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追加の経済対策 国民全員10万円の第二弾では

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【木内前日銀政策委員の経済コラム(78)】国民へ一律給付は効果薄い 財源の議論も

公開日: 2020/10/01 (政治)

CC BY CC BY /MIKI Yoshihito.(cropped)

予備費を使ってコロナ関連支援策は延長・増額へ

 国内景気は今年5月頃に底に達したが、その後も低迷した状況が続いており、回復と呼べる状況にはまだ遠い。こうしたなか、発足したばかりの菅内閣や自民党からは追加の経済対策の発言が出始めた。

 自民党の下村政調会長は27日に、新型コロナウイルス問題の影響で悪化している雇用情勢を支えるために、追加の経済対策を検討する考えを示した。持続化給付金、雇用調整助成金、家賃支援給付金の支給期間の延長を、その選択肢として挙げている。

 9月25日時点での雇用調整助成金の支給決定額は1兆5,266億円と、2回の補正予算に計上された1兆4,915億円を既に上回っており、追加の予算手当てが必要となっている。また、支給額を1日当たり1万5千円に引き上げた特例措置は、12月末に期限を迎える。

 この3つの制度の延長並びに予算の増額については、野党も含めて賛成意見が多数であり、早晩決定されるものとみられる。その財源には、2次補正予算までの予備費が充てられるだろう。

3次補正予算の焦点は、特別定額給付金第2弾か

 政府は6月の2次補正予算で、コロナ対策に使える予備費を10兆円と、異例の規模で計上した。それ以前の予備費と合わせて、合計では11.5兆円規模に達したのである。

 その後政府は、中小企業やフリーランスを支援する「持続化給付金」事業の追加分、医療機関への経営支援策や検査体制の拡充、ワクチンの接種体制構築といった新型コロナウイルス対策の支出を予備費で賄うことを決定し、現在残っているコロナ対策の予備費は、7.8兆円である。前出の3つのコロナ関連支援制度の延長や増額であれば、この残りの予備費で十分に賄うことができる。

 ところが、自民党の下村政調会長、加藤官房長官はともに、まずは予備費の活用を考えるとする一方で、必要であれば3次補正予算も検討する、と説明している。3次補正予算編成が必要になるような規模の追加の経済対策として、菅政権は、1人当たり10万円支給した特別定額給付金の第2弾を念頭に置いている可能性があるのではないか。

 10月23日に臨時国会が召集される見通しと報じられている。そこでは、追加のコロナ対策を巡って、与野党間で激しい論戦が繰り広げられるだろう。野党が主張する消費税減税は与党に一蹴されようが、特別定額給付金については、与野党間で合意が得られやすいのではないか。

一律の定額給付の問題点

 2次補正予算では当初、所得が大きく減った世帯に限る給付金制度が決定されていた。しかし、予算編成の直前になって、自民党内や連立与党の公明党から強い反発が出て、急遽、一人当たり一律10万円の定額給付へと差し替えられた、という経緯がある。

 これを踏まえると、定額給付の第2弾が実施される場合には、第1弾と同様の一律給付の枠組みとなりやすいだろう。

 しかし、一人当たり一律の定額給付は、
①コロナショックによる打撃で本当に困っている人に十分な給付が行き渡らないという点で、効率的かつ適切なセーフティーネット強化策とは言えない
②コロナショックで財政環境が急激に悪化する中で、余裕のある個人も給付を受けることは、所得分配の観点からも適切とは言えない
③一時金は貯蓄に回る割合が高いことを踏まえると、景気刺激策としての有効性も高くない、つまり、セーフティーネット強化策としても景気刺激策としても中途半端で効果的でない、
などの大きな問題を抱えている、と筆者は考えている。

 この点から、仮に実施するのであればターゲットを絞った給付制度にすべきと考えるが、実際には、一人当たり一律の定額給付となる可能性が高いだろう。

 ちなみに、同様に経済対策として実施されており、10月から東京も加えられるGOTOトラベル事業についても、相応に旅行喚起効果はあるとしても、
①感染リスクを高めてしまう
②利用者が富裕層に偏り、また中小・零細の観光関連事業者が十分に恩恵を得られない、
などの設計上の問題点があるのではないか。

 政府のコロナ関連の経済対策には、全体観を踏まえた慎重な設計と施行が求められる。

臨時国会では財源の議論も必要

 前回の特別定額給付金の支給総額は、12.7兆円(事務費を含み12.9兆円)だった。

 仮にこれと同規模で定額給付第2弾が実施されるとすれば、それは残りに予備費で賄うことはできず、臨時国会で第3次補正予算が編成されることになるだろう。その際には、他の施策も加えられて、補正予算の規模は20兆円超になる可能性があるのではないか。

 さらに、今までの政府の政策の延長線上で考えれば、それは国債発行で賄われる可能性が高いだろう。その場合、今年度の新規国債発行額は実に110兆円超と、まさに空前の規模にまで達するのである。

 コロナ対策として必要な政策はしっかりと講じるべきであるが、その有効性、感染抑制策との整合性などを厳しく吟味する姿勢を政府は怠ってはならないだろう。さらに、コロナ対策の費用を、幅広く国民の負担となりやすい国債発行で賄うのではなく、余裕のある人がコロナショックで大きな打撃を受けた人を助ける、という所得再配分の構図を意識した財源確保を模索することが必要だ。

 次の臨時国会では、追加のコロナ対策の議論と並行して、将来の財源確保についても是非真剣に議論して欲しい。

木内 登英 (前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)

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木内 登英(前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)
1987年野村総研入社、ドイツ、米国勤務を経て、野村證券経済調査部長兼チーフエコノミスト。2012年日銀政策委員会審議委員。2017年7月現職。
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