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農林、金融庁、内閣府、文科省と続々ファンド設立

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【アベノミクスで膨張する官製ファンド㊥】革新機構をモデルに設置法をまねる

公開日: 2015/08/26 (政治)

農林水産省=共同通信社 農林水産省=共同通信社

会澤 正視 (ジャーナリスト)


 産業革新機構の設置法は各省にとって「よく書けている」と評判だった。それに真っ先に目をつけたのが農林水産省だった。2010年まで内閣参事官として出向していた農水省の大内秀彦氏(現徳島大教授)は、麻生内閣で石破茂農水相が「儲かる農業、付加価値をあげる農業を考えろ」と省内に檄を飛ばしたのを受けて、針原寿朗総括審議官(現農林水産審議官)らとともに「ファンドという仕組みを活用したら良いのではないか」と考えた。
 「産業革新機構をモデルにして制度設計し、閣議決定に持ち込みました」と大内氏。民間企業からの出資、第三者委員会の設置、社外取締役の充実など外形は非常に共通している。「唯一違うのは産業革新機構にはサブファンドがないこと。そこが欠点と思ったのでいくつものサブファンドを傘下に持てるようにしています」。そう大内氏は振り返る。
 こうして農林漁業成長産業支援機構が13年2月、会長にドリームインキュベータの堀紘一会長を招いて、東京・大手町のファーストスクエア20階に産声をあげた。役員には農水省の天下りはいないが、スタート時の事務局30人のうち6人が農水、財務、法務各省からの出向者で構成され、それとは別に〝公募〟に応募した農水省OB2人が採用されている。大臣官房が関与した露骨な天下りこそ影を潜めたが、現役出向や公募による採用という形を変えた「天下り」が行われているといえよう。
 農林漁業成長産業支援機構は今年6月までにメガバンクや地銀などとともに52のサブファンドを創設し、合計374億円を出資した(52ファンドの総額は748億円)。各サブファンドからの出資先は、サラダ用のカット野菜の加工・販売業「フレッシュベジ加工」(長野市)、深浦マグロの販路拡大をめざす「あおもり海山」(青森県深浦町)、北海道産そば粉加工販売の「北海道そば製粉」(苫小牧市)など〝ご当地企業〟がずらりと並ぶ。
 気になるのはこうした投資をどう回収するかだが、同支援機構は「株式公開という選択肢は排除していない」(担当幹部)としつつも、実現は難しそう。結局は、他の大手や地場企業など第三者への株式売却か、利益剰余金をため込んでもらった上で自社株買いをして引き取ってもらうかぐらいしか現実的な選択肢はなさそうだ。
 同じような、心許ないイグジット策を考えているのが、金融庁・内閣府の所管の地域経済活性化支援機構だ。日本航空の再上場に伴って巨額のキャピタルゲインを得たことも手伝って延命が決まった官製ファンドで、剰余金を再投資しようと7月までに19のファンドを地銀系ベンチャーキャピタルなどと創設、ファンドの組成総額は528億円にものぼる。投資先は、青森県産リンゴのロールケーキへの販路拡大やリンゴを使ったレトルカレー、知床地区の宿泊施設のラウンジやテラスの改修など、農林漁業成長産業支援機構と似通った投資先であるうえ、なかなかリターンが見込みにくいものばかりだ。金融庁から出向している担当官は「上場は難しいので第三者に買い取ってもらうか、自社株買いくらいしかイグジットは考えにくい」と言う。地銀再編に豪腕を振るう森信親長官の足元で、ひょっとしたら不良債権になりかねないバラマキが行われているのだ。
 同工異曲の官製ファンドの乱立はまだまだ続く。東大には2004年に大学発ベンチャーなどに投資する東大エッジキャピタルが設立されているが、文部科学省は14年4月、アベノミクスの成長戦略実現を大義名分にして、国立大学がベンチャーキャピタルに出資できるよう規制を緩和した。
 1000億円の予算を背景に各国立大学にVC設立を促し、同年12月の京大と大阪大を始め、今年2月には東北大にもベンチャーキャピタルができた。東大にも417億円のファンド規模のVCをつくるもくろみだったが、先行する東大エッジキャピタルとの棲み分けや調整がまだできておらず、発足はしていない。
 東大エッジキャピタルの幹部は「各大学にVCをつくらせれば、自分のところの研究成果などにお金を振り向けたがるようになる。利益相反を生じさせやすい」と文科省の動きを冷ややかに見る。何も無理に新設しなくても「すでにある東大エッジキャピタルを活用すればいいのではないか」と同幹部。
 各省が縦割りで同じような官製ファンドをつくり、ベンチャー企業や中堅・中小企業向けの資金はだぶつき気味だ。「上場ゴール」と言われる新興企業の未公開株の値付け(バリュエーション)高騰の背景には、〝官〟のマネーが流入し、資金需給を崩していることも背景にある。

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