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「GOTOトラベルの見直しとその経済効果」

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【木内前日銀政策委員の経済コラム(82)】札幌、大阪市以外も対象除外が妥当では

公開日: 2020/11/26 (政治)

【木内前日銀政策委員の経済コラム(82)】札幌、大阪市以外も対象除外が妥当では

▽GOTOトラベル事業は感染リスクを高める可能性

 菅首相は21日に、新型コロナウイルス感染症対策本部の会合を首相官邸で開き、GoToトラベルの運用を見直す考えを表明した。感染拡大地域を目的地とする旅行の新規予約を一時停止する。

 その対象地域は、都道府県知事の判断をもとに選定する方針とした。現時点では、札幌市と大阪市が、両都市を目的とする旅行について、3週間をめどに、GoToトラベルの適用外とすることが決まっている。

 GOTOトラベル事業は、感染対策と経済活動再開との両立を目指す政府の政策のいわば目玉政策として打ち出されたものだ。しかし、それ自体が感染拡大を助長するという大きな問題を抱えている。

▽感染対策と経済活動再開は両立できない

 筆者は、GOTOトラベル事業は、感染がかなり収束した後に実施すべきであり、現時点での実施は問題が多いと考えている。旅行は、個人が感染リスクを踏まえて慎重にその是非を判断すべきであるが、その上で、感染対策を十分に講じつつ旅行を楽しむことは妥当である。




 しかし、補助金を通じて政府が国民に旅行を積極的に促すGOTOトラベル事業は、こうした国民の合理的な判断を歪め、感染リスクを高めてしまうのではないか。政府は、感染リスクを高めない経済再開、経済活動を妨げない感染対策はともに最大限進めるべきだが、両者が両立できない部分は必ず出てくる。その場合には、感染リスクの抑制を優先すべきだろう。

 中小事業者も含めて、全ての観光関連業者を支援するのであれば、引き続き給付金、助成金の増額、延長の方が妥当な手段ではないだろうか。

▽感染への警戒がGOTOトラベルの利用を4分の1にとどめる

 GOTOトラベル事業の経済効果を確認してみよう。国土交通省の発表によれば、7月22日から10月31日までに、GOTOトラベル事業のもとで宿泊・旅行代金が割引された総額は、少なくとも約1,886億円、10月1日から11月9日までの地域共通クーポンの付与額は少なくとも約201億円である。

 宿泊・旅行代金の35%に相当する割引額から、その間のGOTOトラベルを利用した全体の旅行支出額を計算すると、5,389億円となる。必ずしも正確ではないが、これをGOTOトラベル事業によって追加的に生まれた国内旅行需要と見なそう。

 さらに東京が除外されていなかった場合、つまりGOTOトラベル事業がフルに稼働していた場合の需要を計算すると、推定で6,150億円、月間平均で1,809億円、年換算で2兆1,708億円となる。

 ところで、GOTOトラベル事業は、国内旅行需要を1年間で8.7兆円増加させると試算される。この試算値に対して、実績値は4分1にとどまっている計算だ。その分、感染への警戒が、GOTOトラベルを利用した旅行需要を減少させている、と考えることができる。

▽2都市適用外で個人消費は3週間で65億円減少

 GOTOトラベル事業がそのまま実施される場合と比べて、感染者の再拡大を受けて、事業全体を一時停止する場合には、既に見たように月間平均で1,809億円、年換算で2兆1,708億円の消費が減少することになる。これは個人消費の0.71%、GDPの0.39%に相当する規模だ。

 大阪府と札幌市がGOTOトラベル事業の適用外とされる場合、その地域の所得と人口の規模から試算すると、個人消費は3週間で65億円減少する計算となる。さらに、今後東京23区、大阪市、名古屋市、札幌市の4都市が適用外となった場合には、個人消費は3週間で235億円減少すると計算される。

 このように、GOTOトラベル事業を一時停止する、あるいは感染拡大が顕著な一部地域を除外する場合には、相応のマイナスの経済効果が生じることは避けられない。

 しかし、現在の感染状況を踏まえれば、それは妥当な措置である。筆者は、一部地域の除外ではなく、全ての地域でGOTOトラベル事業を一時見合わせるのが良いのではないかと考える。その方が、やや長い目で見た場合には経済活動の正常化を助けることになるだろう。

木内 登英 (前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)

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木内 登英(前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)
1987年野村総研入社、ドイツ、米国勤務を経て、野村證券経済調査部長兼チーフエコノミスト。2012年日銀政策委員会審議委員。2017年7月現職。
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