• tw
  • mail

カテゴリー

 ニュースカテゴリー

  • TOP
  • 独自記事
  • コロナ
  • 統一教会
  • 政治
  • ワールド
  • マーケット
  • ビジネス
  • IT/メディア
  • ソサエティ
  • 気象/科学
  • スポーツ/芸術
  • ニュース一覧

自民内で癒着議員と癒着なし議員で対立へ

あとで読む

【内田樹氏に聞く】野党は癒着議員を切って自民に迫る気概みせろ

公開日: 2022/07/25 (政治, 統一教会)

撮影角田 撮影角田

 安倍元首相銃撃事件について、内田樹氏に聞いた。内田氏は「犯人に同情する余地はない」としながらも、統一教会が深く権力に食い込み、様々な圧力を加えて来たことを問題視すると同時に、統一教会に関与した議員がいる野党の弱腰などを痛烈に批判し、今後の裁判や政局を予想した。(聞き手は角田裕育)

― 安倍首相と統一教会の関係がクローズアップされていますが、内田さんは旧統一教会とのかかわりはありましたか?

内田 統一教会と勝共連合の名を知ったのは1970年代はじめです。でも、名前だけで実体は知りませんでした。学部の頃は新左翼の時代ですから、原理研の活動する余地なんかありませんでした。

 院生になった頃にはじめて「原理」という名前を学生たちの口から聞くようになりました。勝共連合が60~70年代の全世界的なベトナム反戦運動や、学生運動・市民運動・労働運動、革新自治体の広がりといった「左傾」に対抗するために日韓の極右が連携して作った組織で、岸信介、笹川良一、児玉誉士夫らが絡んでいるということもその時に知ったと思います。

- 内田さんと統一教会の接点は?

内田 一度だけあります。75年に大学を卒業する時、統一教会から「3週間無料アメリカ旅行ご招待」という案内が来ました。卒業生全員にばらまいたわけですから「やたら金のある組織だな」と驚きました。

 たぶん、五人でも十人でも、統一教会に恩義を感じる人間を作っておいて、彼らがやがて中央省庁や一流企業やメディアや学界で出世したあとにそれなりの「見返り」を求める気だったんでしょう。

- 研究者になってからは?

内田 都立大学には院生と助手で13年いましたが、その間に原理がどうこうしたという話は聞いた覚えがありません。学部レベルではあったのかも知れませんが、研究室で話題に出たことはなかったと思います。

 90年に神戸女学院に赴任しましたけれど、こちらはミッションスクールですから、原理の浸入に対しては非常にナーバスでしたので、しばしば話題に出ました。でも、実際に学内での活動を見た記憶はないです。

- 聖書勉強会と言って近寄ってきますよね。

内田 ミッションスクールだと「聖書」の名がつく活動に対してはむしろ他の大学以上に警戒心を持っていますから、侵入は難しかったんじゃないですか。「以前に入りかけたけれど、水際で追い払った」という昔話は聞いたことがあります。

- では内田さんの統一教会に対する知識は殆ど報道を通じてなわけで、今回の事件をどう見られました。

内田 過去30年近く「統一教会」という文字列をほとんど新聞紙面で見ることがなかったので、もう教勢が衰えて、社会的影響力を失ったのだろうと思い込んでいました。

 でも、実際は逆で、そのメディアが沈黙していた間に、政界に強力なネットワークを拡げ、メディアが統一教会について報道することがタブーになるくらいの力を蓄えていた。

 そのことを知りませんでした。だから、銃撃事件の背景を聴いて、びっくりしました。「なんだ、まだ統一教会って活動してたのか!」って。

-編集者から「統一教会は尾行・盗聴とかされるから止めた方がいい」と言われました。ある編集長が事件後電話をかけてきて「これで(統一教会報道は)解禁だね」と言いました。

内田 大手メディアは最初の2日間、「統一教会」の名前を報道しなかったですね。これにも驚きました。政府は事件と統一教会のかかわりを知られることをひどく恐れている。そこまで深く癒着しているということは、この情報隠蔽工作から知れました。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                         

- 時折、週刊誌が「安倍晋三と統一教会の関係」という報道をするんですが、マスコミ全体が追いかけなかったんです。

内田 そうでしょうね。僕だって「世界基督教統一神霊協会」が「世界平和統一家庭連合」に改称されたなんてまるで知らなかったですから。霊感商法をまだやってることも知らなかった。

 ですから、事件後になって、被害者の会の弁護士たちの出てくる動画を見て、「霊感商法、まだやってるのか!」と驚きました。被害者が3万人で1237億円が「被害の氷山の一角」だということは、隠れている「氷山」の部分はどれだけ巨大なんでしょう。

- 今回の報道で大分知ったことが多かったんですか?

内田 そうです。この30年近く、仲間内で統一教会のことが話題になることなんか一度もなかったですから。

- 永田町を取材していたら安倍政権以降、統一教会が力を持ち始めたという噂はよく聞きました。

内田 知りませんでした。自民党が岸信介からの因縁で昔から統一教会と親密であることは知っていましたけれど、政策決定に影響を与えるところまで統一教会が入り込んでいるとは知りませんでした。

 Twitterでは極右の活動を研究している人を何人かフォローしています。その人たちが時々日本の政治家や言論人と統一教会の関わりを報じてくれるんですけれど、エピソード的なものですから、統一教会がこれほど隠然たる組織力を持っているとは思いませんでした。

 秘書を自民党に100人送っていたとか、有田芳生さんがテレビで話してましたけれど、そんなニュース、新聞でも大々的に報道してくれないと、ふつうの市民には届きませんよ。

 今統一教会について一番調べてるのは『やや日刊カルト新聞』の鈴木エイトさんだと有田さんが言ってましたけど、そんな方の名前も今回の事件で知りました。

- 『カルト新聞』を知らなかったですか? 

内田 知りませんよ。カルトなんてもうオウムで終わったことだと思っていたから。今回の事件までLGBTや夫婦別姓の問題で、自民党が世論に頑強に抵抗する理由か分かりませんでした。

 国民の多くが支持している政策なら、それを採り入れた方が内閣支持率は上がるのに、どうしてやらないのかと不思議でした。「保守派への配慮」と新聞はいつも説明していましたけれど、統一教会のことだったのかと謎が解けました。

- 今回の銃撃した犯人をどう思いますか?

内田 よくわからないです。でも、政府と自民党は「犯人はサイコパスであり、突発的な事件であって、安倍元首相と統一教会の関係が原因ではない」という方向に話をもってゆくつもりでいるようですね。

- 無駄なあがきという気もしますが、犯人への同情はないですか?

内田 なんで僕が殺人犯に同情しなきゃいけないんですか? トマト投げるくらいならともかく、自作銃まで作って人を殺したんですよ。

- メディア的には同情論が強いかな? と思うんですが。

内田 同情論なんか僕はどこでも読んだことないですよ。誰が言っているの?

- ネットニュースなどで・・・。例えば元信者の人は「殺人はいけないけど、気持ちはわかる」という人はいます。

内田 こういう場合に「気持ちがわかる」という言い方はしてはいけないんです。

 「犯人の行動には主観的には合理性があり、その筋道をたどることはできる」ということは知性な作業ですが、「気持ちがわかる」というのは感情的な反応であって、この二つはまったく別のことですから。

- そこは大事なところですね。

内田 当人だって主観的には「自分のふるまいは合理的だ」と意味づけしているはずです。でも、この「犯人にとって主観的には合理的な犯行の理由」を開示されることを政府と自民党は恐れている。

 もしこれが公判に持ち込まれたら、「なぜ犯人が殺意を持つに至ったか」が中心的な論点になるからです。でも、それは自民党と統一教会の癒着の構造を白日の下にさらすことを意味する。

 だから、政府と自民党は、犯人が精神を深く病んでいて、妄想的に凶行に及んだのであって、統一教会と自民党を結ぶ線は事件においてまったく重要性がない…というストーリーにまとめて、彼を精神病院に収監させて、メディアの前には生涯二度と出さないという方向で動いていると思いますよ。

- そうです。公判はじまったら、全部ばれますよ。

内田 弁護団は自民党と統一教会の癒着についての証言をどんどん積み上げてくるでしょう。容疑者の思考や行動には「主観的には合理性がある」ことを証明することで情状酌量を勝ち取ろうとする。それが弁護方針としては最も効果的ですから。

- 内部告発も相次ぐでしょうしね。

内田 あるいは、そういうこともあるかも知れません。だから、とにかく裁判には持ち込みたくない。「留置場か病院で自殺」というストーリーが結果的には一番好ましい展開なんだが…と思っているんでじゃないですか?

- そこまで出来るでしょうか?

内田 そこまではできないでしょう。こうやって僕みたいな人間が出て来て、口々に「留置場か病院収監中に自殺というシナリオが政府・自民党にとってはベストであろう」と周知してしまうと、シナリオ通りのことはいくらなんでもできない。

 この状況で、予測通りに「自殺で幕引き」にされたら、もう警察発表なんか誰も信じなくなる。警察が市民の信頼を致命的に失ってしまう。いくら警察の上層部が政府・自民党に「いい顔」をしたくても、警察組織そのものの信頼を揺るがせるようなリスクを取るわけにはゆかない。

 それにもう事件ついてはステークホルダーが多すぎて、情報統制のしようがないんじゃないでしょうか。それに、県警としては「狂人による偶発的な事件ではなく、緻密に計画された暗殺である」方が望ましい。

 「狂人による偶発的な事件」だったら「それくらいのことは想定内だろう。どうして回避できなかったのか」と責任を追及されますけれど、「銃器の操作に習熟した人間による周到な犯行」だということになると、「いくら要人警護と言っても、日本の場合はそこまでのリスクを想定した警備はふつうしません」という言い訳ができる。

 奈良県警が身に降りかかる責任を軽減しようとしたら、後の方のシナリオを選好するはずです。 

-自民党は今、蜂の巣をつついたような大騒ぎでしょうね。

内田 でしょうね。内閣はとりあえず「様子見」だと思います。岸田さんは今のところは国葬で安倍派に対する配慮を示していますが、いずれ安倍派が内紛で分裂すれば、安倍派を優先的に配慮する必要もなくなってくる。

 それ以前に「統一教会と癒着していた議員」と「癒着していなかった議員」の間に対立が出てくると思います。「癒着していなかった議員」にしてみたら「自民党議員は…」と責められることは「痛くもない腹を探られる」わけですから、「誰がクロかはっきりさせてくれ」という気分になる。

 一方のブラックやグレーの議員たちはうっかり癒着を認めて謝罪などすると「じゃあ、議員辞職して責任を取れ」という話になりかねない。それだと解党的な危機になりかねない。だから執行部としても、そこまでは追いつめられない。

 「癒着議員」をなんとか「謝罪」させて、かつ「責任を取らせないで済ませる」ためにはどうしたらいいのか、それを今党執行部では頭を悩ましていると思いますよ。

- 既にそういう状況が起きているのでは? 落としどころがないわけで、程度によっては議員辞職しなきゃいけないですから。

内田 「赤信号みんなで渡れば怖くない」ですから、癒着していた議員たちが100人くらい全員一斉に記者会見して、そこで最敬礼して謝罪するというのがたぶん一番傷が少ない解決法だと思います。

 それは「全員の足並みが揃うまでは謝罪しない」ということですが、全員の足並みが揃うことなんかあり得ない。だから、最終的には、誰一人謝罪しないままぐずぐずにするつもりだと思います。

- 野党にも若干いるみたいです。立憲にも数人いたとか・・・。

内田 野党が先に「癒着議員」に詰め腹を切らせて、離党なり、議員辞職なりさせたら、自民党に対してはこのあと一気に優位に立てます。でも、その政治判断が出来ない。そこが今の立憲のダメなところですね。こんなところで自民党と利害が一致してどうするんです。

角田 裕育 (政治経済ジャーナリスト)

続報リクエストマイリストに追加

以下の記事がお勧めです

  • 統一教会は「神のためならウソをついてもいい」と教えられる

  • 維新・自民叩く「泡沫」保守の参政党が議席確保

  • 角田 裕育のバックナンバー

  • 中露共同声明に明確に違反 ベラルーシへの核配備

  • 石炭火力が突出する日本 アンモニア混焼唱え笑いものに

  • 米国金融不安 背景に商業不動産向け貸し出し

  • 渋沢と福沢 身分制度、男女差別への憎悪で一致

  • プロフィール
  • 最近の投稿
avator
角田 裕育(政治経済ジャーナリスト)
1978年神戸市生まれ。大阪のコミュニティ紙記者を経て、2001年からフリー。労働問題・教育問題を得手としている。著書に『セブン-イレブンの真実』(日新報道)『教育委員会の真実』など。
avator
角田 裕育(政治経済ジャーナリスト) の 最新の記事(全て見る)
  • 党員同士がSNS上で激論 党内「分裂症状」とも -- 2023年3月23日
  • 京都では「志位委員長遊説」宣伝ボイコットも -- 2023年2月21日
  • 【内田樹氏に聞く】ポストプーチンは米中の代理戦争になるかも -- 2023年1月11日
Tweet
LINEで送る

メニュー

    文字サイズ:

  • 小
  • 中
  • 大
ソクラとは 編集長プロフィール 利用案内 著作権について FAQ 利用規約 プライバシーポリシー 特定商取引法に基づく表示 メーキングソクラ お問い合わせ お知らせ一覧 コラムニストプロフィール

    文字サイズ:

  • 小
  • 中
  • 大
  • 一覧表示を切替
  • ソクラとは
  • 編集長プロフィール
  • 利用案内
  • 著作権について
  • メーキングソクラ
  • お知らせ一覧
  • FAQ
  • 利用規約
  • プライバシーポリシー
  • 特定商取引法に基づく表示
  • お問い合わせ
  • コラムニストプロフィール

Copyright © News Socra, Ltd. All rights reserved