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桜の前夜祭 菅氏、安倍前首相の嘘を追認

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【望月衣塑子の社会を見る】NHK出演中、突如怒り出した

公開日: 2020/12/01 (政治)

【望月衣塑子の社会を見る】NHK出演中、突如怒り出した

 「桜を見る会」の前夜祭は、やはり安倍晋三前首相側からの補てんがあった。

 東京地検特捜部が安倍前首相の公設秘書から任意で事情聴取し、明らかになった。読売新聞や朝日新聞の報道によると、2019年までの5年間で約900万円を安倍事務所が補てんし、ホテル側は安倍前首相の資金管理団体「普和会」宛ての領収書を発行。

 安倍事務所は領主書を破棄したほか、補てんについて政治資金収支報告書の支出欄に記載しなかった。安倍事務所は2013年の時点で、記載の必要性について総務省に問い合わせをしていた。違法性を認識した上で領収書を廃棄したとなれば証拠隠滅だ。これらは明白で悪質な政治資金規正法違反だ。

 前夜祭の問題が明らかになった2019年当時、野党議員や報道機関からは「安すぎる」「1人あたり5千円の会費では足りない」と疑問の声が上がったが、安倍氏も菅義偉官房長官(当時)も明確に否定していた。19年11月15日、記者団へのぶら下がりで安倍氏は、「事務所、後援会としての収入、支出は一切ない。5千円の会費は、ホテルの宿泊客なので『ホテルが設定』した。これは(安倍)事務所が、ホテルと話をさせて頂いた結果です」とまで言い切っていた。

 全て虚偽だったどころか、「事務所がホテルと話をさせて頂いた」との発言は、ホテルに口裏合わせを迫っていたかのようにも聞こえる。嘘も強気で嘘を言えば、相手は怯む。バレた頃には、ほとぼりが冷めている。国民はいずれ飽きて忘れる——。この姿勢は「政治家・安倍晋三」の基本的なスタンスだ。

 そして菅氏の役どころは、安倍氏の虚偽説明を無検証のまま追認することだった。19年11月14日の官房長官会見で、テレビ記者からこう尋ねられた。「弊社がホテルに問い合わせをしたが、1人5千円で宴会できないということだったが、改めて、5千円という金額の妥当性をどうお考えか」

 菅氏は「承知はしてないが、5千円でできないことはないんじゃないか。私どもは色々やっている。本当に聞かれたのか、責任ある人に」と怒気を込めて答えた。記者が萎縮しながら「問い合わせました」と答えると、菅氏は「ちゃんとした人に聞かれると、私は想定の範囲だと思いますよ」と自信を見せていた。

 だが、自分こそ「ちゃんとした人」に確認することなく、安倍氏の説明をそのまま「鵜呑み」していたことが浮き彫りになった。

 菅政権におけるGoToトラベルをめぐる混乱や、新型コロナウイルスへの都道府県知事に判断を丸投げするかのような対応をみて再認識したのは、菅氏は事実関係を確認したり、物事を総合的に理解して判断し、国会や記者会見の場で自分の考えを明確に話したりすることができない人物、ということだ。

 これまで菅氏の関心は、専ら人事で人心を掌握し、自らの権力基盤を強化することだけだった。その象徴が、世論の大きな反発を買った黒川弘務元東京高検検事長の定年延長の閣議決定と、これを正当化するような検察庁法改正法案の提出だった。

 黒川氏を定年延長させて「黒川検事総長就任」に最もこだわっていたのが菅氏だった。なぜ、ここまでこだわったのか。「桜を見る会」と「前夜祭」は、5月21日に弁護士や法学者の専門家達662人が、東京地検に刑事告発し、河井克行元法相夫妻の政治資金規正法違反の事件も東京地検特捜部による捜査も進んでいた。

 「官邸の守護神」と言われる黒川氏をなんとしても残留させ、その後、予想されうる特捜部による、官邸への疑惑追及の芽を何とかうまく摘みたかったのではないか。黒川氏が、検事総長になっていたら、特捜部が関与している事件に関し、あの手この手を使って、水面下で官邸からの圧力をかけたかったのではないだろうか。

 2014年4月に内閣人事局が設置されて以降、霞ヶ関の幹部人事は、菅氏や杉田和博内閣人事局長の手に一挙に委ねられるようになり、官邸に権力が集中した。菅氏の人事介入による独裁欲は、その後もおさまることがなく、検察庁だけでなく、歴代の首相が手をつけなかった最高裁判事の人事、そして、日本学術会議の人事にまで及んでいった。

◆学術会議への人事介入◆

 「説明できることと、できないことってあるんじゃないでしょうか。105人の人を学術会議が推薦してきた人を政府がいま追認しろっていわれているわけですから」

 学術会議が推薦した6人の候補者への任命拒否について10月26日のNHK「ニュース9」に生出演した菅首相は、有馬嘉男キャスターから「国民への説明が必要という声もある」と質されると、そう言って、突如怒り出した。特に「追認しろっていわれている」の部分は、語気が強く、手で机を叩くような仕草までしていた。

 有り体にいえば「決定権は俺にある」「俺のほうがエライんだ」と吠えているだけなのだが、法的にも常識的に、おかしいのは菅氏のほうである。

 菅氏は「追認」という言葉を使ったが、学術会議は、会議法7条にある「推薦に基づき任命」という法律手続きにのっとったまでだ。なお、首相が拒否した宇野重規教授は53歳で、会員の平均年齢58・6歳を下回る。「若手が少ない」と言いながら宇野氏を拒否したのかは完全に謎だ。

 そもそも菅氏は、105人の推薦書リストを見ていない。「一定の考え方を共有した」という杉田和博官内閣人事局長が決めた99人を「追認」しただけだ。拒否した6人のうち知っていたのは、東京大の加藤陽子教授(歴史学)だけで、他の5人は名前さえ「知らなかった」という非常識さだ。ここでも追認。

 加藤教授は、比率が少ない女性会員であり、公文書管理委員会の委員含め8つの政府委員を歴任してきたが、菅氏は、そのことも「承知していなかった」。国会では、何度も「選考過程が不透明」と学術会議への批判を重ねたが、森友改ざん事件では、改ざんを主導した佐川宣寿元理財局長をその後も国税局長に栄転させ、理由を何度、問われても「適材適所」を繰り返すだけだった。

 一方、学術会議は、会員と連携会員が推薦した1300人の候補者から、30に分かれた専門分科会と選考委員会を経て、105人の推薦候補者に絞り込んでおり、不正不当な選考ができない仕組みになっている。どちらがどれだけ「不透明な選考」なのかは、言わずもがなだろう。一体、どの口が言うのだろうか。

 結局、安倍政権時代の官房長官の時と変わらず、杉田氏が決めた6人排除の判断を菅氏は、「無検証・無批判のまま追認」し、その結果、現状にどう考えても論理的に不都合で、整合性のない問題がいくら生じようとも、人事の過程は答えられない」と、一切の説明をせずにゴリ押ししている。

 共産党の小池晃議員から「学問の自由とは何か」と聞かれた時でさえ、後ろを振り向き、内閣府秘書官の差し出す紙を見て、メモを取る菅氏の姿を見た時は、唖然としたが、約8年間、常に官僚の差し紙に頼ってやってきたので、もはや自分の語る言葉がないのだろう。

 誰か周りに諌める人物もいれば違うだろう。だが、人事権を振りかざして、物言う官僚たちを軒並み更迭してきたため、もはや、周囲には「出世」のために腰が引けているイエスマンの官邸官僚しか残っていない。だから、自ずと答弁能力もつかなければ、自身の考えを深めることさえしないのだ。

 このようなリーダーがトップに居座る限り、日本の社会も政治も萎縮し、自由な空気は奪われ、陰湿で陰険な社会になっていく。もの言えぬ社会から、多様な議論や独創性のある瑞々しいアイディアが生まれてくるだろうか。

 この問題は、研究者や学術コミュニティだけの問題に留まらない。任命拒否の問題を許せば、メディアも官僚も世論もあっという間に一色に染め上げられていく。言葉をもたず、人事よる権力欲に取り憑かれた日本のトップが、国に及ぼす負の影響は、はかりしれない。

 総裁選の最中、「パンケーキおじさん」「れいわおじさん」とほほえましく菅氏を持ち上げていたメディアはいまこそ、深く反省せねばなるまい。

望月衣塑子 (東京新聞記者)

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望月衣塑子(東京新聞記者)
1975年、東京都生まれ。東京新聞社会部記者。慶應義塾大学法学部卒業後、東 京・中日新聞に入社。千葉、神奈川、埼玉の各県警、東京地検特捜部などで事件 を中心に取材する。2004年、日本歯科医師連盟のヤミ献金疑惑の一連の事実をス クープし、自民党と医療業界の利権構造を暴く。東京地裁・高裁での裁判を担当 し、その後経済部記者、社会部遊軍記者として、防衛省の武器輸出、軍学共同な どをテーマに取材。17年4月以降は、森友学園・加計学園問題の取材チームの一 員となり、取材をしながら官房長官会見で質問し続けている。著書に『武器輸出 と日本企業』(角川新書)、『武器輸出大国ニッポンでいいのか』(共著、あけび 書房)、「THE 独裁者」(KKベストセラーズ)、「追及力」(光文社)、「権力 と新聞の大問題」(集英社)。2017年に、平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励 賞を受賞。二児の母。2019年度、「税を追う」取材チームでJCJ大賞受賞
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