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野党凋落映す 石川知事選でも自民分裂

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【小塚かおるの政治メモ】異例の3分裂選挙で馳氏が辛勝、全面支援の安倍氏が安堵

公開日: 2022/03/14 (政治)

馳氏=Reuters 馳氏=Reuters

 自民党王国で異例の保守3分裂となった石川県知事選は、3月13日の投開票の結果、元文部科学相の馳浩氏(60)が初当選を果たしたが、次点との差はわずか8000票の辛勝。2万5000票差以内に3人が並ぶ大激戦で、最後までデッドヒートが繰り広げられた。

 保守系の3人は、馳氏のほか、前参議院議員の山田修路氏(67)、前金沢市長の山野之義氏(59)。投票1週間前のメディアの情勢調査でも、馳氏がトップながら2位との差は1ポイント以下、3位との差でも2~4ポイントという僅差で、3人の誰が当選してもおかしくない選挙だった。

 勢力が拮抗したのは、3者が衆議院で3つに分かれている選挙区ぞれぞれを押さえたことが大きい。前金沢市長が大票田の金沢市(衆議院の石川1区にあたる)で支持を広げ、馳氏は森喜朗元首相の圧倒的地盤だった石川2区で強く、農林水産省出身の山田氏は農林水産業が盛んな能登半島中心の石川3区で支持を広げた。

 自民党は誰にも推薦を出さず、石川県連が馳氏と山田氏の2人ともを支持、地方議員は3人それぞれとの個人的な関係で3陣営に分かれた。

 馳氏の辛勝に一番安堵しているのは安倍晋三元首相だろう。馳氏と山田氏はともに安倍派(清和政策研究会=清和会)所属だった。本来、派閥内の事前調整で候補者を一本化させなければならなかったが、失敗。安倍会長の求心力に黄信号が灯っていたからだ。

 石川県政でいまだ歴然たる力を持つ森元首相が馳氏を推し、その森氏のライバルだった故・奥田敬和元運輸相の流れを汲む現知事・谷本正憲氏の事実上の後継が山田氏。保守分裂の背景には長年の地元事情がある。安倍派としては森氏の意向を受け、馳氏に一本化するため山田氏に出馬断念を迫ったが、山田氏は拒否して参議院議員を辞職。安倍派内のゴタゴタを尻目に金沢市長が出馬表明するという展開だった。

 そうした経緯から、安倍派は総力を挙げて、馳氏支援に回った。安倍会長自身が地元入りし、馳氏の決起集会で必勝の声を上げ、会長自らのパイプを使って日本維新の会に馳氏を推薦してもらったほどだ。

 「おととし、去年、そして今年と、地方選挙での自民党分裂がずっと続き、その極め付きが石川県知事選挙。組織の溶解とでも言うのか、県連のまとめ役が不在となり、国会議員も組織をまとめられなくなり、役所内の調整も効かなくなった。そしてついに、一番結束力が強いはずの派閥すらまとめることができなくなってしまった」(自民党の選挙関係者)

 主要な地方の首長選は確かに保守分裂選挙が目立つ。2020年10月の富山県知事選を皮切りに、昨年は1月の岐阜県知事選、4月の秋田県知事選、7月の兵庫県知事選、10月の岡山市長選。今年に入っても、1月の長崎県知事選と東京・町田市長選が保守分裂だった。

 こうした傾向は、国政における野党の凋落と比例した動きなのは間違いない。自民党にとって政権を奪われそうな明確な「敵」が存在すれば、党内でガタガタしてはいられない。党内で一致結束して、野党に向き合い、戦わざるを得ない。

 しかし、政権を脅かされる恐れがなければ、権力争いは野党ではなく内部に向かう。地方県政の主導権をめぐる自民党国会議員の争いは昔からあるとはいえ、野党不在のいま、それが日常茶飯事になってしまった。

 「昨年10月の衆院選が終わって、保守分裂選挙は一段落ついたかと思ったのだが・・・。野党がますますバラバラになって、自民党は野党の存在を心配する必要がない。敵がいないから内輪揉めになってしまう」(同上)

 今年7月に予定される参議院選挙に向けても、自民党はのんびりと構えている。3月13日の党大会で岸田文雄首相が「私が先頭に立つ」「気を緩めることなく一致団結してこの戦いを勝ち抜こう」と気勢を上げてはいたが、党執行部に危機感はなく、公認候補者の決定も例年より遅れている。

 自民党の政党支持率は3~4割を保ち堅調で、野党は1人区での共闘態勢すら進まない。国民民主党は新年度予算案に衆議院で賛成し、事実上の与党になってしまったし、やはり自民寄りで「ゆ党」と呼ばれる維新が政党支持率では立憲民主より高い調査もある。

 自民党としては「警戒すべきは維新に保守票をどの程度奪われるかだけ」(別の選挙関係者)という楽勝ムードすら漂う。

 そんな中で自民党内の非主流派は、新型コロナウイルス対策やロシアのウクライナ侵攻への対応などで岸田首相の指導力に懐疑的な視線を向け、「ポスト岸田」に備えた権力闘争に虎視眈々。菅義偉前首相が4月にも発足させる勉強会はその土台となりそうで、菅氏に近い無派閥議員のグループに加え、二階派や森山派、菅氏の盟友で麻生派を退会したばかりの佐藤勉・前総務会長らの参加が見込まれている。

 こうした派閥の動きも、参院選に「敵なし」と見る自民党内の余裕から生まれる内輪揉めのようなものだ。

 想像だにしなかった戦争が始まり、激動の世界情勢の中で今ほど国会の議論が重要な時はない。内向き自民党と弱体野党では政治に緊張感が生まれない。野党の奮起を期待したい。

小塚かおる (日刊現代第一編集局長)

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小塚かおる(日刊現代第一編集局長)
1968年、名古屋市生まれ。東京外国語大学スペイン語学科卒業。関西テレビ放送、東京MXテレビを経て、2002年から「日刊ゲンダイ」記者。その間、24年に渡って一貫して政治を担当。著書に『小沢一郎の権力論』、共著に『小沢選挙に学ぶ 人を動かす力』などがある。
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