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バイデノミクス始動 1.9兆ドル支出、5年で10兆ドルの歳出増も

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【経済着眼】全国民1400ドル直接給付や最低賃金引き上げに疑問

公開日: 2021/01/29 (ワールド, マーケット)

【経済着眼】全国民1400ドル直接給付や最低賃金引き上げに疑問

 バイデン大統領が誕生して、いよいよ「バイデノミクス」がスタートする。

 まず、コロナ対策として1.9兆ドル(約200兆円)に及ぶ大規模経済政策を発動する。内容的には、国民一人あたり1,400ドルの小切手を送付、失業手当を増額する、学校・州政府などに対する支援措置を講じる、などが含まれている。

 財務長官に就任したジャネット・イエレン前FRB議長も「金利が著しく低いので、いまは政府が大胆に行動すべき(act big)である。返済プランを考えるのは景気が回復、雇用が増加してからで十分である」とバイデン大統領の経済政策を支援した。

 それにしても巨額のコロナ対策には、果たして財政収支の悪化や国債増発に伴う長期金利の上昇など、副作用も大きいのではないか、と心配になる。この後に気候変動対策としてもインフラ整備や米国製造業の競争力向上など、今後5年間で10兆ドルといわれる歳出増も控えている。

 また事実上、FRBが財政ファイナンスの役割を果たしていくわけだが、果たしてインフレ懸念や副作用としての株式バブルの結末がどうなるのか心配は尽きない。

 取り敢えず、今回の1.9兆ドルのコロナ対策に触れてみたい。この大型経済政策は需要を喚起して雇用の減少や成長率のかさ上げに効果があるのであろうか。まず給付金の経済効果は僅少であろう。

 権威ある全米経済研究所(NBER)が示した分析によると、昨年3月に行われた国民一人あたり1,200ドルの給付金の使い道を見ると、債務の返済や貯蓄に回す人が多くて、実際に消費に回ったのは平均で300ドルに過ぎなかった。

 長期的な経済見通しが不透明で自分の雇用もどうなるか不安で仕方がないときに人々は消費にお金を回さない、というのは当然だ。

 消費理論でいう「恒常(こうじょう)所得仮説」でも、人々の消費水準は、(給付金のような)一時的な所得ではなく、長期的にみて自分がどれだけの安定的な所得を得る(恒常所得)のか、との見通しに基づく、としている。先行きの不安で既往債務の返済やいざという時の貯金を殖やすのは当然であろう。

 今回の米国民一人あたり1,400ドルの小切手を配る必要予算額は9,000億ドル(約93兆円)と年間の国防費すら上回る水準にある。来年11月に中間選挙を控えていることもあって、ポピュリズム的な政策に打って出た事情があるのは言うまでもない。

 人道的な見地や格差が広がる中での社会政策としては意味がある政策である。ただ、上記のような経済効果に照らせば、本来、所得補償などの経済支援は政府が課したロックダウンなどで苦しむ中小企業、個人に限定すべきである。

 本論からやや離れるが、その他の政策のうち、問題含みなのが最低賃金の引き上げだ。最低賃金を15ドル/時間に倍増させるというプランも生産性の向上を大幅に上回るため、中小企業を中心に企業収益の悪化をもたらしかねない。

 短期的にはともかく、消費の増加を企業収益の悪化が打ち消してトータルの景気刺激効果は見いだせないであろう。

 米国の財政状況は債務/GDP比が260%のわが国ほどではないが、今後の経済政策も含めて同130%程度の見通しと極めて厳しい。バイデン政権が思い描く巨額の財政支出は、富裕層、大企業への増税が実施されるまでは米国債発行を通じて行われる。

 すでに米国10年債の利回りは昨年9月から0.3%上昇して1%を超えたほか、米国債のGDP比は約100%と20年で3倍に増えた。1930年代の世界大恐慌時の2倍で、前代未聞の軍事費を計上し続けた第二次大戦末期の水準とほぼ顔を合わせている。

 最近の連邦政府における大幅な財政赤字とFRBによる大規模なファイナンスの組み合わせは、財政支出の規模には何ら制限がかからないように写る。実際に昨年だけで4兆ドル、前年比25%の大幅な債務増加に直面したにもかかわらず、国債費は8%も減少している。

 しかし、市場では財政・金融政策の超緩和的なポリシーミックスによって、株価バブルの崩壊を予想する向きも増えている。次の金融危機に備える必要があるとの声が高まってきた。

 また債券市況の特徴として、買われるときはじり高だが、売られるときには一気に売られるということも注意しなければならない。連邦政府の債務累増のマグニチュードが大きいだけにある日突然の暴落もあり得る。

 頭が固すぎるようだが、長期的にみれば財政政策は、歳出のコントロールに主眼を置くべきだと思う。なぜなら歳出が毎年毎年、大幅に増えていくような現状はかえって経済成長にとって阻害要因となりかねないからだ。

 逆に歳出を抑制的にすれば、将来の増税懸念を後退させる。増税懸念の後退は、個人の恒常所得を増加させて消費も増えることにより経済成長を促進する。

 そのよい例がクリントン大統領の時代に見られる。クリントン大統領は、ゴールドマンザックスのトップであったルービン財務長官のアドバイスに沿って長期金利の低下を旗印に、歳出を抑制すると同時に富裕層の所得税引き上げなどを行い、1998年には連邦財政は1960年以来初となる均衡を達成した。

 米国景気は、長期金利の低下でクラウドアウトを是正して民間の資金調達も増大、この結果、民間投資主導による好況を享受した。

 いまはコロナ対策としてロックダウンに苦しむ中小企業、個人に対する支援で歳出を増やしていくのは当然である(もちろん歳出内容のすべてを是認するわけではない)。しかし、米国では、効果的なワクチンが行き渡り、感染の収束が見えてくれば直ちに財政、金融政策とも正常化すべきであろう。

俵 一郎 (国際金融専門家)

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