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安倍政権でゼロまで下がった生産性 新政権は高める策を

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【木内前日銀政策委員の経済コラム(76)】コロナで打撃の小売り、飲食、宿泊などで生産性向上の余地

公開日: 2020/09/03 (政治)

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 8月17日に発表された2020年4-6月期の実質GDPは、前期比年率-27.8%と戦後最大の下落幅となった。その結果、実質GDPは安倍政権発足以来の改善分を一気に失ってしまったのである。この統計発表からほどなくして、安倍首相は辞任の意思を表明した。

 安倍政権が新型コロナウイルスの感染拡大を予見することは当然できなかったとしても、2009年以来の世界経済の長期回復という追い風がいずれ終焉を迎え、それが日本経済の逆風となることは予見できたはずだ。

 安倍政権下で実現された比較的良好な経済環境は、国内政策の効果よりも海外経済の長期回復という追い風による部分が大きかった、と考えられる。

 その追い風がいずれ逆風へと転じることに備えて、財政の健全化や金融緩和の正常化をもっと進めておくべきではなかったか。そうしていれば、現在の経済の悪化のもとでも、財政・金融政策面での対応の余地はもっと残されていたはずだ。

 日本の経済政策の中で最も優先順位が高いのは、潜在成長率を高め、生産性上昇率を高めること、ではないか。生産性上昇率の向上は実質賃金上昇率の向上をもたらし、広く国民が自らの将来の生活に明るい展望を持てるようになることに繋がるためだ。

 ところが、安倍政権下で進められてきた経済政策が、潜在成長率、労働生産性上昇率を押し上げた明確な証拠はない。潜在成長率並びにイノベーションなどを反映するTFP(全要素生産性)上昇率は政権発足時から一貫して下落傾向を辿り、足もとではほぼゼロという異例の低水準にまで達している。これは、日本経済の技術進歩や生産性向上のペースが低下していることの表れでもあり、人口減少がもたらす潜在成長率への影響以上に、大いに懸念されるところだ。

 政権下で盛んに実施されてきた積極金融緩和策や財政出動策は、生産性向上に貢献することはほぼない。構造改革、成長戦略こそが、それに寄与するのである。現政権下で構造改革は試みられてきたが、その明確な成果は今のところ見られていない。

コロナショックを逆手にとれ

 今後の経済政策は、需要増加を目指す金融・財政政策から、経済の効率性を高める構造改革へと、一気に比重を移すべきではないか。コロナショックという逆風をいわば逆手にとって、経済の効率を高め、国民生活をより豊かにすることは可能である。その一例となるのが、サービス業の生産性向上だ。

 コロナショックで最も打撃を受けている小売業、飲食業、宿泊業、アミューズメント関連などのサービス業種は、中小・零細企業によって支えられる側面が強く、また、国際比較で日本の生産性が著しく低い、と長らく指摘されてきた代表的業種と重なるのである。低生産性の主な要因には、過剰雇用体質もあるのではないか。

 感染リスクへの警戒が長期化することで、消費者はこうした分野での消費水準を従来よりも低下させるだろう。いわば消費行動の変容である。

 現時点では、こうした分野で打撃を受けた企業や雇用を、給付金などを通じて救済するのが正しい政策だと思うが、売り上げの水準が元に戻らないとすれば、いずれは、こうした分野の企業の業種転換、労働者の転職などが必要になってくる。

 来年以降は、消費行動の変容を背景にした産業構造の変化を先取りする形で、こうした業種での企業の業種転換、労働者の転職を促す政策へと転じていくことが、政府には求められよう。それが強く進められていくことで、日本経済全体の生産性水準を押し下げていたサービス業の生産性が向上すれば、生産性上昇率が全体として高まるはずだ。

 卸・小売、飲食・宿泊の4業種での生産性水準が、そうした政策の取組みや企業の自助努力などを通じて、先行する米国の生産性水準との格差を半分縮小することができると仮定すれば、日本の生産性全体は4.9%も上昇する。それは、国民生活をより豊かにし、将来の生活水準がより高まっていくとの期待から、経済面での国民の満足度を高めることにもなることが期待される。

 コロナショックと首相交代の双方を機に、新政権の経済政策は、日本経済の生産性を高める方向へと一気に舵を切るべきだ。

木内 登英 (前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)

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木内 登英(前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)
1987年野村総研入社、ドイツ、米国勤務を経て、野村證券経済調査部長兼チーフエコノミスト。2012年日銀政策委員会審議委員。2017年7月現職。
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