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「一番近い隣国、韓国との関係が今のままでいいわけがない」

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【元木昌彦のメディアを考える旅】河野洋平元自民党総裁に聞く③

公開日: 2020/12/21 (政治)

撮影・桐島瞬 撮影・桐島瞬

元木 昌彦 (ジャーナリスト)

 自民党を離党して新自由クラブを立ち上げたが、志半ばにして10年後に復党した河野さんは、各派閥から声をかけられる。

 静観しているうちに宮澤喜一さんから誘われ宏池会に入る。宮澤氏を支えて宮澤総理の実現に貢献し、自身も官房長官として支える。そのとき歴史に残る「河野談話」を発表するのだ。 (聞き手は元木昌彦)


元木 自民党に戻った当初は大変だったでしょう。

河野 帰ったら帰ったで、今度は何派に戻るかと大変な騒ぎになってね。当然、元いた中曽根派に戻れといわれるわけですが、僕は中曽根派には絶対戻りたくなかった。

復党直後無派閥でいたら、伊東正義(自民党政調会長・当時)さんが、いやしくも元党首が戻って何派だなんてウロウロしているのもおかしいから、じっとしてろというんだ。

そうしたら宮澤さんが、「僕と一緒にやらないか」と誘ってくれた。それ以前から宮澤さんには親近感を持っていた。それで宏池会に入ったんだ。

宏池会は加藤(紘一)君がプリンスでいて、僕は派閥の長を狙っているわけじゃないから「加藤君でいいよ」というんだけど、彼はやっぱりソワソワしちゃうんだな(笑)。そりゃ僕のほうが年は上だし当選回数も上だからね。

元木 加藤さんにとっては刺激的だったでしょうね。河野さんが宏池会に入ったしばらく後に、加藤さんと赤坂の焼肉屋で呑んだことがありましたが、河野さんのことを大変意識していましたね。

河野 相当宏池会の秩序を乱したね(笑)。だけど途中から宮澤さん自身も、「加藤君はちょっと信用できない」といい出したんだ。私は宮澤さんからの信用があったようだ。

元木 河野さんと宮澤さんというのは、外から見ていてもウマが合うような感じがしました。

河野 そうでした。だけど、同じようなのがいたから宮澤派は強くならなかった。弱いところはどこまでいっても弱いままだったから。ちょっとタイプが違うのが組んだほうがよかったのかもしれない。

宮澤さんが可愛がってくれたから、僕は総裁になるなんて気は全然なかったし、宮澤さんをずっと支えるつもりでいた。

宮澤さんという人は、卓越した国際感覚と歴史観、政界随一といわれた教養を兼ね備えていた。それに護憲保守として筋を通していたから、ぜひ総理になってもらいたいと思っていました。

元木 安倍晋太郎、竹下登、宮澤さんがポスト中曽根の有力候補といわれ、後継を争っていた時、河野さんからの依頼で、雑誌の記者仲間を集めて宮澤さんの話を聞く会をやったことを覚えています。でも、宮澤さんは酒を呑むとちょっとクセが悪い(笑)というので、河野さんが話しをされました。

河野 そんなことがあったかな。

元木 1987年10月に「中曽根裁定」で竹下登さんが総裁に指名されました。その後、消費税導入やリクルート事件が起きて、竹下さんが辞任。海部俊樹政権の後の1991年に宮澤政権が誕生します。

河野さんは加藤さんの次に官房長官に任命されますが、1993年に「河野談話」(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taisen/kono.html)をお出しになったときの話を聞かせてください。

河野 1992年1月に宮澤さんが韓国を訪問するんです。加藤君が官房長官のときでしたね。

直前に慰安婦問題が韓国で大きな問題になり、マスコミでも大きく報道されたこともあって、当時の盧泰愚大統領から、「真相究明の努力と、日本のしかるべき措置を期待する」といわれたため、政府としても調査すると約束したことが契機になった。

加藤君が宮澤さんから指示を受けて調査し、あらゆる省庁に対して関連資料の有無を照会した。様々な資料が出てきたけど、敗戦の混乱期だから多くの資料が失われていて、難しかったと聞いている。

加藤君が「加藤談話」というものを出したんだけど、それはあくまでも中間報告だったから、それに対して韓国側からはいい反応がなかった。

次の宮澤内閣の改造人事で、僕が官房長官に任命され、加藤君から引き継いで慰安婦たちの聞き取り調査などをやるわけです。韓国の大統領は金泳三さんでしたね。

元木 韓国側のスタンスはどうだったのですか。

河野 韓国政府は最初から、新たに賠償などを提起するのではなく、女性たちへの支援は韓国政府が責任を持ってやるから、日本は事実関係の徹底的な調査と、女性たちの名誉回復に取り組んでほしい、日韓基本条約に関わるような案件にはしないというものだった。

 談話を出したのは8月4日でした。野党の内閣不信任案に小沢一郎氏らが同調したため不信任案が可決されてしまった。

 だけど7月に東京でサミットを行うため、宮澤さんがホストを務めるしかないので、総辞職ではなく衆議院を解散することになった。

 宮澤総理とも相談して、指示を得て出すことになったんです。

 宮澤さんという政治家を私が尊敬してきたのは、宮澤さんが恥を知る政治家だからです。過去の恥ずべき行いについて、人間として恥ずかしいと感じ、それを政治に反映させていくことのできる政治家でした。

 この談話は、私の名前がついてはいるけど、宮澤内閣だからこそ出せたと思う。

 談話は基本的に、韓国側でも是認され、評価を受けました。これまでも慰安婦問題について様々な問題が惹起されたときでも、河野談話を踏襲するという点に立ち戻って収拾がはかられてきました。

元木 しかし、いまだに談話については、官憲が強制連行した明確な証拠はないという批判などがあります。

河野 日本政府の調査に対して、当事者の女性たちが辛い体験を話してくれたのは、こちらの姿勢への信頼関係があったからで、証拠がないなどという批判は、その信頼を裏切るものです。

元木 2012年11月4日の米ニュージャージー州地元紙「スターレッジャー」に、桜井よしこ氏らの「歴史事実委員会」名で「女性がその意思に反して日本軍に売春を強要されていたとする歴史的文書は発見されていない」という意見広告が掲載されました。

それに安倍首相と4人の閣僚が、賛同者として名前を連ねていることが判明し、アメリカでは、日本は人道問題をどう考えているんだという批判が巻き起こり、安倍首相があわてて謝りに行ったこともありました。

河野 強制連行については、インドネシアでオランダ人女性に対する事例なんかがあって、一部にそのようなあるまじきことがあったのは事実であり、文書的な資料も残っている。

 談話の中に、「慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意志に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したことがあったことも明らかになった」とある通りです。

元木 談話を出した後、親しくしていた金大中さん(後に韓国大統領)から何かいわれましたか。

河野 それはなかった。でも彼は以前から、「もっとも大事なことは女性たちの名誉が回復されることだ」といっていました。

元木 現在日韓関係は、慰安婦問題に加えて、元徴用工の人たちが日本企業に賠償を請求している問題でも対立を深めています。

河野 一番近い隣国との関係が今のままでいいわけはない。僕は、韓国側も日本側のこれまでの努力を事実に即してきちんと見るべきだと思うが、こと戦争と植民地支配の問題では、日本側がまず謙虚な姿勢で臨んでいくことが重要であることは、論をまたない。

元木 河野さんは日本外交最大の課題として、確固たる安全保障の枠組みを北東アジア地域で作り出すことだと仰っていますね。

 そのためには中国や韓国との関係が重要だと思いますが、菅義偉首相は最初の外遊先としてインドネシアとベトナムへ行きました。

河野 菅さんは思い切って中国と韓国へ行けばよかったんだ。これからは北東アジア、中でも中国との関係が日本にとっては一層大事になる。

 そのためには韓国との関係をよくして、日韓が一緒になって中国に対してものをいうようにしなければいけないのに、韓国も中国も素通りでは。(④へ続く)
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元木 昌彦(ジャーナリスト)
早大商卒、1970年講談社。90年FRIDAY編集長、92-97年週刊現代編集長として創刊以来最大部数に。『野垂れ死に ある講談社・雑誌編集者の回想』(2020年4月現代書館)など多数。
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