持論の反原発を封印して入閣した河野太郎国務相が動き始めた。11日から3日間、政府のムダを削る事業仕分けを公開で行い、原発やオリンピックの関連予算にもメスを入れるという。「ブレーキがついていない」と自称する河野の、突破力が試される。
「今までは外からいわば遠吠えをしていたのが、今度は中に入っていろいろやれる」「(内閣は)連帯責任ですから…与党の議員と大臣は少し立場が変わる」。先週、日本記者クラブでの記者会見で、一部にわだかまる入閣批判に、こう説明した。
国家公安委員長、防災担当、行政改革担当、規制改革担当、消費者・食品安全担当など、職責は多岐にわたるが、まず行革で打って出るようだ。
事業仕分けといえば、民主党政権の専売特許と思いがちだが、そうではない。NPOの政策シンクタンク「構想日本」(加藤秀樹代表)が地方自治体相手に始めた仕分けを、国政に持ち込んだのは河野の発案で、自民党の「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム」が最初に手がけた。7年前、福田康夫政権の時だ。民主党にも、河野らがノウハウを手ほどきした。
元祖仕分け人の河野が今回、力を入れるのは原子力エネルギー関連予算などだ。JAEA(日本原子力研究開発機構)の経費や、原発立地自治体への交付金をまな板に乗せる。また「オリンピックと言えば何でも通ると思っている」(河野)五輪便乗予算も対象だ。
3日間の仕分けは公開で、仕事帰りの人も立ち寄れるよう夜9時まで行う。18歳選挙権も意識して高校生らの傍聴も呼びかけている。仕分けの様子は、ニコニコ動画でネット生中継される。
事業仕分けの手本は、1990年代のカナダ政府の「プログラム・レビュー」。歳入の36%が国債の利払いに消える財政危機下で登板した、クレティエン政権が手がけた歳出削減の手法である。
各歳出項目を①公益性はあるか②連邦政府が提供すべきか③地方政府にまかせられないか④民間部門にまかせられないか⑤効率を上げられないか⑥財政難でも賄うべきかの「6つのテスト」で、ふるいにかけた。連邦公務員の14%削減や増税も合わせ、カナダは数年で財政の単年度黒字化を果たしている。
国と地方の借金が1000兆円を超えた日本で、政治はなお、緊縮よりもバラマキに流れがちに見える。蛮勇が実績につながるか、河野の力量が問われる。
「ブレーキない」河野太郎の突破力は? |
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【けいざい温故知新】11日から仕分け、五輪や原発の予算削減めざす
公開日:
(政治)
河野行革相=Reuters
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土谷 英夫(ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1948年和歌山市生まれ。上智大学経済学部卒業。日本経済新聞社で編集委員、論説委員、論説副主幹、コラムニストなどを歴任。
著書に『1971年 市場化とネット化の紀元』(2014年/NTT出版) |
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