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細田問題の本質は「矜持なき永田町政治」

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【小塚かおるの政治メモ】10増10減、たった100万円、そして女性蔑視

公開日: 2022/06/06 (政治)

小塚かおる (日刊現代第一編集局長)

 通常国会は6月15日の会期末が迫る最終盤で、細田博之衆議院議長(78)に対する不信任決議案が出されることになった。立憲民主党が7日にも衆院に提出する方針だ。与党の反対多数で否決される可能性が高いものの、三権の長であり、党派を離れた中立の立場の衆院議長が不信任案の対象になるのは異例のことである。

 議長としての「資質」に欠けるとされる理由は、この間の細田氏の発言や週刊誌報道に絡む3点。

①一票の格差を是正するための衆院小選挙区「10増10減」案は、国会で決めた法律に基づいているにも関わらず、否定的な発言を繰り返した。

②国会議員の定数増を主張し、「議長になっても毎月もらう歳費は100万円しかない」「手取りの月給が100万円未満の国会議員を多少増やしても罰は当たらない」と発言。国民感覚とのズレを露呈し、物議を醸した。

③女性記者に対して「添い寝したら教えてあげる」などと迫ったと「週刊文春」で報じられたセクハラ疑惑について、「事実無根だ」とする一方、野党が求める国会での説明に応じていない。

 いずれも、国権の最高機関のトップの重みはどこへやら、という資質を問われても仕方のない発言や行動ではあるのだが、実はこれら「細田問題」は、どれも今の永田町政界に横たわる重要課題を凝縮したものだとも言える。

 ①は選挙制度の問題。

 2016年に成立した「衆院選挙制度改革関連法」により、次の衆院選には人口比を反映させやすい「アダムズ方式」を導入することが決まっている。2021年11月に公表された国勢調査の確定値の結果、衆院の小選挙区は「10増10減」で是正されることが確定。東京が5増、神奈川が2増、埼玉・千葉・愛知がそれぞれ1増、一方で、宮城・福島・新潟・滋賀・和歌山・岡山・広島・山口・愛媛・長崎の10県はそれぞれ1減となる。

 これに否定的な発言をした細田氏の主張は「地方いじめ」「地方は地方の立場がある」というもの。議員定数が削減される10県は比較的自民党の強い地域が多く、自民党内の一部は細田氏に同調したり、理解を示す。しかし、国会議員自らが国会で決めたルールに後から文句を付けたり、否定するのはおかしな話。地方の声を反映させる別の方法を考えるか、どうしてもというのなら改めて法改正をするのが筋だ。

 国会議員の身分の生殺与奪の権を握る選挙制度は、その時々の政党や議員の意向で歪められやすい。思えば、1994年の選挙制度改革から約30年。「小選挙区比例代表並立制」が導入された目的のひとつは、「政権交代可能な二大政党政治」の実現だったはずだ。一旦、2009年に自民党から民主党への政権交代があったが、その後はむしろ二大政党とは逆に多党化が加速している。

 個人的には「政権交代がない政治は緊張感がなくなり腐敗する」と確信している。すべての政党には二大政党をめざす責任があるという自覚を求めたい。自らの身分には甘いから望むべくもないのか。ならば第三者による選挙制度の見直しなどメディアや世論が声をあげるべきではないか。

②は「政治とカネ」の問題。

 細田氏は「毎月100万円しかもらっていない」「手取り100万円未満」と発言したが、冗談じゃない。国会議員は歳費に加えて、様々な手当や特権を受けている。

 在職1日だけでも1か月分の100万円がもらえるのはおかしいと問題になった「文書通信交通滞在費」は、名称を「調査研究広報滞在費」と改め、日割り支給になったが、毎月100万円の金額はそのまま。そのうえ「調査研究」や「広報」といった文言に変わり、事実上、使途が拡大。現状、領収書の添付など使途の公開は不要で、ますます国会議員が自由に使える「第2の給料」となっている。

 他に、月65万円の立法事務費。これも使途公開は不要だ。さらに、元参院議員の不正使用が発覚したJRパスや航空券。無料で使える議員会館の事務所や近隣相場より格安の議員宿舎、それらの運営費など。全部ひっくるめると、国会議員1人当たりにかかるコストは年間1億5000万円という試算がある。月額にすれば実に1250万円である。

 細田氏の発言が物議を醸すのは、それだけ国会議員のカネの使い方に有権者が疑念を抱いている証左。少なくとも「調査研究広報滞在費」や「立法事務費」の使途公開は急務だろう。

 ③は取材手法と女性に対する意識の問題。

 永田町取材でセクハラまがいの言葉を投げかけられたなどの話はときどき耳にしてきた。一方でメディア側でも、「この政治家は男性記者より女性記者に対しての方がよくしゃべるから、女性記者を番記者にする」といった判断が長年なされてきたのも事実だ(最近は是正されてきていると聞くが)。

 国会議員に女性が占める割合は14.3%(衆院9.7%、参院23.1%=今年3月時点)。「世界経済フォーラム」が公表した2021年の「ジェンダー・ギャップ指数」は156カ国中120位、政治分野に限ると147位と最低レベルまで落ちる。2018年には「政治分野における男女共同参画推進法」が施行されてはいるが、永田町は取材する側もされる側も、女性に対する意識改革が一般社会と比べて遅れている。

 自民党に野党は抗えず政権交代など程遠い。政治に緊張感がないから、議員は我が身だけの選挙制度を考え、金銭感覚は麻痺し、男性の権力社会は変わらない。
そんな、政治家の矜持をなくしたいまの永田町を、細田問題は象徴してはいまいか。
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小塚かおる(日刊現代第一編集局長)
1968年、名古屋市生まれ。東京外国語大学スペイン語学科卒業。関西テレビ放送、東京MXテレビを経て、2002年から「日刊ゲンダイ」記者。その間、24年に渡って一貫して政治を担当。著書に『小沢一郎の権力論』、共著に『小沢選挙に学ぶ 人を動かす力』などがある。
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