムの実装も進む。思想犯も例外ではない。

 「デジタルレーニン主義」の行きつく先は、英作家ジョージ・オーウェルが、70年ほど前の小説「1984年」で描いたような監視国家だろう。「ビッグブラザー」が支配するその国では、各戸にテレスクリーンと呼ぶ装置が置かれ、「党」の宣伝を流す一方、住民の一挙手一投足を監視している。

 中国の近未来像がだぶる。米国は、中国の「デジタルレーニン主義」を封じ込める腹をくくったのかもしれない。先月23日のポンペオ国務長官の演説は「習近平総書記は破綻した全体主義イデオロギーの真の崇拝者」「自由世界が共産主義中国を変えなければ、中国がわれわれを変えるだろう」と手厳しい表現が並んだ。

 演説の場所をカリフォルニアのリチャード・ニクソン大統領図書館・博物館を選んだのも示唆的だ。

 ポンペオ演説は「われわれはフランケンシュタインを造ってしまったかもしれない」というニクソンの言葉も紹介した。1972年に初の現職大統領として訪中したニクソンは、米中国交の突破口を開き、中国への関与政策の創始者とされる。その人が、最晩年の90年代初め、保守派コラムニストのウィリアム・サファイア氏に漏らしたという。

 米中対立のギアが上がったことは間違いない。

土谷 英夫:けいざい温故知新 (ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)

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土谷 英夫:けいざい温故知新(ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1948年和歌山市生まれ。上智大学経済学部卒業。日本経済新聞社で編集委員、論説委員、論説副主幹、コラムニストなどを歴任。
著書に『1971年 市場化とネット化の紀元』(2014年/NTT出版)
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