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コロナ下で乳幼児にRSウイルスが大流行

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【医学者の眼】一部の小児科病棟が満杯に

公開日: 2021/07/12 (未分類)

【医学者の眼】一部の小児科病棟が満杯に

 東京では4回目の新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言となり、まだ今後の増加のピークがどこまで行くのかは見えません。

 一方、昨年来インフルエンザをはじめとするその他の感染症は、これまでにないほど減少し、予防対策の効果が現れていると見られていました。しかし、この春以降RSウイルスという、主として乳幼児がかかるウイルス感染症が急増していることが報告されています。

 あまり聞きなれないかと思いますので簡単に説明します。

 RSウイルスというのは、Respiratory Syncytial virusの略ですが、分かり易い日本語がないのでRSVとします。コロナウイルスと同様のRNAウイルスで、通常は秋から冬にかけて流行し、鼻汁や発熱などの風邪様症状を呈しますが、重症化し、気管支炎や肺炎を引き起こすこともあります。特に生後6月未満では重症化例が多いようです。家族などの大人にも感染することがありますが、多くは風邪程度で済みます。

 乳幼児では3歳くらいまでに1度は罹るとされているほど、実は昔からある一般的な感染症です。多くの乳児感染症に対しては母乳中の母親の抗体が有効ですが、RSVはこれが効かないとされています。

 飛沫や接触感染で広がりますが、消毒には次亜塩素酸が有効です。

 診断はPCR検査か抗原検査で行いますが、必ずしも多くのケースで行われてはいません。

 図は東京のRSV感染症の経時変化を比べたものですが、今年が時期的及び数の上でいかに異常かが分かるかと思います。全国的にも同様です。

 今年これだけ急に増加した原因については、まだよく分かっていませんが、昨年コロナ対策で衛生処置が徹底しRSV感染も抑えられたため、乳幼児に抗体ができず、今年になってその分も含めて一気に広まったのではないかという説がありますが、他にも幼稚園や保育園等が今年になって通園が緩和されるなど、いくつかの原因が考えられると思います。

 RSVに対する治療法は特になく、対症療法や酸素投与・輸液などの支持療法が主になりますが、肺炎や気管支炎などの重症例では生命にかかわるため、2%程度で入院治療を要することもあります。コロナ下とはいえ、早期の診断と治療が望まれますが、今回の流行において、地域によっては小児科病棟がRSV感染患者で多くを占められ、入院できないという事態も生じているようです。

 RSV感染症の予防にはワクチンが考えられますが、これがまだうまくいっていません。今回の新型コロナワクチンでも議論のあった、抗体はできてもそれがかえって感染を助長し悪化させてしまうことがあるという(抗体依存性感染増強)のは、まさにこのRSVワクチンの開発過程で起こりました。この失敗を克服すべく新たなワクチンの候補が開発されつつあるようなので、期待したいと思います。

 RSVは世界の乳幼児にとっての脅威です。今年の急激な流行は、我が国だけでなく米国や欧州などの一部でも報告されており、世界的な現象です。

 新型コロナばかりに気をとられることなく、特に乳幼児については、全般に十分な注意が必要です。

 人々の生活様式の変化とともに、感染症対策はその広がりを含め、新たな時代を迎えていると思われます。

 今回のコロナパンデミックを教訓に、様々な感染症に適切に対応できる医療体制の構築を期待したいと思います。

中島 正治 (医師、医学博士、元厚労省局長)

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中島 正治(医師、医学博士、元厚労省局長)
1951年生。76年東大医学部卒。外科診療、医用工学研究を経て、86年厚生省入省。医政局医事課長、大臣官房審議官(医政局、保険局)、健康局長で06年退官。同年、社会保険診療報酬支払基金理事、12年3月まで同特別医療顧問。診療、研究ばかりか行政の経験がある医師はめずらしい。
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