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「骨太の方針」決定 コロナで財政健全化置き去りだが、財源の議論尽くすべき

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【木内前日銀政策委員の経済コラム(73)】前面に押し出した「デジタル・ガバメント」 過去の失敗の検証を

公開日: 2020/07/23 (政治)

Reuters Reuters

 政府は7月17日に、骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)を閣議決定した。その内容は、まさに「コロナ一色」といった感がある。今までも挙げられてきた多くのテーマが、感染問題と関連付けて、改めて捉え直されている。

 新型コロナウイルスの感染拡大は、日本の経済や社会が抱える弱点を多く浮き彫りにした。それを克服するために新たな政策を進める、というのが、今回の骨太の方針の中核的な流れとなっている。

 そして、新型コロナウイルス問題では、企業や個人への支援策で政府の不手際が目立ち、国民から強い批判を浴びた。特別定額給付金や雇用調整助成金のオンライン申請では多くのトラブルが生じ、政府のIT・デジタル化の遅れが浮き彫りになった。

 そこで、今回の骨太の方針では、行政手続きのデジタル化、「デジタル・ガバメント」の構築が、一丁目一番地の最優先課題として位置付けられたのである。政府は、内閣官房に民間人材も活用した「司令塔機能」を設置し、この1年を集中改革期間として行政手続きのデジタル化推進を図る。

 こうした方針自体に異を唱える向きは少ないだろう。電子政府(e-Government)は、クラウドサービス、e-Learningと並んで、日本が最も遅れているネット・サービスの利用分野である。

 OECD(経済協力開発機構)が2017年に発表した報告書によれば、OECD加盟36カ国中、日本は電子政府(e-Government)の利用で35位であった。行政手続きのデジタル化には、民間のデジタル化を促す効果も当然ながら期待できる。

 しかし、政府はe-Japan戦略と称して、20年近く前の2001年度にも、同様のデジタル化方針を掲げていた。その際には、2003年度までに電子行政を実現、5年以内に世界最先端のIT国家となる、等の方針が示され、その後、ITシステムにかける政府予算はかなり増加したが、今になってみると目立った成果を挙げられていない。この20年間は何だったのか。こうした経験に照らして、今回の行政のデジタル化戦略を懐疑的に見る向きも少なくない。

 政府は、コロナ対策での反省にとどまらず、過去のIT化戦略もしっかりと検証して欲しい。過去の経緯を踏まえれば、省庁間でのシステム統合の進展などは、最も優先的な課題となるだろう。

 今回は違う、という納得感のある説明ができなければ、政府はデジタル化推進の名の下で、再び無駄遣いをしてしまうのではないか、との一部の懸念を払しょくできないだろう。

コロナ対策の費用は誰が負担すべきか

 他方、財政健全化について、ほとんど記述がなされなかったことが、今回の骨太の方針のもう一つの大きな特徴だ。2025年度までに国と地方のプライマリーバランス(基礎的財政収支)を黒字化するという政府の財政健全化目標は、今回の骨太案には明記されなかったのである。コロナ対策に焦点を絞り込んだことがその理由であり、財政健全化の政策方針には変化はない、というのが政府の説明のようだ。しかし、そうした説明を額面通りに受けとめる向きは少ないのではないか。

 プライマリーバランスの黒字化目標は、今までも先送りされてきており、2025年度までの黒字化達成は、もともとほぼ不可能だった。それにダメ押しをするかのように、コロナ対策で政府は2020年度に90兆2,000億円もの巨額な新規国債発行を決めた結果、プライマリーバランスの黒字化目標は意味を失ってしまったのである。

 従来の財政健全化方針はコロナ問題によって打ち砕かれ、短期間での修復は不可能となってしまった。そこで、経済危機の下で財政健全化への関心を一時的に弱めている世論に甘える形で、財政健全化の新たな方針を示すことを政府は見合わせたのだろう。

 単に、新たな黒字目標を示せばよい、というものではなく、コロナ対策に必要な費用をだれが負担するのか、という財源の議論は、骨太の方針の中にしっかりと盛り込むべきではなかったか。国民に便益をもたらす新たな経済政策と、それをだれが負担していくのか、という財源の問題とはまさに表裏一体である。この点に照らせば、今回の骨太の方針はバランスを欠いているように見える。

 コロナ問題のような大きな経済的ショックが生じることに備え、平時に財政健全化をもっと進めておくべきだった。それがなされなかったからこそ、コロナ問題によって、財政環境の脆弱性も改めて浮き彫りになってしまったのである。

 そうした弱点を克服するために新たな政策を進める、というのが、今回の骨太の方針の主要なメッセージであるならば、「デジタル・ガバメント」の構築と並列するもう一つの柱として、コロナ対策の財源の議論、新たな財政健全化の方針もしっかりと示して欲しかった。

木内 登英 (前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)

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木内 登英(前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)
1987年野村総研入社、ドイツ、米国勤務を経て、野村證券経済調査部長兼チーフエコノミスト。2012年日銀政策委員会審議委員。2017年7月現職。
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