2022年の冬季五輪が北京で開かれることが31日、クアラルンプールで開かれた国際オリンピック委員会で決まった。
習近平国家主席はかねてから、「冬季五輪の開催で、中国の3億人余りが氷上、雪上スポーツに参加するようになり、国際五輪運動の発展に大きく貢献する」と、その効果を国内外にアピールしていただけに、開催決定を喜んでいることだろう。
中国メディアもトップニュースで伝えるはしゃぎようだ。
中国が冬季五輪に参加したのは、1980年のリレハンメル大会のことだった。
92年のアルベールビル大会で初めてメダルを獲得。昨年2月のソチ大会では金3を含むメダル9個を手にし、メダル獲得数で12位という、ウィンタースポーツ大国に成長している。
誘致によるプラスの効果は、雇用の創出だ。
王安順北京市長は、今回の決定を受けて「旅行、文化、体育関係で60万人の雇用を生み出す」とアピールした。大会によって、中国国内に12億ドル(約1500億円)の収入をもたらすとの試算もある。
最近中国経済は減速気味で、証券市場も値下がりしていた。それだけに、冬季五輪の開催決定は明るい材料になるのは間違いない。中国は国内に55の少数民族を抱えており、国民の団結力を高める効果も期待できそうだ。
20年に夏季五輪を開く東京は、メーン会場をめぐって迷走を続けているが、北京にも課題は少なくない。
最初は、空気汚染対策だ。
中国の大都市は大気汚染が深刻化しており、外国メディアは、「選手の安全のためにも、北京は五輪候補地から外されるべきだ」と、皮肉っぽく指摘していた。
北京の五輪招致委員会も、この批判を十分意識していたようで、さっそく、「大気汚染の原因となる微小粒子状物質PM2.5を22年までに12年比で45%程度削減する」との目標を打ち出した。
あわせて、高濃度の排気ガスを出す車両を100万台以上スクラップし、クリーンエネルギー型の都市に切り替えると約束している。
ただ、北京五輪の時には一時的に空気がきれいになったものの、その後はさらに悪化した経緯がある。今回の対策も、どれだけ効果あるか未知数だ。
もう一つの課題は、北京から五輪会場となる張家口までの交通だ。五輪関係施設は、北京五輪時のものを流用するが、会場までのアクセスは鉄道で3時間15分かかり、かなり不便だ。
19年までに高速鉄道を完成させ、50分程度に縮める計画だという。北京と会場をつなぐ高速道路も19年までに完成させる予定。相当な突貫工事が必要となり、手抜き工事の心配もある。
五輪を成功させるため、南シナ海や尖閣諸島で見せている強硬な対外姿勢は収まるかもしれない。しかし、国内の締め付けは、むしろ強まる懸念もありそうだ。
減速経済に恵みの雨か |
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2022年冬季五輪は北京、収まるか対外強硬
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五味 洋治(東京新聞論説委員)
1958年生まれ。中日新聞社入社後、韓国延世大学留学。ソウル支局、中国総局勤務を経て、米ジョージタウン大学にフルブライトフェローとして在籍。著書に「父・金正日と私ー金正男独占告白」など。
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