「泡沫政党」と言われた参政党が、選挙期間中にブレイクの兆しを見せ、ついに比例で参院議席を確保した。
参政党はどんな経緯で出来たのか? 詳細を調べてみた。
参政党の起源は、2010年に自民党から分派する形で創立された日本創新党まで遡るようである。参政党のリーダー的立場である神谷宗幣事務局長は、日本創新党員ではなかったが、当時吹田市議会議員(2007年当選)として日本創新党の集会などで講演するなど密接な関係にあった。
また、日本創新党の創立者である山田宏元杉並区長は「新しい歴教科書をつくる会」の歴史教科書を採択するなど、既存の歴史教科書に強い批判姿勢を持つことで知られた人物。そうした思想系譜を引き継いでか、神谷氏も強く既存の歴史教科書を批判することで支持を集めている。
神谷氏は2010年に地方議員、国会議員を集めた「竜馬プロジェクト」を始め、そこには自民党の杉田水脈衆院議員が「参与」として参加している。また、日刊ゲンダイの記事(7月6日)によると、「神谷氏は霊感商法などが長らく社会問題になっていたカルト宗教「統一教会(現在は世界平和統一家庭連合)」系メディアの関係者が主催するイベントに登壇、関係者は参政党の結成メンバーにも加わっていたが、すでに離党している」という。
2020年の結党メンバーには、保守系ユーチューバーとして知られる「KAZUYA」こと京本和也氏がいる。政党名や政策などに影響を与えたと本人は動画などで語っているが、現在は離党している。理由はと言えば、ユダヤ陰謀論などに同党が傾き過ぎたことが原因だそうである。ほかに当時のコアメンバーには共産党議員秘書の篠原常一郎氏がいるが、いまは離れている。
コアメンバーの顔触れを見ると、共同代表の3人は、大物右翼の故・赤尾敏氏の姪っ子、赤尾由美氏(ジャズダンスインストラクター)、保守系のYUOTUBE放送をしている大蔵省OBで衆院議員も一期務めた松田学氏、歯科医で医療問題アナリストを称する吉野敏明氏。
この3人に神谷氏と副事務局長で石川県議会議員の川裕一郎氏の5人が党の方向性を決めるボードメンバー。いずれも日本の伝統を大切にと唱える保守主義者であるが、「積極財政ができる仕組みを提案している唯一の党」(松田氏)と財政拡大論者でもある。陰謀論としか思えない説を平気で口にするほか、反ワクチン・反マスクを推進するなど、オカルト的な傾向も見られる。
参政党を中心に政治ニュース動画をYouTubeで配信している「カピバラチャンネル」の主宰者であるT氏は、「私は参政党員になったが、入党したのは実体を調査する目的が大きい。普段は一般党員との付き合いしかなく、全体は良くわからない」と語った。
参政党の選挙事務所を取材してみると、主婦ボランティアと思しき女性の姿が目立つ。話を聞いてみると、「政治にはまったく関心がなくド素人だった」といういわゆる「ノンポリ・無党派層」と言うべき人々が多いようだ。何が彼女たちを惹き付けるのか?
「子育て・教育政策に共感した。参政党はYouTubeを見て知った」 という。神谷氏は元教員で教育政策に比較的詳しく、フリースクールの政策などには、独特の論陣を展開している。街頭演説や練り歩きなどには、小さな子供を連れた女性の姿も見られ、主婦層にシンパが増えているとは言えそうだ。
しかし、現在のところ3億円を超える(目標は5億円)という多額の献金はどこから拠出されているのだろうか? 宗教団体や経済団体などのバックグラウンドを疑う声がマスコミ内の噂話で挙がっているものの神谷氏は明確に演説などで否定している。
ただし、参政党は保守系の政経塾出身者が多いとの情報を得た。
「日本創新党と深い関係のあった政治的に保守系の林政経塾を主宰する林英臣氏の弟子が、概ね参政党に流れていると見られます。林氏は経営者など金持ちしか相手にしないセミナーなどしかやりません。私もある経営者の紹介で参加しましたし、私に参政党を勧めて来たのも林氏の門下生でしたしね。関西のロータリークラブに林先生は影響力を持っています」(事情通)と話す。
参政党員の面々を調べてみると、同党のホームページでも認めているように、自民・維新から共産・れいわまで他党派の出身者がいる上、先に述べたようにノンポリ・無党派層と言える人々も多い。候補者かき集めのなかで落選議員なら誰でも声をかけていたとも言われる。
議席獲得で参政党への注目はさらに高まりそう。主張は街頭宣伝ではあいまいな面もあったが、これからは鮮明にしてくるだろう。新・右翼として、また反ワクチン政党として、とがった主張を始めるのは間違いない。人気を得てさらに党勢を拡大するのか、3年前のNHK党のように失速するのだろうか。
維新・自民叩く「泡沫」保守の参政党が議席確保 |
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【参院選2022】陰謀論者や反ワクチン主義を主張する異端さが魅力か
公開日:
(政治)
参政党神谷事務局長の街頭演説(三宮駅前)=撮影角田
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角田 裕育(政治経済ジャーナリスト)
1978年神戸市生まれ。大阪のコミュニティ紙記者を経て、2001年からフリー。労働問題・教育問題を得手としている。著書に『セブン-イレブンの真実』(日新報道)『教育委員会の真実』など。
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