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「菅政権が打ち出す新たな政策」という打算、見え隠れ

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【木内前日銀政策委員の経済コラム(83)】政府の追加経済対策、幾多の問題点

公開日: 2020/12/10 (政治)

CC BY CC BY /kobakou

事業規模は73.6兆円の追加経済対策

 8日に政府は追加経済対策を閣議決定した。

 事業規模は73.6兆円で、そのうち国費として2020年度第3次補正予算案に20兆円、2021年度分に10兆円程度、合計30兆円程度が充てられる。

 このほか財政投融資や地方負担分などで10兆円を賄い、財政支出規模は計40兆円程度となる。

 追加経済対策の構成は、コロナ対策、経済構造の転換、防災・減災など国土強靭化の大きく3つである。財政支出ベースでは、それぞれ約5.9兆円、約18.4兆円、約5.6兆円となる。

 政府が国会の議決を経ずに使途を決められる予備費は、計10兆円計上される。2020年度予算で7兆円強残っている予備費については、2兆円ほど削減し約5兆円を残す。さらに2021年度分に新たに5兆円を計上する。

 それ以外には、地方自治体が営業時間の短縮要請に応じた飲食店への協力金などに使える地方創生臨時交付金を1.5兆円追加する。官民のデジタル化を促進する関連費用として1兆円規模を充てる。また、脱炭素化に向け、研究開発に投資する企業を支援する2兆円の基金を創設する。

規模ありきの姿勢に問題

 11月30日に自民党の下村政調会長は、経済対策の提言を菅首相に手渡した。これは、政府が策定する追加経済対策、第3次補正予算案のベースとなる。

 下村政調会長は、需給ギャップが7~9月期に年換算でマイナス34兆円あることを挙げ、「それを埋めるような近い額で大型補正を組んでほしい」と首相に伝えた。

 予算規模(国費)は、2020年度第3次補正予算と2001年度分との合計で30兆円程度に達し、まさに需給ギャップを埋める規模であった。第3次補正予算案は、「規模ありき」の策定となった感が強い。

 そもそも、需給ギャップの規模で経済対策の規模を決めるというのは、おかしいことだ。

 第1に、需給ギャップの試算値は、決して正確なものではない。需給ギャップを解消すれば、失業が解消され、国民生活が安定を取り戻す、という保証も全くない。

 第2に、第3次補正予算が執行されるのは、来年1~3月期以降となるが、その時期には需給ギャップの水準も変わっている。

 第3に、第3次補正予算によって押し上げられるGDPは、需給ギャップの規模よりも大分小さい。公共投資的な支出であれば、GDPを同額近く押し上げる可能性はあるが、実際の歳出にはそれ以外の支出が多く含まれ、それらがGDPを押し上げる効果は小さい。

 第4に、今の局面で必要な支出は、感染対策とコロナショックで大きな打撃を受けた企業と雇用を支えることであり、景気浮揚を通じて需給ギャップの縮小を目指すことではないだろう。

 以上の各点から、7~9月期の需給ギャップの試算値を、第3次補正予算案の規模の根拠とするのは適切ではなかった。

 自民党内では当初から、第3次補正予算は、第1次・第2次補正に匹敵する、あるいはそれを上回る規模にすべき、との意見が強まっていた。7~9月期の需給ギャップの規模は、それを後付けで正当化するために用いられたという側面が強いだろう。

そもそも3次補正が必要だったのか

 今回の経済対策には、雇用調整助成金の延長、企業の資金繰り支援など、緊急性があり、妥当なコロナ関連対策も盛り込まれている。他方で、「規模ありき」以外にも、幾つかの問題点があるので見ていきたい。

 第1は、そもそも3次補正が必要だったのか、という点だ。

 緊急に対応する必要があるのは、コロナ関連であるが、それは7兆円超残っている予備費で十分賄うことができる範囲内だった。しかし、それでは新政権が打ち出す新たな政策としてアピールできない、という政治的な事情があるのではないか。

 そこで、2020年度支出分と2021年度支出分を一体化した「15か月予算」としたうえで、本来ならば2021年度予算案に計上すべき項目、例えば、デジタル化、地球温暖化対策、国土強靭化を前倒しで盛り込み、規模を大きくして追加経済対策に仕上げた感もある。

 そもそも、3次補正予算が成立するのは早くて来年2月と年度末近くまでずれ込むことから、「15か月予算」とする意味は薄いのではないか。

第2に、これと関連するが、追加経済対策に前倒しで計上することで、2021年度予算の予算規模や新規国債発行額を小さく抑えることが可能となる。当初予算と比較して、補正予算では国会や国民のチェックは甘くなりがちであり、補正予算で予算規模や国債発行額を膨らませることが、既に常態化している。これは、予算制度に対する信頼性を損ねるものだ。

基金を多用することの問題点

 第3に、デジタル化、地球温暖化対策、大学関連で相当規模の基金の創設が計上されている。

 基金は使途や執行時期について機動性、柔軟性が確保できるという利点はある一方、国会や国民のチェック機能が十分に効きにくく、無駄に使われやすいという問題点がある。

 コロナ対策でこれに対応するのが、政府の裁量で支出できる巨額の予備費である。2次補正で10兆円計上した予備費の大部分が使われなかったことを踏まえると、2020年度分、2021年度分の合計で10兆円計上するのは過大なのではないか。

 以上で見てきたように、追加経済対策には、緊急性のあるコロナ対策を除けば様々な問題が潜んでいる。コロナ下で財政環境が急速に悪化している現状を踏まえれば、一片たりとも無駄を作らない、精緻な予算案の策定が求められるはずだ。

木内 登英 (前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)

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木内 登英(前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)
1987年野村総研入社、ドイツ、米国勤務を経て、野村證券経済調査部長兼チーフエコノミスト。2012年日銀政策委員会審議委員。2017年7月現職。
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